言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

障害児の遊びを発達年齢でとらえよう!遊ぶことの意味が見えてくるはず!

障害のある子へ遊び。気をつけたほうがよいことって?

子どもは遊びを通して様々なことを学びます。

障害のない子であれば自分の力で様々なものを吸収していきます。

しかし、障害がある子の場合、うまく遊べない子が多くいます。

 

いつも部屋の隅で一人遊びをしている。

他者の存在には気づいているのかすら分からない。

支援者はどんな活動や遊びを提供すればよいのかまるで分からない・・・。

 

そういう子には「見守り」だけでよいのでしょうか?

何かできることはないのでしょうか?

今回は「発達年齢」を考えてから遊びを提供してみようというはなしです。

 

 

 

子どもの様子からおおよその発達段階を知ろう

発達年齢・発達段階を知るためには検査をしなくちゃいけないんでしょ?

そう思われる人も多いでしょう。

確かに発達検査を受けることで子どもの発達状況を知ることができます。

しかし、観察するだけでも大まかな発達を知ることができます。

 

たとえば、自分以外に物や人とどう関わっているかをみてみましょう。

 

チェックポイント!

・周囲にどのくらい意識を向けられるのか?

・どのくらい理解しているのか?

・物や人と関わることができるのか? 

 

上記のようなことが苦手な子は、発達的に初期の段階であることが多いです。

もちろんすべてではありません。

自閉症や自閉傾向があれば発達や知的に高くても他者に関心を示さないことがあります。

 

人や物に気づいているのか?

どのくらい「外の世界」に意識を向けられるのか?

一見難しそうなことばに思えるかもしれません。

簡単に言うと人や物に気がついているのか?ということ。

 

自分一人で遊びに没頭しているのではなくて、周囲の大人に要求を出す

こんなふうに他者の存在に気づいているかどうかです?

 

さらに人だけではなくて、自分の周りにある玩具に気づいているか?

手を伸ばして玩具をとって遊ぶ

自分の手に触れれば玩具の存在に気がつく。

逆に言えば触るまで周りのものに気がつかないということです。

これは物の存在にきがついているということ。

 

 

遊びに「発達」の視点を入れるメリット

どんな障害があったとしても、ちょっと視点を変えるだけで子どもと関わりやすくなります。

キーワードは「発達」です。

では「発達」という視点を持つことによるメリットとはどのようなものなんでしょうか?

ここでは発達的に初期段階の子を例に説明していきます。

 

 

遊びで外の世界を知る

子どもは遊びを通して様々なものを学んでいきます。

・自分の身体像をつかむ

・自分の外には何があるのかを知る

・物と自分の関係を知る

これらが理解する力、社会を知る力へと育っていくのです。

 

障害が重い子や発達が初期段階の子の場合、うまく遊べないことがあります。

そうするとどうなるかというと・・・

・本来であれば遊びから学べることが身につかない

・興味や関心が育ちにくくなる

といった問題が起こるのです。

 

 

なぜ玩具を使うのか

遊びと聞いて、まっさきに思い浮かぶのが「玩具」です。

玩具は市販のおもちゃだけではなく、手作りもの、石や木片などその辺に落ちているものも玩具となります。

 

玩具(物)があることで・・・

子どもは玩具に気持ちが向かいやすくなります


玩具その物の感触や使い方、名前等に意識が向きます


玩具を通して、人に意識が向きます

・「子ども」と「物」(二項関係)

・「子ども」と「物」と「大人」(三項関係)

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玩具で遊ぶことがコミュニケーションの土台になるのです。

子どもは、玩具があればそこに意識が向きます。

逆に、そこに人しかいなければ、気持ちは大人に向いてしまいます。

 

 

年齢別遊びの拡がり

それでは年齢別の特徴を見ていきましょう。

 

0歳

自分の身体に気がつく。

そして実際に動かして確かめてみる。

 

0歳前半ころは、自分の手に気づいて動かしてみる等、自分の身体を使って遊んでいます。

 

これまで仰向けで寝ていた。

しばらくすると腹ばいになります。

0歳半ばを過ぎたころには座れるようになります。

 

座れるようになると、視界も拡がるので、興味の幅も拡がってきます。

この頃の遊び方は一人遊びです。

 

1歳

1歳を過ぎると一人で立って歩けるようになってきます。

自分で好きなように探索ができるということです。

 

手を使って、物を「出したり入れたり」するのを好みます。

大人からみると一見「イタズラ」のようにみえるはずです。

しかし、これは物の変化や材質、因果関係などを確かめるための大切な経験なのです。

様々なものを自分の周りに物を集めたがるので、充分な玩具の量と空間があると思う存分に遊ぶことができます。

 

2歳

他者の存在に気づくようになります。

他者のことをよくみるようになり、模倣遊びができるようになってきます。

これまで学んだことをもとに発展させていく時期ですので、他者と遊ぶ経験が大切です。

 

「塗り絵をするからクレヨンを準備する」

「積み木を並べて線路を作る」

のように遊びに目的が生まれて、規則もできてきます。

人形相手に遊んであげられるようにもなってきます。

(人形の足を持って投げるのは違います)

 

自分自身に気づく時期でもあるので、子ども個人をより大切に扱うことが求められます。

そのため、大人は話し方や説明の仕方には気をつけましょう。

 

 

どんな遊びがあるのか?

 

0~2歳ころは自分の身体を通して周囲にある情報を仕入れていく時期といえます。

そのときのキーワードが感覚。

感覚遊びは理解を深めるための土台となる力がつけられる大切な遊びなのです。

 

4歳以降になると、さらに複雑なものでも楽しめるようになってきます。

それが

・ことば遊び

・数遊び

などです。

 

その他にもいろんな種類の遊びがあります。

その子に合った遊びの種類や遊び方を探っていきましょう。

 

 

感覚遊び

子どもの感覚を刺激してあげることは周囲のものに気づくきっかけとなります。

経験が少ないために触るのを嫌がることがあります。

感覚過敏とは別物なので分けて考える必要があります。

 

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ことばあそび

喋れるようになると、ことばを使って遊ぶようになってきます。

これを「ことば遊び」と言います。

しりとりやなぞなぞ等が有名です。

 

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子どもに合った遊びなのかを探る

子どもに合った遊びとはどのようなものを指すのでしょうか?

大前提となるのが子どもがその遊びを受け入れられているのか?です。

 

子どもによって遊びを受け入れられるかどうか?が違います。

感覚的に受け入れられない子もいます。

やり方を理解できない子もいます。

 

 

子どもに合った遊びの提供するために

では、目の前にいる子に「合った遊びなのか」を知るためにはどうすればよいのでしょうか?

やり方はいろいろあると思いますが・・・

 

①まず大人が主導権を持って、その子と一緒に遊んでみる

②大人が抜けて、子どもが一人、玩具で遊ぶ状況にする

 

大人が抜けた後にも遊び続けるようなら、その子は「玩具で遊べている」と判断できる。

遊びを止めてしまうならその子は「大人と遊んでいただけ」ということになります。

玩具と遊んでいるのか?大人と遊んでいるのか?

「楽しい・楽しくない」は別としても、それが「合った玩具なのかどうか?」ということが分かります。

 

 

遊びの空間づくり

遊び空間も「分かりやすく」することが鉄則です。

・同じ場所で複数の遊びを同時に展開させない

・あそびの種類が同じものは、同じ場所においてあげる

遊べる場所が限られている、というケースもあると思います。

その際は、パズルやヒモ通しなどは机の上で、ままごとは床で、と場所の区切れを明確にした方が集中できることもあります。

 

 

片付け

子どもは、無理にやらせても嫌がられるだけです。

片付けなんて特に。

 

まずは大人の動きを見せる。

さらに、玩具の置く場所は決めておく。

決まった場所があれば「やるべきこと」が明確になるので、そこに戻すようにします。

この「決まり事」「お約束」がルールの理解につながります。

 

子どもの知的な年齢を把握することが大切。

理解度に合わせた玩具や遊びの選び方、環境設定をすることで、子ども自身「いま何をするのか」が分かりやすくなります。

 

 

今後を見越した支援を!

発達年齢によって「今やっておきたい」遊びというものがあります。

それは今後の発達のための土台となるものです。

そのため実年齢(生活年齢)だけで遊びを決めてしまうと、

・やらされた感じが強く出た遊びになってしまう

・子どもが興味を持てない

といったように、うまくいかないことが多いのです。

 

発達を学ぶ意味

障害児分野で働く人が、なぜ健常児の発達(障害がない子の発達)を学ぶのでしょうか?

それは、たとえ障害を持っていても、発達の流れは一緒だからです。

確かに発達の抜け落ちやつまずきはあります。

そこを把握して、丁寧に支援していく。

障害児の支援とは「丁寧な子育て」なのです。

 

自分の子どもではなく人様の子です。

第三者だからこそできることはたくさんありますよ。

 

 

オススメのグッズ

ちなみに、玩具では他者と関わらない子でもこれなら関われるというものがいくつかあります。

 

① リトミックスカーフ

薄いガーゼのような向こう側が透けて見える布です。

ムーブメントスカーフ、オーガンジー等、様々な呼び名があります。

玩具では遊べないけれど、この布なら掴んだり放したり遊ぶことができるという子がけっこういます。

なぜかこの布なら受け入れられるという子がいます。

特に自閉症や肢体不自由の子の療育ではよく使われています。

 

 

 

 

② ツリーチャイム

ツリーチャイムは金具に触れて音を出す楽器です。

ウインドウチャイム、バーチャイム等、様々な呼び名があります。

肢体不自由児の療育や授業でよく使われる楽器です。

この楽器が好きな子も多いです。

 

ツリーチャイムを使うときのポイントは

・子どもの手を無理やり動かさない

・子どもの反応を待つ

というような子どもの自発的な動きを引き出すことが重要なのです。

 

 

 

まとめとして

今回は、障害を持つ子に遊びについて説明しました。

施設などで遊びを提供したい。

でも何を大切にすればよいのか分からない。

 

ポイントは「現在の発達はどのくらいか?」を支援者が知ることです。

・どのくらい理解できるのか?

・身体の使い方はどうか?

 

ぜひ発達年齢という視点を持ってみてください。

ちょうどよい遊びを見つけやすくなるはずです。

よかったら参考にしてみてくださいね。

 

 

 

参考文献