放課後等デイサービスと工作
放課後等デイサービスでは様々な活動を行っています。散歩や公園に出かけることもあれば、室内で過ごすことあります。今回は室内での工作についてです。
工作は季節ごとのイベントの際にも行う、頻度の高い活動です。療育的に見ると、子どもたちが楽しみながら手先の器用さや認知の力、創造力を育むことが目的となるものです。
では、放課後等デイサービスのような障害児支援の施設での「工作」と、障害のない子が行う一般的な「工作」には違いがあるのでしょうか?
答えは「だいたい同じ」です。やることは一緒です。しかし、施設では子どもの「現在持っている力」「課題となる点」などに配慮しながら、やってもらう工程を決めていきます。あえて最後まで完成させないケースもあるのです。完成を最終目標としていないということです。
この違いが保護者や支援者に伝わっておらず、すれ違いが起こることもあります。今回は、障害児施設での「工作」について説明します。
工作の種類
様々な材料を使ってものを作る「工作」。実際の施設では どのような種類があるのでしょうか?材料や工具、子どもの能力よって活動の内容も変わってきます。
遊びの本はたくさん出ています。そこに書いてあるものだけが「遊び」「工作」なのではありません。それをベースにして、実際に参加する子どもに合わせることが大切です。障害児施設での工作はオーダーメイドなのです。
活動としての「工作」
障害児施設での工作は、活動を通じて、子どもたちは楽しみながら様々なことに気づき、スキルを身につけることができます。どの活動も、子どもたちの興味や発達段階に合わせて工夫されています。
活動としての目的を見誤ってしまうと、子どもが工作をしたがらなくなってしまうことも・・・。
実際の「工作」活動
「工作」と聞くと、みんなで楽しく手を動かして、素敵なものを完成させて、見せ合って・・・とようなイメージがあるかと思います。わたしも障害を持つ子にかかわるまではそう思っていました。しかし、そうではないことに気がつきました。
・長い時間、集中していられない子がいる
・「できる・できない」の個人差が大きい
・工作の手順を理解してもらえない
こういう状態で「みんなで」「一斉に」「同じものを」作ってもらうのは無理があるのです。
完成させることが目的ではない!
支援者が「完成させること」にばかり目を向けてしまうと上手くいかないのです。
活動の時間内に完成できないと、「わたしだけ できなかった」という劣等感を感じる子もいるかもしれません。支援者から急かされて「楽しくなかった」と思う子もいるかもしれません。
工作じゃない活動をしてほしいと言われたら?
放課後等デイサービスでは様々な活動を行っています。室内で行うもののなかで「工作」は良く行う活動でもあります。クリスマスやハロウィンなどのイベントでも準備として活動に取り入れることも多いです。
以前、わたしが保護者からこんなことを言われたことがあります。
「うちの子は工作が得意ではありません」
「好きではありません」
「他の活動の方が良いかもしれません」
これは、別の活動に切り替えて欲しいということなのか?それとも、活動の内容を考え直して欲しいということなのか?ただの感想だったのか?
強く非難されたわけではありません。しかし、しばらく わたしの頭に残ったままでした。
目標設定はしっかりとできていたのか?
なぜ保護者の方は「好きではない」と言ったのでしょうか?
どんな活動にだって「支援者の狙い」が込められています。目標となりうるのは次にような点です。
・手を使おう
・目も緒に使おう
・手順を理解しよう
・真似してみよう
・得意な動きを使ってみよう
・役割を意識しよう
自分の動きに意識を向けて、他者とやり取りしながら楽しい時間を過ごす。工作という活動は「運動」「操作」「対人」「認知」など、様々な発達に働きかけることができる素敵な活動なのです。
保護者の人はなぜそう思ったか?
工作は大人から「やらされる」活動になりがちです。目的も「完成させること」「きれいに作ること」と設定されることが多いのです。そのため、一人でできない子は支援者から指示ばかり受けたり、やらされることが多くなりやすい。
「うちの子は工作が好きじゃない」と忠告してくれた保護者の方も、そんなイメージが強かったのではないかな?と思います。
放課後等デイサービスには様々な子がいます。
・細かい作業が苦手な子
・手指がない子
・集中することが難しい子
・指示を理解しにくい子
同じ障害や疾患を持った子でも、状態や性格も異なります。そんな子たちに、同じやり方で、同じゴールを設定すること自体、間違っているのです。子どもと支援者、両方がつらくなるだけです。では、どうすればよいのでしょうか?それは、子どもに合ったやり方、ゴールを設定すればよいのです。
・細かい作業が苦手な子
⇒ 大雑把にやっても成り立つ工程を任せる
・手指がない子
⇒ 代替えの道具や口や足などを使う
・集中することが難しい子
⇒ 短時間で作業して次の工程に移る
・指示を理解しにくい子
⇒ 一緒にやる、手本や見本を見せる、分かる説明をする
わたしたち支援者が、かならずしも「完成」をゴールにしていません。そうではなく、「この○○という工程をやってもらおう」「大人と一緒にやって対人発達にアプローチしよう」というふうに、他の側面に光を当てて子どもに関わっています。もちろん、子どもが「楽しかった」と思ってもらえるように設定します。
良さが伝わっているのか?
工作は、支援者の考え方次第で良い活動にすることができます。しかし、どんなにすばらしい目標設定をして、実際の活動もうまく成り立っていたとしても、保護者に「どんな意図があって工作を行っているのか?」が伝わっていないと意味がありません。
気をつけたいポイント
障害児施設にとって工作は様々な思いを込められる素敵な活動です。「何となく」やるだけでは もったいない。保護者など外部の人から「工作ばっかりやらせて」と思われるかもしれません。
工作を行う際、支援者は準備や目標設定に時間をかけます。目に見えない努力があるわけです。
子どもが楽しく参加してくれるのが一番です。しかし、それが保護者に伝わらないのではもったいない。
工作を行うときのポイントは次の通りです。
・完成にこだわらない
・ケガに気をつける
・大人が手を出し過ぎない
・工作の内容と狙いを公表する
「完成させること」が目的ではない
一番大切なことは、支援者が「完成」にこだわらないことです。ゆっくり時間をかければ 子どもが自分でできることもあるはずです。決まった時間内に終わらせようとすると大人がやる部分が増えていきます。誰のための活動なの?ということになります。
ケガに気をつける
当たり前ですがケガには気をつけましょう。支援者が片付け忘れたハサミやカッターで、子どもが手を切る事故は意外と多いのです。自分が都度、片付けなかったのに、子どもに「何やってるの!」と怒るのは論外です。
大人が手を出し過ぎない
「せっかくの工作だからキレイなものを作りたい」そう思うかもしれません。しかし、工作は子どものための活動です。キレイなものが欲しかったら完成品を買えばよいはず。どんな風に頑張ったか?どんな感じで楽しかったのか?結果よりも工程に重きを置くのが支援です。
工作の内容と狙いを公表する
障害児施設ではホームページや各種SNSを運営しているところが多いです。そこでは活動の楽しい写真をアップしているはず。そこに
・今日の活動の狙いは○○です
・この部分を頑張りました
・全員が少しずつの工程をやって、一つの物を作りました
自分の頑張りを自分から発信するのは 照れ臭いし カッコ悪いと思われがちです。しかし、わたしたちが相手をしているのは「子ども」と「子どもの内面」です。目に見えない部分を相手にしている限り、支援者側が口に出して伝えないと相手には分かってもらえないのです。
まとめとして
今回は、放課後等デイサービスのような、障害児が通う施設の活動の話しをしました。なかでも「工作」は支援者のアイディア次第で様々な取り組みに変化します。そんな素敵な活動は なかなかありません。保護者にも知ってもらった方が良いです。
良かったら参考にしてみてくださいね。みなさんも、ぜひオススメの工作があったら教えてください。