「意味がわかる」と仕事は変わる
福祉の仕事は、日々の「やること」が決まっています。通所施設であれば・・・
子どもたちを出迎えて
集まってあいさつをする
活動をして
昼食(おやつ)を食べて
帰りの支度をして
家に送る
活動も施設によって異なりますが、だいたいの流れは同じだと思います。毎日同じことをしていると、ただ やるだけの「やっつけ仕事」になりがちです。適当にやっても、大きな問題もなく一日が終わります。
支援だって同じ。何となく、でできてしまう。
それではダメだと分かっていても・・・
毎日、同じことをやる、というのは意外と難しいのです。
今回は、障害児支援の現場で、毎日、自分がやっていることを振り返ってみよう。というおはなしです。「なぜやっているか?」に意識が向けば、仕事も楽しくなりますし、やりがいも感じられるはずです!
日々の業務にウンザリしている人は ぜひ読んでみてください。
支援と関係ないことでも「気づき」がうまれる
先日、ちょっとした自損事故で同僚が車をこすってしまいました。
修理に出そうかとも思いましたが、「せっかくだから自分でやってみよう」と思い立ち、車体の塗装に挑戦してみました。
1.車の修理から始まった“学び”
もちろん、塗装なんてやったことはありません。
ネットや動画を見ながら材料を揃え、説明書を読んで作業を進めるものの、最初は「なんでこの工程が必要なのか?」さえ分かりません。
ただ指示どおりに手を動かすだけ。
しかも、うまくいかない。塗料がムラになるし、乾かす時間も分からない。
「なんでこんなことやってるんだろう」と、途中で嫌になりました。
でも、ある瞬間に気づいたんです。
「この工程には、必ず理由があるんじゃないか?」
そう思ってから、少しずつ見え方が変わってきました。
たとえば「下地を削る」作業は、ただ面倒な準備じゃない。
新しい塗料をきれいに密着させるための“大切な土台づくり”でした。
乾燥時間をしっかり取るのも、仕上がりを長持ちさせるため。
ひとつひとつの工程に「意味」があると分かった瞬間、作業が面白くなり、集中力も増していきました。
2.「意味」を理解すると、自分の動きが変わる
支援の仕事でも、同じことが言えます。たとえば、放課後等デイサービスで行う活動。
・ボールを転がす
・積み木を並べる
・カードをめくる
一見すると「遊び」のように見えることばかりです。
けれども、それぞれの活動にはちゃんと目的があります。
ボール転がしなら、手の動きや目の追視、相手とのやり取りを育てる。
積み木なら、空間認知やバランス感覚を支える。
カードなら、記憶力や言語理解を伸ばす。
もし、こうした「意味」を知らずに活動していると、ただ時間を埋めるだけの支援になってしまいます。
しかし、「なぜこの活動をするのか」を理解していると、子どもの小さな反応にも気づけるようになります。
「今、手の動きが少しスムーズになった」「笑顔が増えた」「やり取りが続くようになった」そんな変化に、自然と目が向くのです。
3.“うまくいかない”時間も、支援の一部
塗装作業でも、うまくいかない時期がありました。
やってもやっても失敗する。ムラができる。乾かない。剥がれる。「もうダメだ」と思う瞬間が何度もありました。
しかし、何度かやり直すうちに、少しずつ感覚がつかめてきました。
「ここで焦るとムラになる」「このタイミングで乾かすときれいに仕上がる」
失敗の中でしか得られない気づきが、確かにありました。
障害児支援でも同じです。
・たとえば、声をかけても反応がないとき。
・活動がうまく続かないとき。
・何度やっても同じ行動を繰り返すとき。
その「うまくいかない時間」こそ、支援者が学ぶチャンスです。子どもが何を感じているのか、何に困っているのか、少し立ち止まって考える。その過程で、支援者の“感覚”や“読み取る力”が育っていく。
支援って、まさに「やり直しながら上達していく仕事」なんですよね。
4.「嫌々」やっていると何も見えない
最初の塗装作業をしていたとき、私は「早く終わらないかな」と思っていました。
面倒で、難しくて、正直イヤでした。
でも、「この作業にはどんな意味があるんだろう?」と意識が変わった瞬間、見える世界が変わりました。
支援でも同じです。
「とりあえず活動をこなす」「今日はなんとか無事に終わればいい」
そんな気持ちで取り組むと、子どもの変化や成長が見えにくくなります。
けれど、「この活動で、子どもにどんな体験をしてもらいたいか」と考えながら関わると、不思議と支援が楽しくなります。
子どもの小さなサインにも気づけて、毎日の積み重ねに“手ごたえ”を感じられるようになります。
「意味を考えること」が、支援を支援らしくしてくれるんです。
5.「意味を考える」は、すべての支援員に通じる姿勢
私は言語聴覚士として働いていますが、この気づきは、職種を問わず大切だと思います。
特に、放課後等デイサービスで働く新人支援員さんに伝えたいことがあります。
それは、「今やっている支援には、必ず意味がある」ということ。
たとえ、まだ経験が浅くて、活動の目的が分からなくても大丈夫。
まずは、「なぜこの活動をするのか?」と考えてみることから始めてみてください。
子どもが何を感じ、何を学ぼうとしているのかを想像してみる。
それだけで、支援の質がぐっと変わります。
上手くいかなくても、意味を考えながら繰り返すうちに、自分の中に“支援の感覚”が育っていきます。
6.「支援も、塗装も、積み重ね」
塗装作業が終わったとき、ふと気づきました。
最初は下手だったけれど、最後にはきれいに仕上がっていた。
「これ、支援と同じだな」と。
支援も、経験を重ねるうちに見える景色が変わります。
はじめは「やらされている仕事」でも、いつか「意味がわかる仕事」になる。
そのとき、自分の中に“支援者としての芯”ができていくんです。
まとめとして
今回は、毎日、当たり前にやっていることの意味を考えてみよう。そこで得たものは、支援にプラスになる、というはなしをしました。
車の塗装を通して感じたこと。
それは、「自分のしていることの意味を考える」だけで、仕事の質が変わるということです。
放課後等デイサービスで子どもと関わるときも同じ。
活動のひとつひとつに「なぜ」「なんのために」を見つけていくと、
支援が“作業”から“学び”に変わります。
そして、その積み重ねが、子どもの成長だけでなく、
私たち支援者自身の成長にもつながっていくのだと思います。
塗装の仕上がりを見て、「次はもっと上手にできるかも」と思いました。
支援も同じように、挑戦と失敗の中で、少しずつ“上達”していく仕事です。
だからこそ、今日も「意味を考える支援」を大切にしていきたいと思います。
今日の支援に少しでも迷ったら、「この活動にはどんな意味があるんだろう」と考えてみてください。きっと、子どもと関わる時間が今より少し豊かに感じられるはずです。
よかったら参考にしてみてくださいね。


