麻痺について
最終更新:2021.01.14
今回は麻痺についてです。麻痺と聞くと脳卒中を思い浮かべると思います。事故や病変以外にも、先天的なものや脳性麻痺のような出生時にできる麻痺もあります。
関わることの多い「麻痺」について復習していきましょう。
麻痺とは
麻痺とは、神経が障害されることによって、運動や発声、食事などの機能の一部が失われることです。事故や脳卒中などで運動や感覚がダメージを負うことが多いです。
・運動・・・動きにくくなる、動かなくなる
・感覚・・・感じにくくなる、感じなくなる
その他にも、正常であれば出ないはず反射が出たり、出るタイミングが遅れたりするケースもあります。
麻痺の種類
様々な分類方法がありますが、今回は、運動麻痺のパターンからみた分類です。
① 片麻痺
病巣(脳)の反対側に半分すべて麻痺が出た状態。大観、内臓も。
(ex.失語症:左脳損傷で右麻痺)
バランスが悪い。症状が重いと杖をついても歩くことが難しいことも
② 単麻痺
脊髄から出ているもの。上下肢のどれか1本が麻痺。上肢が多い
(ex.脱臼などでおこりやすい)
下位運動ニューロン障害⇒弛緩性麻痺=単麻痺
③ 対麻痺
上下肢のどちらかが麻痺。下肢が多い。
(ex.脊椎損傷、腰椎損傷)
下位運動ニューロン障害⇒弛緩性麻痺=対麻痺
下肢で体重を支えられない。感覚も麻痺する
④ 四肢麻痺
首から下が麻痺。
(ex.脊椎損傷、腰椎損傷)
⑤交代性片麻痺
脳の損傷側と他方、両方に麻痺がおこるもの。
脳幹部の障害によって起こりうる
麻痺があるとどうなるのか?
麻痺があると、様々な部分のコントロールが効きづらくなります。また、感覚(知覚)が低下するために危険に気づきにくいことがあります。下記はその例の一部です。
・バランスがとりづらい
→ 身体の片側に麻痺がある場合、バランスがとりづらいことがある
・喋りづらい
→ のどや口のコントロールがうまくいかない。はっきり話せないため聞き取りづらい声になる
・誤嚥のリスク
→ のどや口のコントロールがうまくいかない。ムセやすく、飲み込みづらくなる
→ 顔面の麻痺がある場合、口が閉じづらくなる。唾液が垂れることも
・見えづらい
→ 視野が欠損していることがある。見えづらくなり、危険予測も△
■ 片側が麻痺の例
① 舌(左麻痺):
患側の方に偏ってしまう
② 軟口蓋(左麻痺):
健側側に偏ってしまう
※ 基本的には健側方向に動くが、個人差がある。
姿勢緊張の異常
例えば・・・
脳性麻痺の子は
・麻痺がない(弱い)側が弛緩している
・麻痺がある(強い)側が過緊張している
ということが同時に起こることがあります。
一人の子どもに「過緊張」と「弛緩」の状態が混在している。
これら2つによって、自分の身体のコントロールがより難しくなってしまいます。
介助・支援
① 更衣介助
基本的には、脱健着患です。
これは、脱ぐときは健側(麻痺がない方)から脱いで、着るときは患側(麻痺のある方)から着る、という考え方です。介護職の資格を取る際に覚えた人も多いと思います。脱健着患(だっけん ちゃっかん)です。
② 歩行介助
子どもが倒れたときに助けられるように、患側にいるようにします。杖を持っているときには、持っていない側から介助をすることが多いです。
③ 食事介助
介助者は左右(健側・患側)どちらから介助を行うべきか?
悩むと思います。個別に決めていくしかありません。
患側方向に倒れやすい子であれば、介助者は患側側からフォローしたほうが安定しますし、子どもや介助者の利き手も関係してきます。
注意すべき点は・・・
麻痺の程度によっては、麻痺側で食物をうまく処理できないケースがあるということです。噛んだり、食塊を作ったり、口の中で食物を保持したりするこができないと、ムセたり、詰まったりする危険性が高くなります。
まとめ
今回は子どもの麻痺について紹介しました。
子どもの「苦手さ」には麻痺が原因となっているケースがあります。いくら大人が「頑張れ」と言っても、子どもが自分ではどうにもできないこともあるのです。
子どもにつらい思いをさせないためにも、大人が麻痺について知っておくことが欠かせないのです。
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参考資料
◆言語聴覚士のための基礎知識
臨床神経学・高次脳機能障害学
医学書院
◆月刊ナーシング(2011.8 vol.31 NO9)
麻痺、意識障害
学研