放デイでの言語聴覚士の意外な役立ち方とは?
言語聴覚士(ST)は放課後等デイサービスでどんな役割を果たしているのでしょうか?
「STがいなくても放デイは運営できるのに、なぜ配置されるの?」
「STがいる施設といない施設では、支援にどんな違いがあるの?」
この記事では、実際の現場経験をもとに、言語聴覚士が放課後等デイサービスでできることと、その専門性が支援にどのような変化をもたらすのかを解説します。
結論から言うと・・・
言語聴覚士は、放課後等デイサービスにおいて「コミュニケーションの発達を評価し、支援の視点をチームに共有できる専門職」です。言語聴覚士がいるか、いないか の大きな違いは、支援をするときに「子どものどこを見ているか?」にあります。
この記事では、
・ STがいない放デイの一般的な支援の特徴
・ STが関わることで何が変わるのか
・ 特に重症心身障害児における違い
について、現場の視点から解説します。
放課後等デイサービスとは?
放課後等デイサービスは、小学生から高校生までの障害のある子どもが放課後や長期休暇に通う福祉サービスです。
STだけが偉いわけではない!
まず前提として、放デイはSTがいなくても成り立つ支援事業です。
多くの施設では、
- 保育士
- 児童指導員
- 看護師(重心型の場合)
などの職種が連携し、子どもたちの生活や活動を支えています。
そして実際に、STがいない施設でも丁寧で質の高い支援が行われているケースは多くあります。
STが関わることで何が変わるのか?
では、言語聴覚士が関わると、何が変わるのでしょうか?それは、言語聴覚士は「なぜ、この子はこんな行動をしたのかな?」という視点を重要視しているのです。視点が変わることで、同じ活動でも見え方と目的が変わってきます。
「活動」ではなく「やりとり」で子どもを見る
例えばボール遊びでも「どう捉えるか?」で支援が大きく変わります。
・「投げる」「転がす」に着目する
⇒投げたらOK、転がったらOKという目的の活動になってしまうのです
・「 相手を見る」「待つ」「返す」
⇒相手の反応を見ることで、自分の次の行動を決める、そんな「やりとり」の視点で子どもを見ることで、子どもの「コミュニケーション発達」にも意識が向くようになります。
反応の意味を読み取る
⇒嫌いだったのね!
そうではなく、もしかしたら、この子にとって「食べにくい」食材だったのかもしれません。処理しきれなくて吐き出した、そういった別の視点で反応を読み取ることもあります。
わずかな変化でも
- 呼吸が変わる
- 筋緊張が変化する
- 視線が動く
といった反応を、コミュニケーションの芽として捉えるのがSTの特徴です。
関わりに「意図」を持たせる
STが子どもを見るときに考えているのが、「なんでだろう?」です。
- なぜこの刺激を入れるのか
- 何を引き出したいのか
- どの段階の発達を見ているのか
ということを考えながら子どもと接しているので、「この子に何をしてあげられるのかな?」という支援の設計が明確になってきます。
重症心身障害児における違い
重症心身障害児の子たちは、自分から喋らない、感情や意図を出せない子が多くいます。「何をやってほしいか」なんて教えてくれません。そのため、支援者の「こうしたらいいじゃないか」という思いが強くなりすぎることがあります。
子どもをよく見ていないと支援がズレてしまいます。
| STなし | STあり |
|---|---|
| 活動中心 | やりとり中心 |
| 経験頼り | 評価に基づく |
STがいない施設に多いアプローチの特徴
これまで、このブログでは「言語聴覚士は放課後等デイサービスでできることはあるのか?」というテーマで記事を書いてきました。今回は、いつもと違った視点で「言語聴覚士がいない施設に特徴はあるのか?」という傾向を探っていきます。
わたしが見てきた放課後等デイサービスの施設では、様々な職員配置がなされていました。専門職がいたり、いなかったり。理学療法士(PT)はいるけれど、言語聴覚士(ST)はいない、という施設もありました。
あくまで傾向ですが、STがいない場合、支援は次のような形になりやすいです。
活動中心の支援になりがち
一番目は「活動の中身」です。活動の方針というか位置づけが異なるところが多いのです。よく見られる活動は次のとおりです
- レクリエーション
- 制作活動
- 集団あそび
「何をするか(活動内容)」に焦点が当たりやすいのです。
生活支援・安全管理の重視しすぎる
「これは危ないだけだからやらないようにしよう」
特に重症心身障害児では、
- 体調管理
- 姿勢保持
- 医療的ケア
が非常に重要です。そのため、
・重症心身障害児や医療的なケアが必要な子たちは外に出してはいけない
⇒散歩をやらないようにする
・寝たままの状態が楽なはずだから、姿勢を起こしてはいけない
⇒すべての活動を寝たまま受けてもらう
安全・安心の確保が最優先になるのです。たしかに、安全は大切。しかし、過剰に安全を守りすぎて、何もできていない施設は、結構な数あります。
コミュニケーション支援は経験ベース
障害が重い子の場合、自分の気持ちや意見を表に出すことができないことが多いです。そのため、支援者が子どもの気持ちを読み取る場面があります。
- 「なんとなく反応が良さそう」
- 「この子はこういう子」
といった、感想が出てくると思います。前後関係から読み取っていくことが望ましいのですが、経験や感覚だけに頼った読み取りをしてしまうことがあります。そのため、支援者によって子どもの評価がバラバラになってしまうのです。経験に基づいた関わりが中心になりがちなのです。
よくあるズレ
重症心身障害児に初めて関わる場合、
- 発語を引き出そうとする
- 指示に従わせようとする
- 「できること」を増やそうとする
といった関わりになりやすいことがあります。
しかし、発達段階を考えると、 それよりも前の段階の支援が必要なことが多いです。支援者がやってあげる、教えてあげるという支援ではなく、「気づき」を促す支援をするとよいのです
・喋らせるのではなく、「いま楽しいね」という自分の気持ちに気がつく
・指示に従わせるのではなく、「こうやったら もっと楽しいんだね」に気づく
・「できること」を増やす支援ではなく「分かること」を増やす支援のほうが大切
STの視点
STは、発達段階を踏まえ
- 感覚を受け取る
- 身体に気づく
- 人の存在に気づく
といった、コミュニケーションの土台から支援を組み立てます。
「何もしない」ように見える関わりの意味
重症児への支援は
- ゆっくり触れる
- 同じことを繰り返す
- 反応を待つ
といった、一見シンプルな関わりが中心になります。
しかしこれは、子どもの世界に合わせて関わるための高度な調整です。
言語聴覚士がいる放デイの価値
STがいることで、施設には次のような価値が加わります。
実際にSTが在籍している施設を探したい方は、求人サイトや施設検索サイトを活用すると確認できます。
言語聴覚士が在籍しているかどうかは、施設選びや就職先選びでも重要なポイントになります。
①コミュニケーション支援が体系化される
支援員の人たちが行う活動に意味をもたせ、どこを見るとよいのか?を明確にするのです。そうすることで、感覚・認知・言語をつなげて支援できるのです。
②他職種への視点共有
子どもの「どこを見るとよいのか?」が分かると、自分以外の職種のやっていることが理解できるようになってきます。「なぜその関わりをするのか」がチームで共有されるのです。
③子どもの小さな変化に気づける
じっくりと、しっかりと子どもを見るクセをつけていくと、細かなことにきづけるようになってきます。見逃されがちな反応を「意味のあるもの」として拾うことができるのです。
まとめとして
今回は、言語聴覚士がいる施設といない施設では、何が違うのか?という話しをしました。簡単に言ってしまえば、子どもを見るときの「視点」が違うのです。
言語聴覚士がいるかどうかで大きく変わるのは、支援の“内容”そのものというよりも、子どもをどう見るか?、どう関わるか?という視点です。
放課後等デイサービスにおいて、
- 活動を提供する視点
- 生活を支える視点
- コミュニケーションを育てる視点
これらが重なり合うことで、より豊かな支援になります。
その中で言語聴覚士は、 子どもと世界をつなぐ視点を持ち込む専門職だと言えるのではないでしょうか?
よかったら参考にしてみてくださいね。



