支援現場で大切にしたい「ことばの温度」
障害児支援の現場では、支援に関する正解がありません。だからこそ、日々、様々な職種が、一人の子どもを複数の視点でみて、「なぜこう見えるのだろう?」と考え、支援の方向性を決めていきます。
他職種が集まる現場では、話し合いが必要です。関わる大人が多いと、その分、時間も必要となります。いろんな人が集まるとトラブルも起こりやすくなります。
「もっと自分の意見を言っていいよ」
「言いたいことをハッキリ伝えないと伝わらないよ」
会議や振り返りの際に、上司や仲間から、そんなふうに言われたことが ありませんか?
たしかに、子どもを支えるチームの一員として「自分の考えを伝える力」はとても大切です。でも、それがいつの間にか、「思ったことは何でも言うべきだ」「沈黙は悪だ」となってしまっていたら、それはちょっと違う気がしませんか?
今回は、「考えを伝える」と「不満をぶつける」の違いや、“言えない人”にもちゃんと意味があるという視点から、支援の中での“ことばの使い方”について考えてみます。
言えない人にも、理由がある
現場にはいろんな人がいます。はっきり言う人もいれば、あまり口に出さない人もいます。しかし、それを単純に「積極的・消極的」とラベルを貼ってしまうのはもったいないことです。
言いたいことを言えない人は周囲から誤解されがちです。
「黙っている=考えていない」「意見がない」ではないのです!
言えない人は「何も考えていない」わけではない
誰もが言いたいことを言えるわけではありません。
・言葉を選びすぎてしまう
・相手を傷つけたくないと思ってしまう
・言ってもどうせ変わらないと思っている
・これまでの経験から、我慢することが当たり前になっている
こうした背景を持っている人は多いです。
「相手の思いを大切にしたい」「空気を乱したくない」という気遣いの気持ちが、むしろ“ことばを飲み込ませている”のかもしれません。
言える人の“無自覚な強さ”
一方で、「私は思ったことをちゃんと言うタイプ」と自負している人もいます。そのこと自体が悪いわけではありません。問題は、その“前提”にある意識です。
「言いたいことを言える=自分が正しいと思っている」?
気がつかないうちに、こんな風に思っていませんか?私はハッキリ言ってるのに、周りは何も言わない。なんで?
みんなもっと正直になればいいのに
私が言ってあげてるだけマシでしょ?
実はこのような考えの背景には、「自分の考えは正しい」という前提が隠れていることが多いのです。
「自分は正しい」と思っている人の意見は、知らず知らずのうちに他者を圧迫しがちです。しかし、本当の支援は「正しい人が勝つこと」ではなく「みんなが子どものために考え合うこと」のはずです。
「考えを伝える」と「不満を言う」は違う
実は「考えを伝える」と「不満を言う」は違います。次につながりそうなことを言うよう努力しているか?という点に注意してみてください。
「考えを伝える」とは?
評価の共有や支援計画の検討など、支援現場では“意見を言う”場面が日常的にあります。しかし、そのときの「伝え方」がとても大切です。
✕ 感情まかせ or 思い込みの意見
・「このやり方じゃ意味がないと思います」
・「なんか前より悪くなってません?」
・「そもそも、この子は〇〇できないから無理ですよ」
◎ 根拠と観察に基づく意見
・「〇〇の時に、こんな反応が見られました」
・「最近△△が増えているので、こういう関わりを試してみたいです」
・「前より表情が穏やかになってきました。声かけに慣れてきたのかもしれません」
意見を伝えるときは、「その子をどう見て」「どう感じたのか」「どうしていきたいか」を、“相手に伝わるように”話す努力が必要です。
「言いたいことを言う人」の意見が強くなりすぎると?
言いたいことを言える人の意見が強くなり過ぎると、それに比例して、静かな人が何も言えなくなってしまいます。
・議論ではなく「言い合い」になる
・子どものことより「誰が正しいか」の勝負になってしまう
支援現場は、大人の自己主張の場ではありません。誰が勝った、誰が正しかった、という話ではなく、「その子にとって一番よい支援って何だろう?」を一緒に考える場所です。
「言えない人」は支援の大事なバランサー
声の大きい人ばかりが目立つ場面では、静かな人の存在が見落とされがちです。
しかし、実は「慎重に考えてから言う人」「相手の気持ちを考える人」こそが、支援現場に必要な“安心感”や“調和”をつくっていることもあります。
「相手の気持ちを尊重したい」
「雰囲気を壊したくない」
──そんなふうに思える人は、むしろ支援の根本に近い人です。
「言い返さなくてもいい」けど「考えることはやめないで」
言いたいことをすぐに言える人と、言えない人。
そのどちらが良いとか悪いではありません。
しかし、「自分は言えないから…」と何も考えないわけではないと思います。
大切なのは「この子にとって一番良い関わりは何か?」を考え続けること。
言えなくったって、できることはたくさんあります。例えば下記のようなことがあります。
・ノートに書き出してみる
・信頼できる人に相談してみる
・記録をていねいに書く
自分の意見を伝える方法は、“声で言うこと”だけではありません。自分の中で意見を深めることだって素敵な支援なのです。
まとめとして
言いたいことを言う=支援がうまくいく、ではありません。支援や運営のことは「言い合って解決すべき」だとは限りません。子どもには優しくできるけれど、一緒に働く大人には優しくできない。それでは悲しすぎます。
「ことば」は支援の質そのものです。
声の大きさより「思いやり」のあることばを大切にしたいのです。
言えない人も、支援の場では大切な存在です。
無意識的に、自分だけが得をしたいと思っている人は結構います。
誰もが「この子のために」と思える関係性づくりを目指していきたいものです。
よかったら参考にしてみてくださいね。
この記事を読んだあなたへ
「私は、なかなか意見を言えない」と思っていた人
「あの人の強い主張に振り回されがちだった」人
「もう少し、うまく伝えられるようになりたい」と感じた人
そんなあなたが、明日、少しでも安心して働けるように──
この場所で、誰かと支援を考えるときに、「ことば」が優しくつながっていくように──
願いを込めて、この記事を届けます。



