障害児の食事介助で見るべきポイントとは?
障害を持つ子の食事について。
意外と分からないことばかりだと思います。
何に着目するとよいか知っていますか?
何となく食事介助をしてしまうと
・楽しく食べているかな?
・笑ってるかな?
ばかりに目が行ってしまいます。
しかし本当にみるべきことは他にあります。
特に食物が口に入ったら「おしまい」ではないのです。
口に入ってから食べ終えるまでは、いくつかポイントがあります。
今回は、食事介助で見るべきポイントを紹介します。
食事介助で見るべきポイント
いくつもポイントがあります。
おさえておきたいのは下記の4つです。
「正しく食べているか?」の指標となるチェック項目です。
正しく食べるとは?
正しい食べ方とはどんなことをさすのでしょうか?
正しいとは、無理のない食べ方です。
・口を閉じて噛んで飲み込む
・飲み込んでから次のひと口を食べる
というような先ほど「ポイント」で説明したような食べ方です。
では、詳しく見ていきましょう。
1)口を閉じて食べているか?
「食べているときは口を閉じなさい」
よく聞くセリフです。
これはマナーの問題ではありません。安全に食べるために必要なのです。
口を閉じることで食べ物が喉の奥に送り込みやすくなるのです。
しっかりと送り込むことができればムセや誤嚥も減ります。
では、口を閉じるのはどのタイミングがよいのでしょうか?
本当なら食べてしている間はずっと口を閉じた方がよいです。
しかし、ずっと口を閉じていられない子もいます。
その場合は飲み込む前~ゴックンまでは口を閉じるように介助を行うとよいです。
2)口の中は空になったか?
食事介助では、いま食べているものが口の中からなくなったら(飲み込んだら)次の食物を入れます。
介助者が気にすべきことは飲み込んだかどうかの確認です。
口が空になったら次の一口を入れる
口の中が空になったかどうか?
これは意外と大切なポイントです。
これを怠ると、まだ処理しきれていないのに、次から次に口の中に食物を入れることになります。
のどに詰まるだけですよね・・・。
判断の仕方は、実際に口の中を見てみるのが一番手っ取り早いです。
人は、ゴックン(嚥下)するときに、喉仏が上に動きます。
飲み込む前に介助者の指を、子どもの喉仏の上方に当てておけば動きが分かります。
この動きは人によって分かりづらい場合もあります。
嚥下後にまだ口の中に食物が残っていたら?
次に見ておきたいのが「一回のゴックンで口の中は空になったか?」ということです。
口の中に残っているのであれば 一口量が多すぎるという可能性があります。
また、残っている食物の残骸が、口の中、前方に偏っていることがある子もいます。
この場合は舌を使って喉の奥(後方)に送り込めていないという仮説を立てることもできるのです。
口から出てくるときはどうすればいい?
一度、口の中に入った食物が、口から出てくる(出す)ケースがあります。
考えられるのは何らかの不快さがあったということ。
・熱かった
・硬過ぎる
・量が多すぎる
・美味しくない(不本意だ)
・筋力が弱くて口の中に保持しておけない
どれが原因なのかは、その時の状況(前後関係)や子どもの性格などにもよります。
3)食事時間は適切か?
学校給食は 30~45分で完食できる量になっています。
予め量が決まっているので、その時間内に食べ終わらないときは何らかの問題があります。
・食形態が合っていない
・介助に問題がある
基本的はどちらかの原因があると仮定が立てられます。
完食できなかった原因を探る
しかし、放課後等デイサービスなどの施設では、持参の弁当も、昼食&夕食づくりの量は適当だと思われます。
完食できなかったというのは、
・量が多すぎる
・介助が合っていない
・子どもの食べ方が変わっている
という理由が考えられます。
食べ終わらなかったら「何に問題があるのか?」を判断していきます。
理想を言えば45~60分で食べ終える。
時間がかかっても90分くらいでで切り上げる。
そうしないと、子どもは疲れてしまいます。
逆に早く食べさせてしまうのは危険です。
ちゃんと食べられているならよいですが、介助によって「丸飲みをさせられている」状態であると事故のリスクが上がるだけです。
4)食事を中止するのはいつにするか?
その他にも食事中に悩んでしまうことがたくさんあります。
食事を中止した方がよいケースは?
これ以上食べさせても危ないな・・・。
そう感じる瞬間があります。
・眠ってしまった
・完全に食べる気が失せてしまっている
・痰絡みが強く、食物が喉の奥へ入っていかない
誰が介助をしても食べないのか?
食べる気はあるようだが、なんだか分からないけれど、食べられない
⇒この場合は、介助者を変えてみるのもありだと思います。
介助の上手い下手ではなくて、子どもと介助者がお互いに「どうにかしなくちゃ」と硬くなっているケースがあるからです。
もちろん私が介助をやっているときに、そうなっていることもたくさんあります。
その他
上記以外の問題はあるのでしょうか?
周囲の環境
私はよく「食べている間は音楽(CD)をかけないで」とスタッフの人たちに言っています。
なぜ言うかというと事故が起こりやすい環境=気が逸れやすい環境だからです。
窒息事故が起こる要因は、大きく分けると下記のようなものがあります。
・食形態が合っていなかった
・ふざけていた
・注意が逸れた
ペースト食でも窒息は起こります。
発達が初期段階の子は、食べるのが上手でない子が多いです。
そういう子は、食べているときに音楽が聞こえてくると「あれ?楽しそうな音が聞こえてきたぞ」と笑ってしまいます。
口の中に入っている状態で笑うならいいのです。
食物が落ちるだけだがら。
しかし、それが飲み込むタイミングだと・・・。
黙って食べろとは言いません。
楽しい雰囲気で「美味しいね」「上手に食べたね」と言いながら食べることで、コミュニケーションを育むことにもなります。
場所の制限はあります。
しかし、何を重視しなくてはいけないのかは考える必要があります。
食べ終わったら歯磨き(口腔ケア)を!
食事に時間をかけるのであれば、その分、歯磨きなどの口腔ケアに時間が使いたいです・・・。
学校休業になってから、口腔ケアをできていない子はたくさんいるはずです・・・。
どの子も、口臭だけではなく、虫歯や誤嚥性肺炎のリスクが上がっています。
自閉症の子たちも、肢体不自由の子たちも、学校で行っていた歯磨き習慣。
ぜひ放課後等デイサービスでも続けてほしいです。
緊急事態宣言や学校休校によって、家で食べる機会が増えています。
家では学校や施設のような、充分な食事のフォローができないことが多いです。
そのため、学校が始まってから、食べ方に癖がつくようになっている子もいるはずです。
口の中が汚い状態だと、誤嚥して唾液が肺に入ったとき、病気になるリスクが高くなります。
そんなときでも、口腔ケアがしっかりとできていれば、リスクは下がります。
ぜひ口腔ケアは続けていければと思います。
<追記 2022.05.20>
新型コロナウイルス感染症対策で、特別支援校の食事の介助方法も少しずつ変わってきました。
・人が食べ物や子どもに触れる頻度を下げる
・必要ならばプラスチックグローブを使う
これまで自食の練習をしていた子でも全介助に切り替えるケースも目立ちました。
コロナ禍のような緊急事態中でも子どもの支援の在り方を考えること。
これは今後の大きな課題となります。
まとめとして
今回は、食事介助のときに見るべきポイントを説明しました。
食べ物が口に入ったらOKではありません!
口の中からなくなるまで見守ることが必要です。
また、食事介助は早く終われば優秀というわけでもありません。
子どもに合ったペースで安全に食べ進める支援を行うのが食事介助なのです。
そのためにもポイントを知っておくと子どもも大人も丁寧に食事を進めることができます。
よかったら参考にしてみてください。
下記はポイントをまとめたものです。
1)口に入っている途中
・どのタイミングで口を閉じてもらう?
・周囲の環境にも配慮する
2)口が空になってから
飲み込んだかどうかの確認
・ゴックンしたか?
・口が空になったか?
3)食事時間
45~60分目安で、食べ終えるのに時間がかかるようならば、食事の内容や介助方法を再検討する。
ぜひ参考にしてみてください。