障害児と嚥下障害を持つ子が食べづらい食材
「食べづらい」と聞いて何を思い浮かべますか?お餅?こんにゃくゼリー?
大人は「このくらい平気だろう」と思っていても実は食べるのが大変な食材がたくさんあるのです。
現に毎年、悲しい事故が起こっています。
障害を持つ子ならなおさらです。
大人が知っていれば防げる事故もあるはずです。
今回は、子どもが食べづらい食材を紹介します。
さらに対応についてもおはなしします。
窒息とは?
窒息事故の原因となった食材
毎年、食事の事故が起きています。
放課後等デイサービスも例外ではありません。
子どもの窒息事故を大人に知ってもらうためにも、消費者庁が窒息防止を呼びかけています。
下記は平成29年と少し古いデータですが「窒息死事故の原因となった食品と発生件数」です。
窒息死事故の原因となった食品と発生件数
菓子類(マシュマロ、ゼリー、団子など) | 11件 |
果実類(りんご、ぶどうなど) | 5件 |
パン類(ホットドッグ、菓子パンなど) | 4件 |
肉類(焼肉、唐揚げなど) | 3件 |
その他の食品(餅、寿司、チーズ、そうめんなど) | 8件 |
原因となる食品不明 | 72件 |
合計 | 103件 |
※平成29年 消費者庁しらべ
まさか、そんな食材が?
もちろん、餅をのどに詰まらせるケースもあります。
しかし「まさか、そんな食材が?」と思ってしまうものがたくさんあります。
ブドウなど、軟らかいものは要注意です。
多少大きくても子どもはそのまま口に入れてしまうからです。
それは危険です。
噛む力が弱い子や丸飲みする子の場合、喉に詰まるリスクが高まります。
障害のない子であっても1~2歳の子はブドウ丸々あげるのは危険です(例え皮をむいたとしても!)
食べにくい食品のタイプ
子どもにとって食べにくいものにはいくつか特徴があります。
硬いものだけではありません。
次のようなものに特に気をつけてください。
1)噛みにくいもの
まずは「噛みにくいもの」です。
噛めなくては処理ができず丸飲みしかできなくなります。
① 硬い
これは想像がつくと思います。
硬いものだと噛めずに喉に詰まってしまうからです。
噛めないくらい硬いもの。
私たちを基準として「噛めない」ではなく、子どもを基準として「噛めない」ということを忘れてはいけません。
例:煎餅、肉、揚げ物の衣 など
② 軟らかいが弾力がある
意外と気づきにくいのがこのタイプです。
カマボコのような軟らかいもの。
噛んだら口の中でバラけてムセやすくなります。
子ども自身も噛んだ方がよいのか、押し潰した方が良いのか、選択に困ります。
例:練り物、こんにゃく、タコ、イカ など
2)食塊を作りにくい(処理しづらい)もの
食べるとき、噛んだものを口の中で一つの塊にします。
舌を使って唾液と混ぜるのです。
それをしにくい食材は食べにくいといえます。
① パサパサするもの/パラパラするもの
噛んだとしても、口の中でまとまりにくくバラバラになってしまう。
そのためムセてしまう食材があります。
口の中で噛んだものは、舌を使って唾液と混ぜながら塊(食塊)にしていきます。
パサパサしたものの場合、塊を作りづらいのです。
自分が意図しないタイミングで喉の奥に落ち、ムセてしまいます。
例:炒飯、焼き魚、そぼろ、みそ汁(底にたまった豆の破片)、クッキー、せんべい、リンゴ
② 線維が残るもの
野菜類に多くみられる繊維が多い食材。
噛み切ることが難しく、丸飲みになりやすいです。
例:ごぼう、タケノコ、パイナップル
③ 薄くて処理しづらいもの
噛むという動作は、ある程度厚みのある食材でないと難しいです。
そのため、葉物のような薄いものは食べづらいのです。
ホウレン草のような、口の中で溶けてしまうものであれば比較的簡単だと言えます。
しかし、キャベツやレタスのような葉物類、ワカメのような海藻類は口の天井(口蓋)に張りつきやすいです。
子どもが自分では取れない場合もあるため、難しい食材と言えます。
例:葉物、海藻
3)その他
「噛めないもの」「処理できないもの」以外にも注意が必要なものは下記のとおりです。
① 酸味の強いもの
障害があってもなくても、子どもは「すっぱいもの」をあまり好みません。
障害を持った子の場合、酸味のあるものが急に口の中に入って驚いてしまいムセてしまうということも考えられます。
酸味は酢だけでなく果物にもあります。
グレープフルーツは飲んでいる薬によっては摂取NGのことがあるので注意が必要です。
例:酢の物、柑橘系
② 過度に熱いもの/辛いもの
先ほどの酸味同様、突然、口の中に熱いものや辛いものといった刺激が入ってくれば驚いてムセてしまいます。
常温であればよいというわけでもありません。
常温過ぎて(妙な言い方ですが・・・)、口に入った時に気づかない、というケースも考えられます。温度は難しい問題ですが、様子を見つつ提供していきます。
例:ラーメンスープ、トムヤムクン
私たちが思っているよりも「食べる」ことは難しい
私たちは普段から様々な食材を口にしています。
そのとき「少し硬い野菜だな。いつもより強めに噛んでおこう」とは考えません。
考えていないのではなく、無意識的に食物を処理しています。
そのため、食事介助をするときにも、深くは考えずに、自分が食べるときと同じように、目の前にいる子にも食べさせてしまうのです。
例え、障害のない子であっても「食べる力」は未熟です。
毎年、窒息事故が起きていますよね。
障害があって「食べる力」がついていない子や口の中に奇形がある子、筋力が弱い子であれば、余計にうまく食べられません。
食事場面での事故は、どんな子にも起こりえます。
しかし、提供する食材に気をつけるだけで、事故が起こるリスクを下げることはできます。
窒息事故を防ぐために
下記は消費者庁からの注意喚起です。分かりやすいので引用します。
<食品による子供の窒息事故を予防するポイント>
1)食品の与え方
①食品を小さく切り、食べやすい大きさにして与えましょう。
②一口の量は子供の口に合った無理なく食べられる量にし、飴やタブレットなど喉に詰まりやすい食品を食べさせる場合は大きさに注意しましょう。
③誤って気管支に入りやすいピーナッツなどの硬い豆・ナッツ類は、3歳頃までは食べさせないようにしましょう。
④年長の子供が、乳幼児にとって危険な食品を与えないよう注意しましょう。
2)食べる時の注意
①遊びながら、歩きながら、寝転んだまま食品を食べさせないようにしましょう。
②急いで飲み込まず、ゆっくりとよく噛み砕いてから飲み込むよう促しましょう。
③食事の際は、お茶や水などを飲んで喉を湿らせましょう。
④食品を口に入れたまま話したり、何かをしながら食事をしたりさせないようにしましょう。
⑤食事中に眠くなっていないか、正しく座っているかに注意しましょう。また、食事中に驚かせないようにしましょう。
消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/170315kouhyou_1.pdf
まとめとして
今回は、子どもにとって食べにくい食材について説明しました。
食材についてどのように考えて、どう対応すればよいか?
子どもを守るのは大人の仕事です。
食事とは本来、楽しいものです。
楽しく安全に食べる。
これが食事の醍醐味です。
自分の子どもだけではなく、自分が関わる子ども全ての安全・安心を守っていきましょう。
よかったら参考にしてみてくださいね。
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参考資料
①食品による窒息予防へのアプローチ
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20090715so1&fileId=104
②子どもの事故と現状について
③教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kyouiku_hoiku/pdf/guideline1.pdf
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