言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

【STコラム①】重心施設から転職したSTが最初にぶつかった壁

重心施設からグレーの未就学児施設に転職したはなし

言語聴覚士(ST)には、専門分野がたくさんあります。すべての分野に精通しているSTは、ほとんどいません。病院ではいる可能性がありますが、施設系では、少ないです。

しかし、その分野で実際に働いてみないと分からないこともあります。
「やっぱりやめたい」
「他の分野も経験したい」

そう考える人もいるはずです。

わたしは、これまで10年以上、重症心身障害児が通う施設で、言語聴覚士(ST)として勤務してきました。今回、別の分野に転職することを決めました。実際に、働き始めて数か月がたちました。

小児のSTで、他の分野の職場に移ったとき、実際に、どんなことを考え、どんなことが起こったのか?を紹介していきます。
今回は、「個別訓練の準備」について書いていきます。

 

 

 

おどろいたこと

重症心身障害児(重心)の施設に通う子たちは、基本的に会話ができる子はいません。「歩けない」+「喋れない」子が重心の基準だからです。
そんな施設で長年、働いてきました。次の職場は、グレーゾーンの子たちの施設です。

新しい職場で驚いたのが、みんな喋ります。みんな歩きます。

この「当たり前」の状態に戸惑いました。誰も、わたしを待ってくれないのだから・・・。

 

 

重心とグレーゾーンの子

 

重心施設では、子どもたちは自分で移動することができませんでした。訓練も、こちらが環境を整えながら進めます。

しかし、新しい職場では違いました。
説明をしている途中で立ち歩く子もいます。
別のことに興味を持つ子もいます。
質問をすると、すぐに返事が返ってきます。

重心の子どもたちとは全く違う世界でした。

 

 

言語聴覚士の専門分野は広い

対象者が子どもの場合でも、次のような専門分野があるのです。

 

◾️対象者:小児

 

・発達障害
・肢体不自由
・重症心身障害
・知的な遅れ
・ことばの遅れ
・その他、障害や疾患

 

 

◾️対象の分野

・ことば
・音声、構音
・吃音
・摂食・嚥下
・聴覚
・発達障害
・コミュニケーション

発達全般(特に認知発達)

※運動発達は理学療法士(PT)や作業療法士(OT)がみることがほとんど

 

 

これまでの職場

STになってから、ずっと障害を持つ子どもたちと関わってきました。特に、重症心身障害児の施設で働いている時間が長かったです。
そこに通う子たちは、ほぼ喋る子はいませんでした。わたしは、リハビリ専門職として勤務してきました。
専門分野は、【摂食・嚥下】や【認知発達】が中心でした。

 


新しい職場

新しい職場では、ほとんどグレーゾーンの子たちです。ここでもリハビリ専門職として働いています。
専門分野は【構音障害】【ことば】【認知発達】【摂食・嚥下】です。

 

 

仕事内容が変わるという恐ろしさ

 

他の施設に転職するときに気になるのは、大きく分けて次の3点だと思います。

・給料
・人間関係
・仕事内容

特に、仕事内容の変化は、これまでやってきたことと似たものであれば、そこまで心配はないと思います。しかし、今回、わたしは、ガラッと違う方向の職場を選びました。

 

メインは「構音訓練」

STとして求められるものは、職場によって異なります。新しい職場では【構音訓練】を一番に求められました。

わたしは、STの国家資格を取りたての頃、就学前の子を対象とした構音訓練を行っていました。しかし、1年半ほどの短い間でした。しかも、15年前の話しです。

はたして、今でも構音訓練をやっていけるのか?
しかも、その職場でSTは、わたし ひとりです。自分で選んだ職場とはいえ、怖かったです。

 

なぜ怖いのか?

新しいことを学ぶのは楽しい。しかし、怖いです。
これまで「自分が積み重ねてきた知識や経験」を放り投げて、新しい分野に飛び込むのだろう、という思いがあるからです。
STとして経験が長ければ長いほど、その思いは強くなります。「言語聴覚士を15年もやっていて、そんなことも知らないの?」と思われるのは、怖いのです。

 

 

一人で学ぶ3つの方法

しかし、怖い怖い言うだけでは先に進めません。やらないと。

では、どのように訓練の準備を行ったのでしょうか?

まずは、構音に関する訓練方法を学び直す必要がありました。周囲に頼ることができる人はいません。そこで、できそうなことを考えました。

 

・専門書
・オンラインセミナー
・チャットGPT

ありきたりですが、この3点を試すことにしました。

 

①専門書

構音訓練に関する本をできるだけ読んでみようと思いました。家にあった本を何度も読もうと思ったのですが、思うように勉強は進みません。
前職をなかなか辞められなかったため、3月末日まで勤務。新しい職場で働き始めるのが4月1日から。いつ勉強するのでしょうか?

 

②オンラインセミナー

コロナ禍以降、オンラインで受けられる研修や勉強会が増えました。できるだけ、勤務後や仕事がない日に研修を受けました。それでも、タイミングが合わず、結局受けたのは 2~3 個だけした。

 

③チャットGPT

ChatGPTやGeminiといった、いわゆるAIに助けを求めることにしました。自分で調べて、分からないことだけ質問して、できるだけ「内容に間違えがないか」を調べなおします。それが意外とうまくいきました。

 

 

AIと手を組んで訓練を行うために

 

AIと聞くと「丸投げ」「仕事放棄」のように思われるかもしれません。今回、そのようにならないように注意しながら進めました。AIに教えてもらうのは下記の点です。

 

・自分が考えた内容がおかしくないか確認する
⇒訓練内容が正しいか?

・訓練内容の広げ方
⇒週に何回も訓練を行う際の注意点は?

・子どもの特徴や捉え方
⇒子どもの評価や見るべき点はズレていないか?

注意したいのが「AIが出す答えが常に正しいとは限らない」という点です。必ず専門書や研修などで確認するようにしました。



子どもの特徴や捉え方

まずは、インテークや構音検査などをしてみて、自分なりに「子どもの所見」を考えます。所見の書き方は、これまで作ってきた「訓練計画書」「個別支援計画」のような書き方にして、言語聴覚士の先輩に相談するように、専門用語なども入れて書きました。

その所見をChatGPTに見てもらいます。もちろん、個人情報が入らないように気をつけます。
今回は、構音訓練なので、構音や喋り方に関することを中心に相談します。

 

 

自分が考えた内容がおかしくないか

子どもの所見や、構音の特徴から訓練を組んでみます。専門書や教科書を見ながら、何とか組んでみました。その訓練内容についてチャットGPTに聞いてみます。

・訓練内容が正しいか?
・古いアプローチ方法ではないか?

チャットGPTが出してくれた回答を、本や研修、他のSTのブログなどと比較しながら、実際に行う訓練内容に組み込んでいきます。

 

 

訓練内容の広げ方

子どもによっては週に3~4日、施設に通ってくる子もいます。そのため、二日続けて訓練をやらないといけない、そのようなケースが出てきます。

そういうときには、訓練課題をどう変化させればよいのか?というような、教科書になっていないようなことをチャットGPTに相談しました。

明らかにおかしな内容でなければ、実際に取り入れてみて、よければ引き続きやってみることにしました。

 

 

実際どうだったか?

もらったアドバイスをもとに、少しずつ訓練を進めていきました。10人以上受け持っています。一日平均5、6人に訓練を行っています。

過去に、わずかながら訓練の経験があったとはいえ、ほぼ、何もない状態からのスタートでした。現在も分からないことばかりです。
それでも、とても助かりました。はじめは「AIに頼るなんて」と思っていました。しかし、AIを使うのは悪いことではないことが分かりました。ようは「どうやって頼るか」なんだろうな、と感じています。

 

丸投げしない頼り方

将来、リハビリ職もAIに仕事を取られるかも?というニュースが出ていました。

しかし、要は使い方なのだと思います。STが自分の頭を使わずに仕事をAIに丸投げしていては、ST自身が成長しないと思います。

自分で考えて⇒アドバイスしてもらう⇒自分で修正する

その積み重ねが自分の経験にプラスになるはず。そう考えて、毎日、走り抜けています。リハビリ職は、何歳になっても、日々、勉強なのだと改めて痛感しています。

 

▶AIとのかかわり方をもっと知りたい方はこちらもご覧ください
⇒ AIに「放課後等デイサービスでの言語聴覚士の役割」&今後のことを質問してみた 

 

 

まとめとして

今回は、小児のSTが他の分野に転職する場合、どのように学ぶことができるのか?ということを、わたしの経験を交えてお話ししました。

頼れるものは頼るとよいです。しかし、丸投げではなく、あくまで自分が訓練を行う、そんな意識を忘れないことが大切なのだと思います。

AIを目の敵にせず、うまく付き合っていければ、もっと上手く仕事がやりやすくなるのではないかと考えています。