言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

「トイトーク」と「インリアル」の違いは?ことばの育ちを支える2つのアプローチ

トイトークとインリアルってどう違うの?

放課後等デイサービスでは、子どもたちのことばの力を育てるために、さまざまな支援の方法が取り入れられています。
その中でも、言語聴覚士がよく活用するアプローチに「インリアル・アプローチ」があります。他にも「トイトーク」というものもあります。どちらも、ことばへのアプローチです。

似ているようで異なる2つ。実際の違いを簡単に説明していきます。

 

 

 

2つの違い

ことばの支援で使う2つの方法。

トイトークは「文のかたち」を育てるための方法で、インリアルは「やりとりの楽しさ」を育てる方法です。子どもの発達段階に応じて両方を使い分けたり組み合わせたりすることで、より効果的な支援が可能になります。

どちらも子どもの発達を支えるための効果的な方法です。しかし、目的や使い方が少しずつ異なります。その違いと活用のヒントは次のとおりです。

 

トイトークってなに?

トイトーク(Toy Talk)は、子どもが「主語+述語」のような文章の形で話す力を育てることを目的とした方法です。

たとえば、「車が走ってるね」「犬が鳴いたよ」といったように、大人が主語と動詞をはっきりと使ったことばかけを行います。

 

 

ポイントは「玩具が主役」

  1. おもちゃのことを主語にして話す

✕「これ、どうするの?」(質問)
〇「電車が動いたね」(文のモデル)

 

2.動作や状態を明確に言葉にする

〇「お人形が座ったね」「ロボットが歩いてるね」

このように、大人が自然な文の形で話すことで、子どもはことばの使い方を耳から学び、まねして使えるようになっていきます。

 

◆ こんな子におすすめ

  • 単語は出てくるけど、まだ文では話さない

  • 「りんご」「食べた」など単語がバラバラに出る

  • 名詞や動詞の使い方があいまい

 

www.hana-mode.com

 

 

インリアル・アプローチって?

インリアル・アプローチ(InReal Approach)は、子どものコミュニケーションの意欲や楽しさを引き出すための方法です。

子どもの「今ここ」の興味に寄りそいながら、やりとりを自然に育てていくのが特徴です。

 

 ポイントは「子どもが主役」

  • 大人が子どもの遊びに合わせて参加する

  • 子どもの表情やしぐさに共感して応じる

  • 子どもが行動→大人が反応する(順番が大事!)

  • ことば以外のサイン(視線・ジェスチャー)にも反応する

インリアルでは、「正しい話し方」を教えるのではなく、やりとりを楽しいと感じる心を育てることを大切にしています。

 

◆ こんな子におすすめ

  • 人とのやりとり自体にあまり興味がない

  • 言葉が出る前の段階(前言語期)

  • 自閉スペクトラム症(ASD)などで、双方向の関わりが苦手な子

 

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2つの違い、ざっくり比較!

比べる視点 トイトーク インリアル
目的 文のかたちを育てる(構文) やりとりの楽しさを育てる(関係)
対象 単語は出るが文が少ない子 自発的なやりとりが少ない子
大人の役割 文のモデルを見せる 子どもの興味に共感して応じる
アプローチ ことばの構造を意識する こころの交流を重視する
話し方の特徴 主語+動詞の文をはっきり使う 子どもの気持ちに沿った自然なことばづかい

 

 

どちらを使ったらよいのか?

答えから言ってしまうと・・・どちらか一つ、じゃなくていい!です。

トイトークとインリアルは、それぞれ得意な場面が違います。だからこそ、子どもの発達段階に合わせて使い分けたり、組み合わせたりするのがおすすめです。

たとえば…

  • まずは関係づくりから: やりとりが苦手な子には、インリアルで「関わる楽しさ」を育てて

  • ことばのかたちも育てたい: やりとりが出てきたら、トイトークで「文のモデル」を示していく

 

放デイでの活用ヒント

言語聴覚士(ST)は、このようなアプローチをお子さんの状態に合わせて選び、職員や保護者と共有しながら支援していきます。

  • 保護者に「声かけの工夫」を伝える

  • 現場スタッフに「ことばが育ちやすいやりとり」を提案する

  • セッションでおもちゃを使って実践してみる

それぞれの子に合った関わり方を見つけるヒントになればうれしいです。

 

 

まとめとして

今回は、「トイトーク」と「インリアル」の違いについて説明しました。支援の際には、一つのアプローチや論理を使うのではなく、「よいとこ取り」でOKなのです。

難しく考えなくてよいです。まずは、取っつきやすい方からやってみるのも手です。まずは、目の前にいる子どものことをよく見ること。そこから、何が必要なのか?が見えてくるはずです。自分たちで決めかねていたら、言語聴覚士(ST)などの専門家に相談するのもよいと思います。

自分のための支援ではなく、子どものための支援になるために、まずはやってみましょう。

よかったら参考にしてみてくださいね。