言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

【STコラム②】重心施設から転職したSTが感じた「重心」と「グレーゾーン」の違い!「困っている」箇所が異なる

転職でわかった!重心とグレーゾーンの「困り感」違い

 

わたしは言語聴覚士(ST)の国家資格をとってから、長年、小児のSTとして仕事をしてきました。

障害児者の入所施設、放課後等デイサービス、児童発達支援など、子どもの施設です。しかし、施設によって対象となる子は異なります。
わたしが長年関わってきたのは、重症心身障害児(重心)です。15年以上、重心のSTをしてきました。

今回、転職しました。重心ではなくグレーゾーンの子たちの施設です。現在は、そこで、構音訓練や言語訓練を行っています。

分野が変われば、通ってくる子も変わります。

今回は、重心とグレーゾーンの子、それぞれが抱えている「困り感」には、どのような違いがあるのかを紹介します。

言語聴覚士や他の支援職で、別の分野に転職したい、と悩んでいる方に読んでいただければ嬉しいです。

 

▶前回のコラムもご覧ください
⇒ 【STコラム①】重心施設から転職したSTが最初にぶつかった壁 

 

 

重心とグレーゾーンの違い

 

重症心身障害児とグレーゾーンの子の違いを簡単な表でまとめました。もちろん、個人差があります。
本記事では、放課後等デイサービスや児童発達支援に通う、発達特性はあるものの診断名がついていない子どもたちを便宜上「グレーゾーン」と表現しています。

 

項目 重症心身障害児 グレーゾーン
診断 障害や疾患の診断があることが多い 診断がない場合もある
知的発達 知的障害を伴うことが多い 知的障害を伴わない場合もある
コミュニケーション 発話による表出が難しい場合が多い 日常会話は可能な場合が多い
運動機能 歩行が難しい場合が多い 歩行可能な場合が多い

 

 

 

実際に働いてみて気づいたこと

「重心」や「グレーゾーン」と、ことばにして分類するのは簡単です。しかし、実際に関わらないと、みえてこないこともあります。わたしが感じたのは、子ども本人が「何に困っているのか?」の違いです。大きく分けて次のようなものがありました。

 

重心

・自分の考えを伝えられない子が多い
・発達的には初期の子が多い
・待たされることが多い

 

グレーゾーン

・見た目じゃ分からない
・他の子と比較されると困った状態がブレる
・IQが高くても困りごとはある

 

 

 

実際の「重心」の子

重症心身障害児(重心)とは、重い知的障害+重い運動障害がある子たちのことです。

わたしが重心の施設で勤務していて感じていたのは次のようなことです。

・自分の状態を伝えにくい
・反応が薄い
・待たされることが多い

 

自分の状態を伝えられない

重症心身障害児ときくと、全員、人工呼吸器をつけて、常に病院に通っていて、外部の人が触るのも慎重になってしまう子たち、というイメージがあるかもしれません。しかし、実際には、元気な子もたくさんいます。

以前、わたしが働いていた放課後等デイサービス(肢体不自由+重心+発達障害)の施設では、発達障害の子の方が、風邪や体調不良で休むことが多い印象でした。

ただ、本当は具合が悪いのに、自分のことを伝えられないから休めない、という可能性も捨てきれません。

 

▶「重症心身障害児」の施設についてもっと知りたい方はこちらもご覧ください
⇒ 重心の放課後等デイサービスの活動とは?現場STが語る本当のところ

 

 

反応が薄い

支援者からの反応が薄い子は、少なくありませんでした。
内向的な性格、という意味ではありません。発達が初期段階のお子さんが多いからです。発達が初期段階というのは、他者に意識が向かないケースが多いのです。
自分の内側で「楽しい」も「嫌だ」も感じている。もしくは、そもそも「楽しい」等を感じていない場合もありうる。その段階の子は、他の人から声をかけられても反応しない、できないように見えてしまうのです。

本人の反応が見えにくいため、「何を感じているのか」が周囲に伝わりにくいことがあります。

▶「発達が初期段階」の子について知りたい方はこちらもご覧ください
⇒ 発達検査などで点数が低く出る「発達初期段階の子」への支援とは?

 

 

待たされる時間が意外と長い

重心の子は車いすに乗っている子や、床に降りても自力で移動できない子が多いです。支援者から「待っててね」と言われたら待つしかありません。
さらに、重心の施設では、食事やトイレ誘導(オムツ交換)、車の乗り降りに時間がかかります。そのため、自分の順番が来るまで待たされる場面が多くなるのです。

 

 

実際の「グレーゾーン」の子

では、グレーゾーンの子たちはどうなのでしょうか?一番が「見ただけでは分かってもらえない」という点です。これは、他者からの助けを受けづらいということにつながる危険性があります。

ここでいう「グレーゾーン」とは、「発達障害や知的障害がある子」と「定型発達や健常児と呼ばれる子たち」の間に位置する子たちのことです。

 

 

周囲から理解してもらえない

パッと見て「困っている」感じがしない子も多いので、周囲から気づかれないこともあります。現在、「ヘルプカード」も浸透してきましたが、グレーゾーンの子たちがつけることは、ごくまれです。

発達障害や知的障害の特徴が少し見られるものの、医師からは障害とは診断されていない人について使われることが多いことばです。

たとえば、学校で勉強や友だちづきあいに苦労することがあっても、検査の結果だけでは障害と判断されない場合があります。そのような人を指して「グレーゾーン」と呼ぶことがあります。

「障害ではないと言われたけれど困りごとがある人」や、「支援が必要なこともある人」という意味で使われることがよくあります。

ただし、人によって使い方が違うため、「グレーゾーン」と言われても、どのような状態を指しているのかは一人ひとり異なります。

 

 

「困り感」が強い子と比較されやすい

グレーゾーンの子たちが集団でいると、「このあたりを本人やご家族が困っているんだな」と見えてくることがあります。

本人やご家族が「困って」いても、集団に、動きの激しい子、特性が目立つ子がいると、その子の「困り感」が見えづらくなるのです。

 

ex.

たとえば、指示を理解することが苦手な子がいたとします。周囲に人が多いと、余計に指示の内容が分からなくなってしまう。活動中、立ち歩くことはありません。そのため、ぼんやりしてしまう。

しかし、他に席に座れない子や友だちを叩く子がいると、支援者の視線はそちらに向いてしまいます。(その場面で)この子の「困り感」が薄くなってしまうのです。

 

 

IQが高いから「困っていない」と思われがち

グレーゾーンの子で、知能検査を受けている子もいます。なかには、IQ (知能指数)が高い子もいます。しかし、同世代の子と比べて知能指数が高い場合でも、困った感が薄れるわけではありません。

実際に、高いといわれている子であっても、順番が待てない子や、友だちと遊べない子もたくさんいます。

本人の「困った」感を数値で判断しにくいのも、グレーゾーンの子の特徴だと感じています。困り感は知能だけでは説明できないのです。

見た目には困っていないように見えるため、「できるはず」と思われてしまうことがあります。実際に、怒られる頻度が高いのは、グレーゾーンの子たちです。
重心の子の方が、怒られる経験は、圧倒的に少ないのです。

 

 

まとめとして

今回は、重症心身障害児(重心)とグレーゾーンの子の違いを紹介しました。分野が変われば、やることも変わります。しかし、根底は「発達の底上げ」という共通した目的があるのです。

重心の子は困り感が見えやすいことがあります。一方で、グレーゾーンの子は周囲から気づかれにくいことがあります。

しかし、どちらの子にも本人なりの困りごとがあります。

支援者に大切なのは、目立つ行動だけを見るのではなく、「この子は何に困っているのだろう」と考えることなのかもしれません。

よかったら参考にしてみてくださいね。

 

▶障害を持つ子の「サービス」を知りたい方はこちらの本もオススメです。
⇒ 図解でわかる障害児・難病児サービス