放課後等デイサービスで専門職をうまく扱うためのポイント
障害児の施設の中には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった「専門職」が関わっているところがあります。
施設のスタッフはほとんどが保育職。
どんな職種だって子どもたちのために頑張っているのは知っている。しかし、自分たちとは異なる職種とどのように関わっていけばよいのか分からない・・・。
少数派である専門職を活かすためにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
今回は、小児施設の専門職である私が失敗しない専門職の扱い方を説明します。
・専門職への相談や質問の仕方
・専門職の扱い方
専門職の扱いに失敗している障害児施設は多い
専門職が関っている障害児の施設が年々増えています。
特に放課後等デイサービスのような通所施設は一気に増えている印象を受けます。
しかし、すぐに辞めてしまう等、なかなか定着しないのが現状です。
障害児の施設で働く人の数が多い保育職も正直言って専門職をどう扱ってよいのかよく分からない。
定期的に専門職が施設に来てくれる。来てもらっても時間ばかりが過ぎていく。ただ来るだけになっている・・・。
何を質問すればよいのか分からない・・・
専門職は偉いんでしょ?上下関係ができる・・・
なぜ専門職をうまく扱えないのか?
本来ならば専門職は、保育職とは別の角度から子どもをみてくれる存在という位置づけであるはずです。
実際の職場を見てみると保育職と立場が対等でないことが多いのです。
専門職が上の施設もあれば、その逆のところもあります。
まずは立場は対等であるということを理解してほしいと思います。
うまくいっていない職場は多かれ少なかれ下記のような状態にあります。
・上下関係ができてしまっている状態
・お互いに不信感を持っていて協力できていない状態
・保育職が専門職のことをよく知らない状態
では物事がうまく進むはずがないのです。
専門職とは?
障害児の施設では、保育スタッフの他にも多くの職種が働いています。なかでも「専門職」と呼ばれることが多いのがリハビリ職と呼ばれる次の職種です。
部分的に専門家に任せてしまおう
保育職は子どもの全体を見る必要があります。しかし、ひとつの職種ですべてをみるのには限界があります。
しかし、障害児の施設には様々な「専門職」がいます。彼らはそれぞれの分野に特化しています。
たとえば、保護者から質問されても
「よく分からない」
「そんなことわたしに聞かないで」
と感じている分野も正直あると思います。そこを「専門職」にお任せすればよいのです。
専門職はいろんなことを何でも知っているわけではありません。しかし、自分の分野のことは深く知っています。新しい情報を持っているケースも多いのです。
すべて自分一人で何とかしようとすると失敗しやすい
保護者から質問されたときやその答えを探すとき、失敗しやすいパターンがあります。
⇒ どんなリハビリや訓練にも「対象となる子」が決まっています!やってはいけない疾患や症状の子もいます!
⇒ 何十年も前に使われていた文言で保護者に助言を行っているケースがあります。
・障害の原因は愛情や言葉かけの少なさだ(そんなわけない)
・感覚過敏は頑張ればなくなる(そんなわけない)
※子どもや保護者にとって心理的・物理的負担になることがある。
専門職に頼るメリット・デメリットは?
自分たちが詳しくないことは専門職に頼ったほうが確実、というはなしをしました。
では、彼らに相談や質問をすることによるメリットやデメリットはどんなものがあるのでしょうか?
メリット
・助言内容に信頼性が増す
⇒ 細かい分野に特化している人に聞ければ、その分、情報に確実性が増します。
・自分自身が成長する
⇒ いろんな専門職から情報を教えてもらえれば、それは自分自身の★知識となります。この積み重ねは支援者として成長につながるはずです。
デメリット
・その場で返答ができない
⇒ 「専門職に聞いてみますね?」ということは「返事まで時間をいただく」ということになります。質問してくれた保護者に、その場で答えを返せないのは少し心苦しいです。
しかし、専門職の知識を頼ることで、よりちゃんとしたことを保護者に伝えられます。その場で適当に答えるのと、時間をかけてちゃんと答える。どちらが良いのでしょうか。
・他人の力を借りることになるのが嫌
⇒ こういう風に考えてしまう支援者が時々みられます。身体面も運動面も発達面も言語面も薬剤に関してもすべて自分が答えたい。こういう人は少なくありません。
「○○先生は何でも知っていて頼りになる」と思われたいのでしょうけど・・・。
後になってさまざまな人たちにしわ寄せがきますよ。子どもや保護者はもちろん、他の保育職、専門職などなど。
専門職に相談や質問をするときのポイント
うちの施設にも専門職はいるけれど、どうやって関わればよいのかいまだに分からない・・・。そう感じている人も少なくないかと思います。
何をどんなふうに相談すればよい答えをもらえるのでしょうか?
見てもらいたい箇所をしぼる
「何でもいいからこの子を見てください」
このようなお願いというか要望を出されることがあります。
「何でもいいから」なんてありえません。
本来、支援者の中にある「悩み」や「疑問」を解決したいから相談しているはずです。
聞きたいことを決めてからから質問するのが鉄則です
質問内容がまとまっていなくてもOKです。
・こんな行動が気になる
・遊びの中で取り入れられることはあるか?
というような聞き方をすると専門職も答えやすいはずです。
悪い例
実際にこんな指示を出されたというはなしを聞いたことがあります。
学校で体育の授業中。数人の子どもたちが体育館をグルグルと走って(歩いて)います。
先生がその子らを指さして「この中で気になる子がいたら教えてください」と理学療法士(PT)の先生に言ったそうです。
先生が「悩み」や「疑問」を持っていないのにPTが来たから聞いてみた、という状況でしょうか?
毎回、こういう対応をされると専門職もこんな職場には来たくなくなってしまいます。
自分の意見も添える
意外と大切なのが自分の意見も添えるということです。
なんだか分かりませんが、自分から質問してきたのに「さあ、答えてみなさい」という雰囲気を醸し出す人がいます。
・食事でムセます。毎回ではないので特定の食材でムセているような気がします。どう思いますか?
・「1、2、3、4、5・・・」と言っています。何となく数を理解しているようなのですが・・・本当に理解しているんですかね?
自分はこう思うという意見を加えると、専門職も答えやすくなります。
・こういう風に説明しよう
・子どもの○○を注意して見てみよう
というポイントを絞って話してくれるはずです。
こんなふうに考えてみよう!
自分が知らないことにを知っている人に話しかけるのはちょっとだけ勇気がいるかもしれません。ポイントをおさえれば気が楽になります。もう怖くありません!
質問する=格下 ではない!
質問すると「負け」と思っている人がいます。
これは大きな間違えです。
質問しない方が「負け」です。
へんなプライドは捨てた方が成長できます。
経歴や年齢、関係なく質問してOKです!
「よいところ探し」と「高すぎる評価」は違う
毎日のように接している子に対して「高すぎる評価」や「低すぎる評価」をしてしまうことがあります。
子どもの「よいところ」を探すのはOK。どんどん見つけてください。しかし、過剰に高い評価をしてしまうのは子どもにとって不利益になるので気をつけましょう。
「よいところ探し」と「高すぎる評価」はイコールではない
これを覚えておくだけで質問するのが楽になります。
福祉資源のひとつとして捉える
専門職は他の職種が知らない情報を持っていることがあります。
子どもや保護者、保育職にとっての福祉資源としてとらえると専門職をうまく使えるようになります。
まとめとして
今回は、専門職の扱い方に失敗している障害児の施設が多い。それに対してどうすれば専門職を活用できるのか?というはなしをしました。
ポイントは、
・上下関係をつくらない
・見てほしい箇所をしぼる
・質問の際に自分の意見も加える
この3つを気をつけるだけで障害児の施設に関わる専門職が機能するはずです。
よかったら参考にしてみてくださいね!
◆逆に専門職(新人)が悩んでいることはこんな感じです↓