なぜ肢体不自由児に感覚遊びがよいのか?
「活動がマンネリ化している…」
「ただ遊ばせているだけになっている気がする…」
放課後等デイサービスの現場で、こんな悩みはありませんか?
そのときに重要になるのが “感覚遊び”の視点です。
この記事では
・感覚遊びとは何か?
・なぜ必要なのか?(目的)
・種類と具体例は?
・支援での活かし方は?
を、現場で使える形で紹介していきます。「遊びが支援に変わる」支援をつくりましょう。
感覚遊びとは?
感覚遊びとは、視覚・触覚・前庭覚・固有覚などの感覚を使った遊びのことです。身体の感覚にうったえかけるような遊びの総称です。
子どもは遊びの中で
・身体の使い方
・周囲の認識
・行動の調整
を学んでいきます。障害がある子もない子も同じように遊べることがメリットの一つです。
なぜ感覚遊びが必要なのか(目的)
感覚遊びの目的はシンプルです。
「感じて、動いて、調整する力」を育てることです。
よくある誤解しがちなのが・・・
・楽しませるための遊び
・時間を埋める活動
これでは不十分です
本来の目的
感覚遊びはシンプルに見えますが、大切な目的があります。
・身体の使い方を学ぶ
・刺激に慣れる
・行動をコントロールする
これが“支援としての遊び”なのです。
放デイ&児童発達支援での感覚遊び
障害児が学校が終わってから通う施設である「放課後等デイサービス(放デイ)」や未就学児が通う施設の「児童発達支援」では様々な活動を提供しています。
▶放デイについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください
⇒ 放課後等デイサービスの1日の流れ|仕事内容と実際の関わり方
今日は、どんな活動にしようか?
活動内容を考える人は頭を悩ましているのではないでしょうか?
そんなときはぜひ感覚遊びをやってみてください。
感覚遊びは多少の発達段階の差は関係なくなります。
集団で活動しなければならないときでも有効です。
感覚遊びをするときの注意
ふだん、私たちが無意識に受け取っている感覚と、支援の種類は下記の表の通りです。
| 感覚の種類 | ねらい | 遊び例 |
|---|---|---|
| 触覚(さわる感覚) | 感覚の過敏・鈍麻の調整身体の境界の理解 | スライム砂遊び水遊び |
| 前庭覚(バランス) | 姿勢の安定動きの調整 | ブランコトランポリン回転遊び |
| 固有覚(筋肉・関節) | 力の調整身体の使い方 | 押す・引く遊び重たいもの運びクッション遊び |
| 視覚・聴覚 | 注意・集中情報処理 | ボール遊び音遊び追視遊び |
人間には様々な感覚があります。手や目だけではありません。体中の感覚器を使って外からの情報を受け取り理解しているのです。発達が初期段階の子たちは感覚器は 1つずつしか使うことができません。大人が考えているよりもシンプルな遊びのほうが、子どもは理解しやすいのです。
(手と目を同時に使うことができない)
状況把握が難しい理由
しかも、わたしたちを取り巻く「情報」というのは、ひとつの感覚でできているわけではありません。視覚+触覚、のように複数の感覚からなっているのです。
感覚を上手に受け取るには、感覚を受け入れる経験を重ねます。、そして次に、他の感覚も意識するように促していく。。
先ほどの「手と目は同時に使えない」という例では、触る→見る→見て調整するという流れを作っていくわけです。
単なる「感覚遊び」でも「どの感覚にうったえかける遊びなのか?」を考えることは大切なポイントとなります。
五感+α
分かりやすいのが「五感」と呼ばれるものです。
目で見て、匂いを嗅いで、触ってみて、味わって、耳で聞いて。
「五感」以上に大切な分け方があります。
発達支援や療育で重要だと言われるのは次の5つです。
・視覚
・聴覚
・触覚
これらに加えて次の2つもおさえておきたいです。
・固有覚
・前庭覚
これら5つはまとめて「基礎感覚」と呼ばれています。固有覚や前庭覚という感覚があります。
固有覚&前庭覚
固有覚と前庭覚。
あまり聞かないことばです。
これらは本人も感じにくい感覚なのです。
固有覚(こゆうかく):
固有感覚と言ったりもします。
筋肉や関節が曲がったり伸びたりしたときの感覚です。
わたしたち大人はこの感覚を無意識的に感じています。
そのため、ちょっと離れたところにある物を持ったり、立ち上がったりが無理なくできるのです。
自閉症のなかには、手を曲げたり伸ばしたりすることを繰り返している子がいます。
これは固有覚を感じにくいからです。
何度も繰り返しやってみないと手足を曲げ伸ばした感じが身体に入ってこない(感じられないのです)。
あれは癖ではないのです。
前庭覚(ぜんていかく):
前庭感覚と言ったりもします。
これはバランス感覚のことです。
揺れを感じるか?というものです。
この感覚が充分でないとまっすぐ歩くこともできません。
フラフラしてしまう。
発達障害の子で公園の遊具を渡るときにいつもピューっと駆け抜ける子を見たことがありませんか?
これは運動神経がよい子ではないことが多いです。
ゆっくり歩くとバランスが取れないから駆け抜けている状態なのです。
基礎感覚
基礎感覚とは
特に基礎感覚を重視しているのが「感覚統合」という考え方です。
簡単に言うと「感覚統合」では感覚(感覚刺激)を次のように扱っています。
人は常に様々な感覚が身体を通して自分の中に入ってくる。
入ってきたものは脳へと送られる。
それはひとつではなく、いくつもの感覚が送られてくる。
その感覚をまとめ上げたものが大切な情報となる。
その土台となるのが「基礎感覚」なのです。
これはピラミッドのようにあらわすことができます。
常に不安定であり、土台部分にあるものが一つでも育たなければ、上のものは崩れてしまいます。
崩れるということは育たないということです。
感覚にも難易度がある
感覚の受け取りやすさがあります。どの感覚が「簡単に感じ取れるのか?」ということです。
易 ◆揺れ、手足の曲げ伸ばし(前庭覚・固有覚)
↓ ◆手で触れた感覚(触覚)
↓ ◆耳で聞いた感覚(聴覚)
難 ◆目で見た感覚 (視覚)
面白い絵本を見せるよりも、抱っこしてユラユラと揺らしてあげた方がよっぽど理解しやすいのです。
特に障害の重い子ほどこの難易度が重要になってきます。
感覚遊びの種類と目的
感覚にはいくつか種類があることをおはなししました。感覚遊びの「ねらい」は目的の感覚刺激をじっくりと感じてもらうことです。
ただし、無理強いはいけません。「楽しい」遊びとして感覚遊びを提供していきます。押さえておきたいポイントを表にまとめました。
| 感覚 | 目的(ねらい) |
|---|---|
| 前庭覚(バランス) | 姿勢の安定動きのコントロール覚醒レベルの調整(落ち着き・活動性) |
| 固有覚(筋肉・関節) | 力加減の調整身体の位置の把握(ボディイメージ)落ち着きや安心感の形成 |
| 触覚(さわる感覚) | 感覚の過敏・鈍麻の調整身体の境界の理解触れられることへの慣れ |
| 聴覚(音) | 注意・集中の向上音の選択(聞き分け)言語理解の土台づくり |
| 視覚(見る) | 視線のコントロール追視・注視の発達空間認知・情報処理の向上 |
感覚遊びを支援にするポイント
感覚遊びを支援に取り込むとき、下記の3つのポイントを押さえておくとよいです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 目的を持つ |
× ただ遊ぶ |
| 子どもに合わせる |
過敏なのか鈍いのか |
| 変化を見る |
行動が変わったか落ち着いたか |
よくある失敗
「活動に感覚遊びを入れないと!」ということばかり考えていると、失敗しやすいことがあります。それが下記の例です。
① 刺激が強すぎる
音や振動を強くすれば子どもは喜んでくれるだろうと思い、ただただ大音量、強い刺激の玩具を与えた
→ 逆に不安定になってしまいます。
② 同じことの繰り返し
活動内容が思いつかないから、毎日、スライムをつくって遊んでいる
→ 意図的に繰り返すのはOK。何も考えず繰り返しても発達の促進にはつながらない
③ 目的がない
「感覚遊びおもちゃ」とパッケージに書いてある玩具を、とりあえず子どもに渡す。「ほら、遊んでごらん」と放置する
→ 子どもに合っていない場合も多く、ただの作業になってしまうこともあります。
肢体不自由児と感覚遊び
その前に、肢体不自由児と感覚遊びについて考えていきます。
感覚遊びはどんな子でも参加出る遊びです。
・障害がない子
・発達障害の子
・肢体不自由の子
本当に誰でもOKです。
注意点
しかし、注意点がいくつかあります。
・何でも口に入れる子
⇒ スライムやビー玉など、口に入れると事故が起こる可能性があるものは要注意
・過敏がある子
⇒ ほとんどの子は触ったりしても何ともないけれど、極度に触るのを嫌がる子がいます。これを「過敏」といいます。
※生理的過敏と心理的過敏
◆生理的過敏
⇒ 触覚や聴覚など生理的に受け付けられない状態。いつ、どんな場面でも過敏が出ます。自閉症などの子に多い
◆心理的過敏
⇒ 経験が少ない場合、何となく嫌な場合、受け付けられない子がいます。その時によって過敏が出たりでなかったりします。生理的過敏とは異なるので注意が必要です。
▶過敏に対する支援を知りたい方はこちらもご覧ください
⇒子どもの「わがまま」と「感覚過敏」の関係
ちなみに発達障害の子でよくみられる「偏食(へんしょく)」。特定の食材を食べられない症状です。これも感覚が関係しているケースがあるので注意が必要です。
▶偏食の支援でお悩みの方はこちらの記事もご覧ください。
⇒ 子どもの偏食とは?原因と対応について
感覚ごとの目的
それぞれの感覚を詳しく見ていきましょう。
前庭覚
※「前庭感覚」が弱い子は普段からクルクルと回っていたり揺れる遊具を怖がったりします。
例)
・シーツブランコ
・トランポリン、エアートランポリン
固有覚
※自覚しにくい感覚である「固有覚」。
障害を持つ子のなかには固有覚を十分に受け入れられない子がいます。それが原因でいつも飛び跳ねている等、落ち着きのなさが見られる子もいます。
揺れなどの「強い刺激」を取り入れることで「心地よさ」を感じられる可能性があります。それで落ち着くようになるのです。
例)
・綱引き
・紙ちぎり
・ハサミ
触覚
※「触覚」が弱い子のなかには他者から触られることを嫌がる子がいます。抱っこなどのスキンシップを嫌がることも。見慣れないものには近づかないことが多いです。
例)
・小麦粉粘土
・片栗粉粘土
・春雨遊び
・スライム
・泥んこ遊び
・絵具遊び
・水遊び
・その他
⇒ スポンジや葉っぱ等、異なる触感のものに触れる
聴覚
耳で聞いた感覚
※「聴覚」に過敏がある子は特定の音や大きさに対して過剰に反応するようになります。何かに夢中になっているときには過敏が和らぐこともあります。
例)
・リズム遊び
・楽器遊び
視覚
※「視覚」に過敏がある子のなかには、蛍光灯の光(チカチカした感じ)を嫌がる等、特定のものを見るのが苦痛な子がいます。
逆にタイヤや扇風機の回転を見るのが好きでずっと見ていられる子もいます。
例)
・絵本
・ペープサート
・光遊び
⇒ 暗い部屋でペンライト等を使って光を動かす
⇒ スヌーズレンのような緩やかな光を楽しむ
・ミラーボール
・パラバルーン
・スノードーム
・万華鏡
▶「偏食」も感覚に関係しています。偏食に関する支援を知りたい方はこちらに記事もご覧ください。
⇒ 子どもの偏食とは?原因と対応をみつけよう
まとめとして
今回は感覚遊びのはなしをしました。感覚遊びにも目的や種類があります。
障害が重い子ほど丁寧に準備をしてあげると活動自体がよい経験となります。
たとえば、落ち着かない子に「固有覚」を入れたり、触覚過敏の子には段階的に刺激を入れたり、子どもの様子によって、やり方を変えてみてください。
ポイントは、
・目的を持つ
・子どもに合わせる
・刺激量を調整する
侮ることなかれ「感覚遊び」。よかったら参考にしてみてくださいね。
感覚遊びで困ったらときのオススメの本
感覚遊びの本はたくさん出ています。「何をやればよいのか?」がイラスト入りで書いてある本なので取り入れやすいです。活動内容で迷っている方にオススメです。





