児発のSTの役割とは?
現在、わたしは児童発達支援の施設で訓練を担当しています。はじめは「構音訓練」を担当してください。と言われて入職した言語聴覚士(ST)です。
そこで感じたことがあります。
「構音だけみても解決しない子が多い」ということです。
STは「ことば」の専門職です。子どもの発達全体を見ながら「ことば」への支援を行います。最近、様々な分野で働くSTが増えてきました。そんなSTたちは、日々、自分の分野で子どもたちと関わっています。
では、転職したら、これまでの経験は無駄になってしまうのでしょうか?
この記事では、実際にわたしが「重症心身障害児」施設から「グレーゾーン」の子の施設へと転職したときに感じたことを書いています。
▶STコラムはこちらから
⇒【STコラム①】重心施設から転職したSTが最初にぶつかった壁
⇒【STコラム②】重心施設から転職したSTが感じた「重心」と「グレーゾーン」の違い!「困っている」箇所が異なる
これまでの経歴
わたしは長年、小児の言語聴覚士として働いてきました。様々な分野を経験しました。一番、長かったのが重症心身障害児の放課後等デイサービスです。
ここでは次のような分野を専門にしてきました。
・摂食嚥下
・発達全般
今回、グレーゾーンの子たちが通う児童発達支援の施設に転職しました。自分の仕事の幅を広げたかったからです。
構音訓練担当だけれど
新しい施設は、通っている子どもたちが就学に備えて療育を受けに来る、いわゆる「児童発達支援」です。
小学校に入る前に、しっかり喋れるよう構音訓練を希望される親御さんもたくさんいます。この施設で勤務するようになり、毎日、訓練を行っていると、気づくことがありました。
構音だけ見てたらダメなんじゃないの?
構音訓練以外のこと
実際に、子どもたちと関わるようになってくると、様々なものがみえてきます。
・質問の意味が分かっていない
・数字を理解していない
・概念のような抽象的なものを理解していない
発音をより明瞭にするため、構音訓練を受けるのも大切なことです。発音は周囲から気にされることが多いからです。しかし、上記のような目立たない力が苦手な場合には、それらを身につけることが大切。
⇒「どうやるの?」「どこに行くの?」等の質問に対して無反応の子。他者とのやり取りがうまくいかず、コミュニケーションが取れないことも。
⇒「1、2、3・・・」とカウントはできる。しかし、「3個ちょうだい」の意味が理解できない。数には量や順番、比較の意味があるため、日常生活や学習で困ってしまいます。
⇒概念とは、単に ことばや知識を覚えるだけではなく、物事の意味や共通点、ルールを理解して応用する力のことです。抽象的なことを理解できないと困ることがたくさんあります。
▶概念についてもっと知りたい方はこちらもご覧ください
⇒ 概念とは?|療育での意味と支援へのつなげ方【具体例でわかる】
※抽象的なこととは?
「昨日・今日・明日」
「前・後ろ」「左右」
「多い・少ない」「同じ・違う」
「理由」「予想」「たぶん」
構音以外の力がついていないと
構音訓練では、STの説明を理解し、課題に取り組み、自分の発音を聞き比べる力も必要になります。そのため、言語理解や注意、概念理解につまずきがある場合は、構音だけに取り組んでも十分な効果が得られないことがあります。
また、会話や質問にも応じにくく、やり取りを楽しみにくくなるのです。
「話し方」だけではなく「ことばを支える力」も評価する
「ことば」と、それを支える力の育ちを助けることではないでしょうか?
言語訓練
言語訓練とは、言語聴覚士(ST)が行う訓練の総称です。訓練の中身は次のようなものがあります。
・構音訓練
・言語理解の訓練(概念、指示、意味など)
・言語表出の訓練(語彙、文法、伝え方など)
・コミュニケーション訓練
・読み書き訓練
・吃音
・摂食嚥下訓練
ことばの理解や表現、発音などを改善・発達させるための訓練があります。
構音訓練
STといえば「構音訓練」を思い浮かべる方も多いはずです。息を吐いたり、舌を動かしたり。より聞き取りやすい話し方を目指して訓練を行う。
就学前の子を持つ親御さんから求められるのがこの訓練です。
▶構音訓練にお役立ちの教材です。
- 価格: 1760 円
- 楽天で詳細を見る
その他発達
言語聴覚士は、「発達」に関するアプローチができます。
・言語発達
・コミュニケーション発達
・食べる機能の発達
・聞こえの発達
まだまだ、たくさんあります。
構音訓練しかできないんですけど・・・
わたしは、これまで発達が初期段階の子たちと関わることが多かったです。ことばを話す子など、ほとんどいませんでした。そのため、STとして発達面や食事面をみていました。発達初期の子には、構音訓練ではなく、
・他者に意識を向ける練習
・感覚刺激を感じ取る練習
・「終わり(終点)」を理解する
のようなアプローチを行ってきました。だから、構音訓練ができません。現在も、勉強しながら訓練をやらせてもらっている、という感じです。
逆に、「構音訓練しかやってきませんでした」というSTの方もいるかもしれません。その場合でも、いまから勉強すれば間に合います。失敗しながらでも、前に進むことができます。
ぜひ、構音以外のアプローチも行ってみてください。
まとめとして
今回は、構音訓練をやっていると、それ以外の側面がみえてくる。可能ならば、「構音以外」の部分もSTとして何かできるのではないかな?という話しをしました。
言語聴覚士の分野は広いです。小児だけを対象にしていても「やれること」はたくさんあります。すべての分野に精通しているSTなんて、ほとんどいません。みんな、実際に子どもと関わってみて、覚えていく、学んでいくのです。「子どもが教えてくれる」と感じです。
発音だけを見ていると、子どもの本当のつまずきを見落とすことがあります。だからこそ、STは「話し方」だけではなく、「ことばを支える力」まで評価し、支援することが大切だと私は考えています。
まずは、子どもに必要なことは何なのか?それを考えて訓練を行うだけでも違ってくるはずです。
最近、わたしは、そんなことを痛感しながらSTとして仕事をしています。


