自分の居場所を作る
今回は、職場で「自分の居場所を作る」ためにはどうすればよいのか考えていきます。居場所といっても、人間関係の話しではありません。言語聴覚士(ST)としての“居場所”作りです。一番、理想的なのは「自分しかできない仕事」を作ることだと思います。
言語聴覚士の役割は施設(事業所)によって異なる
放課後等デイサービスでは、STの役割が事業所によって異なります。働き方や仕事内容も「事業所側から明確に指定されているケース」と「現場のSTにすべて任せてもらえるケース」で分けられると思います。
①事業所側から明確に指定されているケース
この場合は、与えられた仕事をしっかりとやっていくことで、おのずとSTの役割が明確になります。運営にSTが携わっている事業所であれば、ありうるケースです。
②現場のSTにすべて任せてもらえるケース
運営する人が、専門職(PT、OT、STなど)の職域を把握していない事業所に多いケース。その場合、「とりあえずやってみて」や「やりたいことがあったら教えて」と言ってくれることと思います。
放課後等デイサービスは、「保育」が中心となって、子どもへの支援を行っているところが多いです。そこに「専門職」として、どのように介入していくのか?
放課後等デイサービスの保育スタッフも日々、実践や研修などで、様々な知識を身につけています。しかし、STからみて、一般的な事業所で足りていないと感じるものもあります。それが、
・摂食嚥下
・発達
などです。
摂食嚥下では、嚥下のメカニズムもそうですが、それよりも「介助方法」「食形態」「子どもへの対応」などの知識が重宝されます。特に、重症心身障害児が通う放課後等デイサービスでは、食事の問題が大きなトピックになっているのに対応が分からない、ということがたくさんあります。ここでSTの出番です。安全に、楽しく食事を行えるように対応を考えていきます。
発達面では、「問題行動の原因となるもの」や「発達段階」の知識が重宝されます。また、子どもによっては、発達検査や言語検査を受けてくることがあります。それらの報告書が分かりづらいために、保護者やスタッフが混乱してしまうこともあります。そういうときに、STとしての知識を活用します。報告書をうまく翻訳して、保護者やスタッフへと伝えるのです。
もしも、STひとりの力ではどうにもならないときには、近くにいるPT、OT、歯科医師などに助けを求めるとよいと思います。
「保育スタッフだけでは、どうにもならないこと」への対応に、協力していくのです。保育スタッフの対応力が上がれば、子どもたちへの対応も変わってきます。
保育職にとっての「当たり前」、言語聴覚士にとっての「当たり前」
放課後等デイサービスには、多くの職種が働いています。それぞれ職域が異なるので、知識も異なります。STとしては「当たり前」だけれど、保育職にとっては「初耳」というものもあります。または、「一般的に言われているが誤っている知識」もあります。
例えば、「ことばを獲得していない子に対して、構音訓練をすれば喋れるようになる」「食べづらい子の食べ物は、とにかく細かくするのがよい」これらの誤った知識を信じて支援を行っても、良い効果は得られません。
そういった内容をうまく伝えていくことが、結果的にSTとしての居場所をつくることにつながるのではないでしょうか。