教材教具について
障害を持った子と遊ぶとき、どんな玩具(おもちゃ)を使っていますか?
玩具には様々なタイプのものがあります。
・ビー玉のような昔からあるような玩具
・スイッチを押すと光って音が出る玩具
・自分で考えて動くAIが搭載された玩具
数えきれないくらいに。
実際に、障害を持った子にはどのような玩具が有効なのでしょうか?
今回は、教材教具(玩具)についてのはなしです。
この記事を読むことで★子どもに合った玩具という視点が身につきます。
教材教具って玩具のこと?
教材教具と聞くと「学校教材」や「お勉強」が思い浮かぶと思います。
しかし、学校や施設では教材教具として玩具や絵本を使っています。
それはなぜでしょうか?
玩具を使うことで楽しみながら様々なことに気づくことができるからです。
・「始まり」と「終わり」が分かりやすい
・ 興味を持ちやすい
・ 物の変化にはルールがあるということ
大人は「玩具にあるような光って音が出て・・・」という複雑な玩具をあげたくなります。
しかし、シンプルな方が子どもが理解しやすいのです。
障害があると玩具の使い方や変化を理解することができないことがあります。
そのため、複雑な玩具を提示しても触って終わり、口に入れて終わり、という遊び方になってしまうのです。
大人だけが盛り上がる、そんな場面、見たことないでしょうか?
なぜ教材教具を使うのか
玩具を使う理由は「楽しく遊ぶため」だけではありません。
遊びを通して様々なものに気づいていくことが目的です。
始まりや終わり、前後・左右・上下などの空間など、これまで気づいていなかったものに気づくことで、周囲にある情報を捉えやすくなります。
これらは生きていくための基盤となる力といっても過言ではありません。
①外からの情報をうまく取り入れる
障害があるために周囲からの情報をうまく取り入れられない子どもたちがいます。
・物事の変化に気づかない
・いつ始まったのか、いつ終わったのかが分からない
・ものが同じなのか違うものなのかが分からない
・音や声、他者の身振り等の意味が分からない
そういった状態にある子は、
・一見、ぼんやりしている
・周囲からの刺激を遮断している
という評価をされがちです。
物事の変化に気づくことができなければ、外の世界にある「楽しさ」にも気づけません。
そのため、“すりガラス”に囲まれているような状態ということができます。
そんな子たちが、外の世界(外界)との関わり方を学ぶためのツールとして玩具(教材教具)を使っていきます。
玩具を使うということは手や目など身体の感覚を使うことです。
また、操作をすることで身体を動かします。
②人と関わるための第一歩
初めから人と関わるのが上手な子はいません。
物を使うときは、はじめは一人で玩具に向き合う
↓
徐々に他者の介入も受け入れられるようになる
↓
他者と一緒に遊ぶことができるようになる
そういった「子ども―もの」「子ども―他者」という「自分 対 その他(2項関係)」から
「子ども―もの―他者」という「自分 対 その他 対 さらに別のもの(3項関係)」
へとつなげるようになります。
今まで、自分だけの世界にいた
↓
徐々に他者へと意識が向けられるようになる
物(教材教具や玩具)を使って・・・
↓
さらに感覚を受け入れたり手や身体を使う経験を積む
↓
人間関係を深めていくことにもなる
コミュニケーション面が苦手な子には、直接、対人関係の発達を促すための練習をさせがちです。
しかし、それだけではどうしても越えられない壁が出てきてしまいます。その壁を越えるために、足元を底上げしていく。多方向からアプローチを行うことが大切です。
物を使って認知面や操作面などの発達を促していく。それが対人コミュニケーション面の発達へとつながっていく。
◆2項関係・3項関係について
子どもに合った教材教具やその使い方を提供する
同じ玩具でも、子どもによって「楽しさ」は異なります。
それは、玩具の楽しさは発達段階によって変わるからです。
①発達が進むことによって注目できる個所や範囲が広がる
例えば、一枚の絵を見るとき。
はじめは一か所だけに目が行ってしまう。
それが、部分部分のつながりを捉えられるようになっていくことで、全体の意味に気づき、新たな「楽しさ」が分かるようになります。
②同じ玩具でも違った意味を持ってくる
例えば、棒さしやペグさし。
はじめは、棒を穴に刺すだけで満足でした。
それが、棒の長さや太さの違いや、縦や横の方向に気づいたりするようになります。
「これ、分かる!」という種類が増えるということは「楽しさ」が増えるということです。
おさらい「教材教具について」
①教具・玩具の重要性
発達初期や自閉症の子のなかには「いま、ここで」何をすればよいのかが分からない子がたくさんいます。
自分のやること、いる場所に気づくことで気持ち(情緒)が安定します。
どんな良いアプローチだとしても、その子の気持ちが崩れていたら何も得られません。
まずは気持ちから。
そんな土台作りに貢献してくれるのが教材教具なのです。
また、教材教具を扱うには手や目を使うことが必要です。
それらを使う際には、目で動きをコントロールすることを学習していくのです。
発達臨床における教具の果たす役割
①教具使用が情緒の安定に貢献すること
②教具は手と目の協応を育て、認知・言語の発達の基礎となること
③教具は多面的な発達支援に貢献できること
④発達に対応した教授法の必要性感覚と運動の高次化による発達臨床の実際 P.95-96
宇佐川 浩 (学苑社/2007)
②教材教具を使う際のポイント
教材教具を使う際のポイントは、対象物が見やすく、手を伸ばしやすい姿勢を作ることが大切です。
また、どうしても大人からの指示は複雑になりがちなので、意識的にシンプルにすることを心がける必要があります。
また、教材教具、玩具を選ぶ際も同様です。
多機能な玩具=子どもにとって魅力的なもの、とはいえないケースがあることを忘れてはいけません。
重度重複障害児の認知学習において留意すべきポイント
①学習に意識を向けやすい姿勢を工夫していくこと
②子どもの視線の向きに着目した教材提示をすること
③子どもがすべきことが分かりやすい支援
( 環境の整理・応答性の高い教材・明確な教示 ) をしていくこと重度重複障害児の認知発達を促す授業づくり
-肢体不自由特別支援学校における教材と指導法の開発-
武部 綾子* 新田 賢司*
http://www.human.tsukuba.ac.jp/snerc/_userdata/06%E9%87%8D%E5%BA%A6%E9%87%8D%E8%A4%87%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%85%90%E3%81%AE
%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%99%BA%E9%81%94%E3%82%92%E4%BF%83%E3%81%99%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A.pdf
まとめとして
いかがでしたでしょうか。
今回は障害を持つ子のための玩具(おもちゃ)や教材教具を選ぶときのポイントについて説明しました。
玩具で遊ぶのは大人ではなく子どもです。
ぜひ参考にしてみてください。