子どもへの関わり方が、子どもの将来に影響する
障害があったり、発達に気になるところがあったりする、就学前の子どもたち。
現在では、多くの子どもたちが様々な施設に通っています。
・児童発達支援
・療育施設
・塾
・各種教室
こうした場所では、子どもに合わせた支援を受けたり、さまざまな経験をしたりすることができます。
「これをやったほうがいいですよ」「こういう経験をさせてあげましょう」「家庭でもこうしてみてください」
そんな情報を受け取る機会も、以前よりずっと増えています。
では、逆に、
「これは、家庭ではあまりやらないほうがいいですよ」
ということはあるのでしょうか?
今回は、私が長年子どもたちを支援してきた中で感じている「家庭では、できれば避けてほしい関わり」を3つに絞って紹介します。
やらないほうがよい?とは
「やったほうがいいこと」は、意識して探すことが多いと思います。一方で、「やらないほうがいいこと」は、意識していないと、親子の遊びやコミュニケーションの中で自然にやってしまうことがあります。
そして、その「何気ない関わり」が、子どものその後の行動や、人との関わり方に影響することがあります。
これは、保護者を責めるための記事ではありません。
子どもとの関わり方を少し見直すことで、子ども自身が生きやすくなるかもしれない。
長年、子どもたちの支援に携わってきた言語聴覚士として、そんな視点からお伝えしたいと思います。
家庭での思い・施設での思い
私は言語聴覚士として、これまでさまざまな子どもたちと関わってきました。
発達障害のある子、発達に気になるところのある子、肢体不自由のある子、重症心身障害のある子など、年齢も発達段階もさまざまです。
長年、子どもたちの支援に携わっていると、ときどき、
「施設で一生懸命支援しているだけでは、なかなかうまくいかないな」
と感じることがあります。
その背景には、子どもが普段生活している家庭での関わり方が関係していることがあります。
親御さんが良かれと思ってやっているケース
もちろん、保護者の方が子どもを困らせようとしているわけではありません。
「子どもが喜ぶから」「面白いから」「親子で楽しく遊んでいるだけ」
そんな何気ない関わりが、知らないうちに子どもの行動を強めてしまうことがあります。
子どもは、大人とのやりとりを通して、さまざまなことを学んでいきます。
「こうすると相手が笑う」「こうすると大人が反応する」「こう言うと、みんながこちらを見る」
そうした経験もまた、子どもにとっては大切な「学習」です。
だからこそ、療育や訓練で「伸ばしていくこと」だけではなく、家庭で知らないうちに強化してしまっている行動がないかを考えることも大切なのではないかと思います。
なぜ家庭での関わり方が大切なのか?
施設に通っているのだから、家庭では子どもへのかかわり方を気にしなくてもよい?そう思われている方もいるかもしれません。しかし、そうではありません。
本来の訓練に使える時間が減る、という問題
療育施設では、子どもに対して様々な訓練や支援を行っています。計画を立てながら、子どもの様子をみて訓練を組み立てていきます。
他者を不快にする行動への対応が必要になると、その分、本来予定していた言語訓練や認知訓練に使える時間が減ってしまうことがあります。
もちろん、行動への支援も大切な支援の一つです。
ただ、同じ行動への対応が繰り返されると、「本来伸ばしたかった力に取り組む時間」が少なくなることがあります。
例えば、個別訓練で、その日の課題をいくつか予定していたとします。ところが・・・・
「今日は最初に他児に暴言を吐いてしまった」
「相手に唾を吐いてしまった」
「スタッフをからかう行動が続いている」
「注意されること自体を楽しんでいる」
となると、まず行動の整理から始めなければならない。
結果として、本来伸ばしたかった能力に使える時間が減ってしまう。
これでは非常にもったいないですよね。
例① 人を不快にする行動を「面白い」として教える
「面白いから」という理由だけで子どもにおかしなことを教えてしまうケースがあります。
・人を不快にするジェスチャー
・唾を吐く
・相手を傷つける言葉
・相手をからかう
・わざと失礼なことをする
例えば、中指を立てるなど、家庭では「面白いから」と教えてしまいがちな行動です。
また、子どもにとっては、「この行動をすると大人が反応してくれる」という学習につながることがあります。
「面白いことをする」
↓
「大人が笑う・驚く」
↓
「人が反応する」
↓
「またやる」
例② 不適切な行動に「大きな反応」を返し続ける
例えば、子どもが、
「バカ!」
「あっち行け!」
などと言ったとき、大人が、
「そんなこと言っちゃダメ!」
「誰にそんなこと言ってるの!」
「もう一回言ってみて!」
と大きく反応する。
子どもにとっては、「何を言ったか」よりも、「その結果、大人がどう反応したか」が重要な手がかりになることがあります。
例③「子どもだから」で済ませて、相手の立場を考える経験をつくらない
子どもが暴言を吐いていたとしても、本人には悪気がないケースがたくさんあります。
しかし、言われた相手は嫌な思いをするはずです。
子ども「悪気はない」
相手「嫌な気持ちになった」
子ども本人の意図と、相手が受け取った意味が異なることがあります。このズレが、人間関係のトラブルにつながることがあります。
逆から考えてみよう
「家庭では、そんなことをやらないでください」と言う支援者がいるかもしれません。
しかし、ちょっと待ってください。
ただ、保護者側には、
など、様々な背景がある可能性があります
「悪い親だからやっている」とは限らない。
一見すると、「おかしなことを覚えさせて本当に困るわ」と思われるかもしれません。
しかし・・・
「愛情表現・遊び・コミュニケーションのつもりでやっていることが、子どもの社会的行動を望ましくない方向に強化している」というケースもあると思います。
ここを分けて考えると、保護者への伝え方も変わってきます。
忘れてはいけないこと
忘れてはいけないのが、支援の主役は子どもだということです。
・悪意がなくても嫌がられてしまう可能性
・就学後、学校や社会で人間関係につまずく可能性
「いま、楽しいからよい」ではないのです。
悪意がなくても嫌がられてしまう
さらに厄介なのは、本人に悪意がなくても、周囲から見える行動は同じだということです。
本人の中では、
「冗談」
「遊び」
「面白いこと」
でも、相手には、
「嫌がらせ」
「失礼」
「怖い」
と受け取られることがあります。
支援者だって人間だから
支援者は、子どもの発達段階や特性を考えながら、「まだ十分に分からない部分があるのだな」と受け止めます。
しかし、学校生活が進むにつれて、出会う人たちが必ずしも「この子はまだ分からないのだな」と受け止めてくれるとは限りません。
「面白半分で相手を不快にする行動をする」という経験が積み重なると、周囲から距離を置かれてしまうことがあります。さらに厄介なのは、本人に悪意がなくても、相手には、
「嫌がらせ」
「失礼」
「怖い」
と受け取られることがあります。
小さいうちから「相手はどう感じるか」を考える経験が大切。
認識はズレていないか?
「自分の意図」と「相手が受け取った意味」にズレはないでしょうか?
「冗談のつもりだった」
「面白いと思った」
「怒らせるつもりはなかった」
しかし、「相手は嫌だった」ということがあります。
このズレを小さいうちから経験することも、コミュニケーションの学習の一つです。
どうすればよいのか?
強制的なことをしたり、訓練漬けにしたりするのではありません。ちょっとだけ、視点を変えてみてください。例えば、次のような関わり方が考えられます。
まとめとして
今回は、家庭で避けたい関わりを紹介しました。
じつは「良かれ」と思ってやっていることも多いことを、支援者は忘れてはいけません。ここでのポイントは3つあります。
支援はみんなが協力しないと成り立たないものです。犯人探しをするのではなく、どうすれば一緒に子どもに良いかかわりができるか?を考えることが大切なのではないでしょうか?
「だからこそ、支援者も保護者を責めるだけではいけません。」
支援者が家庭に対して「どうしてそんなことをするの?」と責めるのではなく、保護者と一緒に、その関わりが子どもにどんな経験として残るのかを考えることが大切です。
支援者も親御さんも自分がやっていることの「先」を考えてみてください。少し考えるだけでも、何かが変わるはずです。
よかったら参考にしてみてくださいね。


