言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

「摂食障害」と「摂食嚥下障害」の違いって何?

「摂食障害」と「摂食嚥下障害」の違いが説明できますか?

 

食事の分野には、「ムセ」と「誤嚥」のような似た用語がたくさんあります。

今回は、混合されやすい「摂食障害」と「摂食嚥下障害」の違いについてです。

 

   

摂食障害とは

「摂食」とは、食べること、その行動(食行動)です。

「摂食障害」は食べる行動が正常ではない状態をさします。

例えば、食べる量が極端に少ない・多い、体内に吸収されないように吐いてしまう等です。 

 

www.hana-mode.com

 

 

摂食嚥下障害とは

「摂食嚥下」は、

食べ物を認知して
 ↓
それを口に入れて
 ↓
口の中で処理をして
 ↓
飲み込んで
 ↓
胃に送られる

食べることの流れのことです。


「摂食嚥下障害」とは、上記の過程のなかでいずれかに障害がある状態です。

www.hana-mode.com

 

 

「摂食障害」と「摂食嚥下障害」の違い

この2つの違いは、

・食べるための「行動」に問題があるのか?
・食べるための「機能」に問題があるのか?

そのためICD11やDSM―Ⅴには「摂食障害」が疾患として分類されていますが、「摂食嚥下障害」は症状をさすので、それらに載っていないのです。

 

 

 ICDって?DSMって?

疾患名を調べていると「ICD」とか「DSM」ということばにぶつかります。これらは世界的な疾患の分類です。

       

◆DSM 

精神障害の診断と統計の手引き

【作成機関】

アメリカ精神医学会という機関が作成しています。
最新版は2013年(日本語版は2014年)に第5版である「DSM-Ⅴ」です。      

【分類範囲】

精神障害のみを扱っています。

【日本の行政での使用】

国としては使用していませんが、医学的には日本でも使われています。

  

 

◆ICD

疾病及び関連保健問題の国際統計分類

【作成機関】

WHO(世界保健機関)が作成しています。
最新版は2018年6月に第11回改訂版である「ICD11」が公表されました。

【分類範囲】

全ての疾患を扱っています。精神疾患だけではなく、身体疾患も含まれています。   

【日本の行政での使用】

国として使用しています。

 

 

 なぜ日本の行政ではICDを使う?

・DSMは精神障害のみの分類です。国が疾患や死亡の統計を作る際、身体・精神の疾患・障害をひっくるめて計算することができるためだと考えられます。

  

※上記は2019.12.12現時点での情報です

 

 

 

摂食障害について(分類)

摂食障害(食行動の障害)の分類は下記の通りです。

  

◆ICD11

食行動症または摂食症群

( Feeding or eating disorders )

8.1 神経性やせ症<神経性無食欲症>

8.2 神経性過食<大食>症

8.3 むちゃ食い症<過食性障害>

8.4 回避・制限性食物摂取症

8.5 異食症

8.6 反芻・吐き戻し症

8.7 食行動症または摂食症、他の特定される

8.8 食行動症または摂食症、特定不能

 

 ◆DSM-Ⅴ

食行動障害および摂食障害群

( Feeding and Eating Disorders )

・ 異食症

・ 反芻症/反芻性障害

・ 回避・制限性食物摂取症/回避・制限性食物摂取障害

・ 神経性やせ症/神経性無食欲症

・ いずれかを特定せよ

・ 摂食制限型

・ 過食・排出型

・ 神経性過食症/神経性大食症

・ 過食性障害

・ 他の特定される食行動障害または摂食障害

・ 非定型神経性やせ症

・(頻度が低い、および/または期間が短い)神経性過食症

・(頻度が低い、および/または期間が短い)過食性障害

・ 排出性障害

・ 夜間食行動異常症候群

・ 特定不能の食行動障害または摂食障害

 

 

 

 

摂食嚥下障害(分類・流れ)

 摂食嚥下とは、「食べ物がある」「これは食べられるものだ」と認知して、それが胃に入るまでの一連の流れのことです。一般的に5つの段階に分けることができます。

摂食嚥下障害は、この段階いずれかに何らかの“障害”があるため、うまく食べられない状態をさします。

 

 ①先行期

食べ物を認知する段階。見た目や匂い、大きさなどを判断して口へ運ぶまで

 

②準備期

口に入った食物を、押し潰したり咀嚼(そしゃく)したり処理をするまで

 

③口腔期

処理をした食物を、舌を使って唾液と混ぜて塊(食塊)をつくり、喉の奥(咽頭)へと送るまで

 

④咽頭期

嚥下の反射が起こる。この反射では、呼吸を一瞬止めたり、鼻と口の通路をふさいだり(鼻咽腔閉鎖)、食道を拡げたり(食道入口部開大)等、スムーズに嚥下が行えるように構えをつくっていく。

 

⑤食道期

食塊を胃へと送る(食道の蠕動運動)。意識的にコントロールすることはできない。

 

 

 

参考資料

◆『日本医事新報社 摂食障害のDSM-5における変更点』
 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11074

◆『DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)』
 日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会
 https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf

◆〈評論〉 精神障害の診断と統計マニュアル(DSM) の改訂について
 田巻義孝、堀 田 千 絵、加 藤 美 朗
 https://fuksi-kagk-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1267&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

◆『ICD-11 新病名案 - 公益社団法人 日本精神神経学会』
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/ICD-11Beta_Name_of_Mental_Disorders%20List(tentative)20180601.pdf