言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

保護者からの要望を100%叶えるのは良い支援者なのか?

保護者からの要望だって受け入れられないものがある

障害児の施設に通っていると、いろんな大人からの要望や願いが出てきます。

・歩けるようになってほしい
・ひとりでご飯を食べてもらいたい
・喋れるようになってほしい

自分の子どもや自分が働く施設にいるをしている子どもが「できるようになる」ことを望むことは当然のことです。

だからといって大人からの願いをやみくもに叶えようとしていませんか?

 

今回は、障害を持った子どもへの「保護者」からの要望や願いは100%叶えた方がよいのか?というはなしです。

 

 

すべての要望を叶えるべきでない理由

なぜだと思いますか?

・仕事が忙しいから?
・全員の子どもの願いを叶えられないから?
・そもそも叶えられないから?

いろんな理由が考えられます。

答えは「保護者の要望」と「子どもの現状」が合っていないからです。

 

 

 

要望や願いで「支援の方向性」が決まる

そもそも支援とは何なのでしょうか?

 

支援

ささえ助けること。援助すること。

『広辞苑(第七版)』より

 

障害児施設において「子どもを支える」とは次のようなことをさします。

 

・発達を促していくこと
・子どもの気持ちも考慮していくこと
・子どもや保護者が使えるサービスを提示すること

 

目標のゴール地点が人によって異なってしまうことがあります。

 

たとえば、学校と家庭と放課後等デイサービスでそれぞれが違った支援を行っている、なんてこともたくさんあります。

 

子どもが振り回されてしまうのです。

 

保護者の要望や願いをどのように支援に昇華させるか?

一番よいのは、子どものためになる目標を設定してあげることです。

それは誰もが分かっています。

それぞれの立場で「こんな目標がよいはず」と考えています。

はじめて施設で目標を立てるときには、まずは保護者の要望や願いが尊重されるケースが多いと思います。

実際には次のような要望や願いが多いです。

・喋れるようになってほしい
・歩けるようになってほしい
・うまく食べられるようになってほしい

支援者はどうすればこれらを支援に組み立てていけるのでしょうか?

 

支援者が支援の道筋をつくっていく

保護者によって要望や願いは様々です。

そこから保護者が子どもに「どうなってもらいたいのか」が見えてきます。

では支援者はどう考えていけばよいのでしょうか?

注意点が一つあります。

ゴール地点しか見ずにやみくもに突っ走る支援にならないようにしようということです。

ゴールではなく、ゴールに到着するために何をすればよいのか?を考えていくのです。

親御さんからの要望は子どもに合ったものなのか?

いま、それをめざしすことが子どもにとってプラスになるのか?

ということを考えるのが支援者の役割です。

ここでの支援者とは、専門職だけでなく保育職や指導員、介助者などすべての職種をさします。

次にポイントを2つ紹介していきます。

 

ポイント!

① 前提となる力を無視しない

② 獲得後のことを想像してみる

 

 

① 前提となる力を無視しない

「○○ができるようになってほしい」という要望は「○○という力(能力)を身につけてほしい」ということです。

発達における「力(能力)」には必ず前提となる力が存在します。

まずはその力を身につけないと、あとあと大変になってしまう。

 

ex. 箸(はし)を使う

⇒ 前提条件
  ・親指、人差し指、中指の3本を上手に使えること
  ・スプーンを3本の指で持てること(3点持ち)

 

ex. 喋るようになる

⇒ 前提条件
 ・ことばを理解していること
  (ことばの存在に気づく、単語の意味を理解するなど)

 

前提となる力を無視しても目標とする力(能力)の獲得は遠回りになってしまいます。

 

② 獲得後のことを想像してみる

なぜ、その力をつけさせたいのですか?と聞くと次のような答えが返ってくることが多いです。

・○○できるようになればいいじゃない

・できないよりできた方がいいに決まってる

・なんでそんなこと言うの?冷たくない?

 

わたしも嫌がらせや嫉妬でそんなことを聞いているのではありません。

要望や願いには先があった方がよいと思うのです。

 

たとえば「歩けるようにしてあげたい」という支援者からの要望。

重い知的障害があって危険予測もできない子がいたとします。

そういう子がそのままの状態で歩けるようになったらどうなると思いますか?

・ひとりで家から出ていく
・道路に飛び出す
・ベランダからダイブする

「歩けるように」の前に「知的能力」や「認知能力」を育てる方が先決なのではないでしょうか?

 

 

誰のための目標なのかを考えよう

その目標は誰にとってのものなのでしょうか?

「子ども本人」?「家族」?「支援者」?

 

支援者のため

支援者の都合で目標を組み立ててはいけません。

「保護者から出された要求を叶えた自分ってかっこいい」

「家族からの要求を叶えられるなんて私は仕事ができるわ」

明らかにこんなふうに考える支援者がときどきいます。

 

障害児分野では「子どものため」ということばをよく耳にします。

しかし、実際は「支援者自身のため」になっていることも。

支援者のための要望・ねがい・目標ではありません!

 

第三者だからできることもある

支援者は常に発達という視点を持って子どもと関わっていくとよいです。

指導員や保育職、その他の専門職、どんな職種であってもです。

子どもの現状を把握した上で「要望」や「願い」を組み立てていきます。

支援者の中には、家族(保護者)と自分の立場を混同してしまっている人がいます。

支援者はあくまで第三者です。

冷たく聞こえるかもしれませんが、実際そうなのです。

第三者だからこと出来ることを探っていくことが大切です。

 

 

子どもや家族のため

子どもや家族のためとはどのようなことをいうのでしょうか?

子どもの状態によっては親御さんや家族の生活が成り立たなくなっているケースがあります。

兄弟姉妹は特に影響を受けます。

保護者の介助量を減らすことを目的として支援を組み立てることがあります。

家族が潰れてしまったら、子どもが頼るところがなくなってしまうからです。

 

では、やはり家族の願いは100%叶えるようにした方がよいのではないか?

そのように考えてしまうのではないでしょうか?

 

保護者の希望を丸ごと受け入れることを目標にしていない?

保護者の意見が絶対とは限りません。

かといって支援者の意見が正しいとも限りません。

言語聴覚士のような専門家であっても、支援員などの保育スタッフであっても、それぞれの視点を持って子どもたちと関わっています。

保護者が持っていない視点を提供できるのもプロの役割ではないでしょうか?

あくまで助言ですよ。

むりやり相手の意見を変えさせるのではありません。

何も考えずに保護者からの要望を100%叶えるようとするのはただのご機嫌伺いではないでしょうか?

 

 

まとめとして

今回は、保護者からの要望を100%叶えるのは良い支援者なのか?というはなしをしました。

どのような要望や願いを出されたとしても支援者は「なぜ親御さんはそう言ったのか?」と考えてみることが大切です。

親御さんの心中を察したうえで、支援を組み立てるうえで参考にしていくのです。

親御さんや子どもの気持ちに寄り添いつつ「どうすればよい支援になるのか?」と考えていきます。

何も考えずに

・100%従う
・無視する

ということはやめましょう。

よかったら参考にしてみてくださいね。