障害児支援は「安全第一」で成り立っている
―放課後等デイサービスで働く言語聴覚士として思うこと―
放課後等デイサービスを含む障害児支援の現場では、「安全第一」が何より大切にされています。
それは当然のことで、もし自分の子どもがケガをして帰ってきたら、どんな保護者の方でも心配や不安、時には怒りの気持ちを抱くと思います。
私たち支援者も同じです。
日々、事故やケガが起きないよう細心の注意を払いながら、子どもたちと関わっています。
今回は、少し視点を変えて、あまり表に出ることのない側面について書いてみたいと思います。
支援者がケガをする現実と、語られにくい背景
支援の現場では、子どもに噛まれたり、引っ掻かれたり、叩かれたりすることがあります。
特に感情のコントロールが難しい子、言葉で気持ちを表現することが苦手な子にとって、身体的な行動は一つの「表現」でもあります。
それは頭では分かっています。
言語聴覚士として、発達特性や背景を理解した上で関わっているつもりです。それでも、毎日のように腕に引っ掻き傷が増えていく現実は、決して楽なものではありません。
一方で、支援者がケガをしても、そのことについて話題にされることはほとんどありません。「仕事だから」「プロだから」「我慢するのが当たり前」そんな空気が、無意識のうちにあるように感じることがあります。
保護者と支援者の気持ちのすれ違い
保護者と支援者。どちらも「子どものため」を思って、子育てや支援をしています。では、なぜすれ違ってしまうのでしょうか?
保護者が抱く不安は、とても自然なもの
もちろん、保護者の方の不安は理解できます。お子さんの身体に小さな傷があれば、「何があったのだろう」「大丈夫だったのだろう」と心配になるのは自然なことです。
支援者のケガや心身の負担が見えにくい現実
ただ、支援者側のケガや心身の負担については、ほとんど語られないまま過ぎていく。
そのバランスの偏りに、戸惑いや苦しさを感じることがあります。
これは「保護者が悪い」という話ではありません。支援者もまた人間であり、感情を持ち、ケガをすれば痛みを感じる存在だ、ということを少しだけ知ってもらえたら、という思いです。
様々な子どもがいることを知る
放課後等デイサービスには、本当に様々な子どもたちがいます。
・穏やかに過ごせる子もいれば、刺激に敏感で強く反応してしまう子もいます。
・活動を楽しめる日もあれば、うまくいかず怒りが爆発してしまう日もあります。
支援者は、その一人ひとりの特性を理解しようと努め、試行錯誤しながら関わっています。
支援の質が下がるリスク
それでも、「支援者だけが我慢し続ける」構造になってしまうと、その結果、何が起きるのでしょうか?考えられるのは次のようなことです。
・支援の質が下がる
・支援者が疲弊する
・新人が育たない
このような悪循環が起こってしまいます。その結果どうなるかというと・・・。
・毎回、簡単な活動だけになってしまう
・何となくの支援が増える
・マンツーマンで対応ができない
これでは、支援者が思い描く支援にはとうてい手が届きません。そうなれば、親御さんだって安心して子どもを放課後等デイサービスに預けられなくなってしまうはずです。
※こうした状況が続くと、「何を目標に支援すればよいのか分からない」という悩みにもつながります。支援目標の考え方については、こちらの記事で詳しくまとめています。
言語聴覚士(ST)からアドバイス
子どもだって、わざと支援者に爪を立てたり唾を吐いたりするわけではありません。そこには何らかの「原因」があるはずです。
現在の子どもの特性や発達段階を探してみましょう。ただ「イヤ」なのではない、というケースが意外と多いのです。
※支援や刺激を嫌がる背景には、「感覚の受け取りにくさ」が関係していることも少なくありません。感覚面の困りごとについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめとして
わたしは言語聴覚士として、10年以上障害児支援の分野で働いてきました。
放課後等デイサービスでできること、専門職として果たせる役割はたくさんあります。
同時に、答えの出ない悩えに向き合い続けているのも事実です。
この気持ちをどう整理し、どう折り合いをつけながら仕事を続けていくのか。
今もはっきりした答えは出ていません。
ただ一つ言えるのは、支援は、子ども・保護者・支援者の誰か一人が我慢し続けることで成り立つものではない、ということです。
この文章が、保護者の方にとって「支援者はこんなことを考えながら子どもと関わっているのだな」と知るきっかけになれば嬉しく思います。
よかったら参考にしてみてくださいね。


