言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

Ⅱ水準(感覚運動水準)とは

Ⅱ水準 感覚運動水準

 

前回は感覚と運動の高次化理論の1層Ⅰ水準について話してみました。今回は次のⅡ水準についてです。

 

 

 

物に対して意識が向き始めるようになってくる

これまでは、感覚刺激を受け取ることが苦手なので、周囲からの情報を上手に受け取ることができない段階でした。
Ⅱ水準(感覚運動水準)に入ると、揺れなどの比較的わかりやすい感覚刺激に気づくようになってきます。気付くだけではなく、物に対して手が伸びるようになってきます。さらにそれを口に入れて感触を確かめます。
私たち大人であれば、目の前にある物が何なのか、見ただけで判断がつきます。しかし、この段階の子は、まだ見るだけで物事を判断するのは難しい。だから、感覚を使う→運動を起こす、という行為を重ねて情報を受け取っていく作業を行うのです。
手の動きも直線的です。目で見て動きを微調整することがまだ難しいからです。物の見方も瞬間的なことが多く、じっくりとは見られません。

 

 

姿勢が大切

手が出るようになり、手や口で物を確かめる姿がみられるようになってきました。しかし、どんな場面でもとはいきません。大人が身体や状況を調整することが欠かせません。特に姿勢づくりが大切です。
まっすぐ座るために手を使って自分の身体を支えている子がいます。手はもうふさがっているので、これでは手は出ません。
寝転がっている姿勢であれば、両手が自分の身体の下敷きになっていれば、もちろん手は出ません。
いかに子どもが自分から手を出しやすい姿勢にしてあげるかが大切です。
多動的に姿勢を変えられると嫌がることも多いです。しかし、様々な姿勢をとる経験を重ねて「この姿勢ならOK」というものが出来れば、取り組む課題も拡がりますし、OKと選べたことは選択性が育ってきたということもできます。

 

 

動きが止まるほど集中しているのか?

音が聞こえてくると動きを止めて聞いている子がいます。そういう子に対して「この子は音楽が好きなんだわ」と言う評価をしてしまいがちです。確かに、そういう子の中にも音楽が好きな子もいます。しかし、発達初期の頃の子は、自分の感覚をうまく使いこなすことができません。そのため、感覚はひとつずつしか使えないのです。
ひとつずつ?意味が分からないと思われるかもしれません。
例えば、目の前にあるスクリーンに映っている光の点滅をじっと見ている子がいるとします。しばらくして音楽が流れてきました。軽く横揺れしていた子の動きが止まりました。まるで音楽に聞き入っているかのようです。
これは、音を聞くこと(聴覚)に集中してしまうと、画面を見ること(視覚)がおろそかになってしまった状態だということができます。2つの感覚を同時に使えないのです。

 

 

短くシンプルな流れなら何となく分かることも

簡単な因果関係に気づき始める時期です。因果関係というのは、自分の行為によって結果となったということ。例えば「自分の手が机の上にある積み木に当たったので、下に落っこちた」、「スイッチを押したら音が鳴った」などです。
ものごとの流れには必ず「始まり」と「終わり」があります。この頃の子は、音が鳴り始めた等の「始まり」に気づくことができます。しかし、音が鳴り終わったという「終わり」をしっかりと理解することが難しい。そのため、自分の行動にも「終わり」を作ることができずに、動き始めたけれど止まるきっかけを見つけらずに歩き続けている、という状況が起こります。

 

 

その場限りの行為なの?

この頃の子は、「いま・そのとき」がすべてです。いま、どうするのか?です。まだ予測が立たなくて当たり前です。行為も単発的です。
「口で感触を確かめる」「玩具を触る」「玩具を振る」などは、まだ目的もなく、たまたま触れた物に対して「いま○○している」という状態です。意図的なものではありません。目的のある動きを線の運動と呼ぶのであれば、「いま○○している」というのは点の運動ということができます。

 

 

予測する力の基礎を作る時期

もう少しいけば、うっすらとは「終わり」に気付く時期でもあるので、支援者は「終わり」を意識した支援を行うことが大切です。ここでは、授業の終わりにチャイムが鳴る、というような長いスパンではなく、もっと短いスパンのものを指します。
ボールを空き缶に落とす。落とすと「ガン」という音がします。この音が一連の行為の「終わり」になります。簡単なことでよいのです。注意したいのが、この段階の子は市販の玩具では難しいということ。市販の素敵な玩具は、音が鳴ったり光ったり・・・いろんな仕掛けがあり過ぎます。そのため、子どもは何に注目すればよいのか分からなくなってしまうのです。そのため、もっとシンプルなものでよいのです。
ポイントは「大人が思っている以上にシンプル」です。
「終わり」が分かるようになると、生活の流れの中の“区切り目”に気がつくようになります。区切れが分かれば次のことにも意識が向きやすくなります。そして少し先のことを予測できるようになってきます。また、「終わり」を意識することが、目的に向けて行動を調節する力にもつながっていきます。

 

 

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参考資料