言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

「きょうだい児」って?兄弟姉妹に障害児がいる子への支援

「きょうだい児」って何ですか?

今回は、障害を持つ子の兄弟姉妹のはなしです。きょうだい児だからこそ起こる問題というものがあります。なかなか日の目を見ない問題です。

 

 

 

1)きょうだい児ってなに?

 

兄弟姉妹に「障害を持った子」がいる子たちのことを「きょうだい児」と称することがあります。

障害児の通う施設には、さまざまなイベントがあります。親子参加のときには、障害を持った子の兄弟姉妹たちが来てくれることもあると思います。来てくれているときは、いつもニコニコしている子が多いですが、普段、彼らはどんなことを思っているのでしょうか?

 

 

2)きょうだい児が抱える問題

 

 外からは見えませんが、彼らが普段から考えていることには傾向があります。その思いはいくつかに分けることができます。

 

①自分のことを見てもらいたい"きょうだい児"たち

障害を持った子は、病院や療育施設など、親と一緒にいく場所がたくさんあります。そのため「きょうだい児」には親の関心が薄れがちです。

きょうだい児たちが非行に走ったり、他害をするなどのケースは極わずかです(ほとんどありません)。そのかわり、下記のような特徴がみられます。

 

a)親代わりする子

→(自分を犠牲にして)兄弟の面倒をよく見てくれる子

b)優等生になる子

→親を振り向かせるために勉強や運動を頑張る子

c)退却する子

→気持ちの上で家族とは距離を置く子

d)行動化する子

→怒りなどを行動で表して親に気づいてもらう子


 (参考:障害児のきょうだい達の心の健康~きょうだい達をどう健やかに育てるか~)

 

 

②他人に話してよいのか?

自分には障害を持った兄弟(姉妹)がいることを、誰かに話してもよいのか?という悩みを持っています。

きょうだいの文化的・生活実態調査(日本)の報告(東京大学大学院経済学研究科)によると、「親しい友人にだけ話していた」割合と「ほとんど話していない」割合は同じくらいでした。

 

「話さなかった」群の中には、「話す必要もなかったから」と答える人もいました。

しかし、胸にとどめておくには大きすぎる問題なので、話せる人を作ってある方がしんどくないと思います。

 

 

③自分の中でどんな位置づけにすればよいのか?

「話さなかった」群が他者に言わなかったのは

・言っても分かってもらえないから

・言う必要がなかったから

という理由が多かったです。

障害を持った兄弟姉妹がいることで、からかわれたり、いじめられたりすることがあります。

しかし、きょうだい児は、障害を持った兄弟姉妹のことを「恥ずかしい」とは思わない傾向があります。それは、下記のような教育をする母親が多かったからだと考えられます。

• 母親が、きょうだいの個性を発揮することを重視する

• 母親から「皆と合わせなさい」「目立つことをしてはいけない」 といった内容のしつけをあまり受けていない

• 母親から、「自分の意見は他の人と違ってもはっきりと主張しなさい」 「自分らしさを発揮しなさい」という内容のしつけを受けた

きょうだいの文化的・生活実態調査(日本)の報告
東京大学大学院経済学研究科 READ
http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/read/jp/archive/statistics/leaf121105.pdf

 
それらは分かったうえで、障害を持った兄弟姉妹を「存在しないことにしている」というふうに考えているきょうだい児も少なくありません。

 

 

④誰が面倒を見るのか?

親が亡くなった後も「障害を持った子」のお世話をしなくてはいけないのか?

家族だから。兄弟(姉妹)だから。という理由で。

その責任が重いプレッシャーとなります。

特に問題なのが、親が子どもの障害を全く認めていないケースです。そのため、療育施設や特別支援学校にも通えないケースもあります。兄弟姉妹がいれば「面倒を見るのは兄弟姉妹の仕事」と、当たり前のようにお世話をさせられ続けるのです。

 

 

3)まとめとして

 

きょうだい児は、自分の兄弟姉妹に障害がある子がいることを恥ずべきこととは思っていません。それよりも、

・自分が親に構ってもらえない寂しさ

・障害を持った兄弟姉妹の面倒を見るのは自分なのかという重圧

・就職や結婚に影響があるのかという不安

ということの方に考えがいっています。


・重い知的・身体的の障害があるか?

・兄弟姉妹の年齢が近いか?

によってもかわってくるのだと思います。

 


障害児の施設で働いていると、きょうだい児に会う機会が多くあります。

私たちがきょうだい児に対して直接なにかをしてあげられるわけではありません。しかし、その子らが置かれている状況を知っておくことは大切です。

施設のイベントで会ったら声をかけてみる、気軽に接してみる等で「私のことも気にかけてくれている」と思ってもらえるのは、悪くないかもしれません。

 
きょうだい児が、障害を持つ「兄弟姉妹に対して否定的な感情」は否定しないこと。それが大切です。
 
 
 

 

参考文献 

〔報告〕自閉性障害のある子どものきょうだいに対する母親の思い
川上あずさ 牛尾種子
家族看護学研究第17 巻第3号 2012 年

障害のある人の きょうだいへの調査 報告
財団法人国際障害者年記念ナイスハート基金

障害児の「きょうだい」の成長過程に見られる 気になる兆候 ―その原因と母親の「きょうだい」への配慮―
立山清美、立山順、宮前珠子

若いお父さん お母さんへ 障がいのある人の“きょうだい”のホンネ
全国障碍者と共に歩む兄弟姉妹の会
https://www.normanet.ne.jp/~kyodai/pdf/kyodai_panph.pdf

障害児のきょうだい達の心の健康~きょうだい達をどう健やかに育てるか~
https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/other/aichi_col/z01/z01014/z0101401.html#hannou

 きょうだいの文化的・生活実態調査(日本)の報告
東京大学大学院経済学研究科 READ
http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/read/jp/archive/statistics/leaf121105.pdf