なぜ専門職は、保育士にかなわないのか
「保育士にはかなわない」
この感覚は、きっと現場で働いている人なら一度は感じたことがあると思います。
わたしも、そのように感じたことがあります。
言語聴覚士として勉強してきたはずなのに、子どもとの関わり方は、保育士の方が圧倒的にうまい。
なぜだろうと考えたときに気づいたのは「知識ではなく、関わりが土台になっている」ということでした。
障害児の支援を行う現場では、言語聴覚士(ST)のような専門職が重宝されやすいです。
しかし、それは、言語聴覚士の絶対数が少ないからです。専門的な知識を持っているから「仕事ができる」わけではないのです。
今回は、様々な職種で働くとき、どのようなことに気を付けたほうがよいのか?を「言語聴覚士」と「保育士」を例にして説明します。
わたしは、障害児支援の現場で15年以上、言語聴覚士として勤務をしてきました。その実体験を含めてお話しします。
よくある現場の考え
放課後等デイサービスのような施設で、様々な専門職をみるようになってきました。多いのは下記のような職種です。
・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)
・看護師
などなど。
▶専門職について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
放課後等デイサービスのPT・OT・STって?専門職の違いについて
専門職は知識や技術がある?
現場には様々な専門職がいますが、多くの時間を子どもと過ごしているのは保育士や支援員です。
専門職は、それぞれの養成校で障害や支援、訓練の知識を学んできます。放デイ保育士も子どもに関することを学びますが、障害に関してはほとんど授業はないそうです。
そのため、専門的な知識を知っている専門職の意見は、どんなことを言っても「すごい」と思われやすいのです。
本当のそうなの?
確かに、専門職は、いろんなことを知っています。しかし、知識がある人=よい支援をする人、というわけではありません。
わたしは養成校で何年も勉強して、国家試験をとって、障害児者の施設に就職しました。職場では新入職員なのに、自分はたくさんのことを知っている、と思い込んでいました。
しかし、いざ、働き始めてみると、自分の知識では まるで歯が立ちませんでした。
保育士ってすごい
これまで、何か所かの障害児施設で働いてきました。そこには、必ず保育士さんがいました。
わたしは、この春から、新しい施設で働き始めました。そこにも保育士さんがたくさんいました。新入職員も数人いました。みなさん10年以上、幼稚園や保育園で勤務されてきた方々です。
わたしもSTとして10年以上働いてきました。しかし、保育士さんたちと、わたしとでは力が差がありすぎました。この差とは「視点」です。
保育士は「子どもから入る」
専門職は「課題から入る」
ちゃんと「遊べている」保育士たち
ある日、施設で、自由遊びの時間に「この子たちと一緒に遊んで」と先輩職員から指示がありました。そこには、障害がある子やグレーゾーンの未就学児の子たちが10人いて、何となくみんな遊んでいます。
わたしは「どうしようかな?」と、その場で考え込んでいました。わたしと同期の保育士たちは、スッと子どもの近くに近づき、自然に遊び始めているではありませんか。数分後には子どもたちも笑顔になっています。
そのとき、わたしは子どもの隣でしずかに固まっていました。
わたしが「遊べていない」だけだったのかもしれません。しかし、今回、保育士の方々が自然と「遊べている」という姿を目の当たりにして心底驚きました。
遊びを勉強しよう
では、どうすれば“子どもから入る関わり”ができるのでしょうか?
ポイントは3つです。
① 子どもの興味を観察する
② 同じことをやってみる(模倣)
③ 少しだけ変化をつける(展開)
この3ステップだけでも、関わりは大きく変わります。
遊びの勉強とは?
遊びの勉強?遊びの種類が書いてある専門書を暗記すればいい?
そうではありません。
・子どもは何に興味を向けているの?
・どうやって声をかければいいのか?
・何で遊べばいいのか?
・提案や質問をしてもいいのか?
子どもの気持ちや興味の動きを意識していくのです。養成校では習いませんでした。先生が言っていたかもしれませんが、テストには出題されていません。
遊びとは「技術」ではなく、「関係をつくる手段」です。
たとえば
言うのは簡単です。もう少しみていきましょう。
例① かかわり方
遊具で遊んでいる子。遊び終わったけれど、なかなかどいてくれない。他の子たちが待っているのに。「他の玩具で遊ぼう」「もうおしまいだよ」と伝えても「嫌だ」と言って遊び続けようとする。無理やり終わらせるわけにもいかないし・・・。
少し離れた場所にいた職員が「○○ゲームやるよー」と周囲の子たちを集めた。その職員は楽しそうにみんなで飛び跳ね始めた。遊具遊びを終わりにできない子も、その職員の誘いを聞いて、すんなりと遊具から離れた。
⇒子どもを動かしたのは「指示」ではなく、「魅力的な関わり」でした。
例② きっかけをつくる
ことばを話さない肢体不自由の子。ときどき舌で音を鳴らすことがあります。手も自由に動かすことができないので、玩具遊びも難しい。集団活動では、工作などを無理やりやらされるか、待たされるかのどちらかになりやすい子。
もしかしたら、舌で音を鳴らすのは、ひとりで遊んでいるのかもしれない。大人が同じ音を出したらどうなるのかな?あれ、音を聞いたら動きが止まったぞ。何回か繰り返していくうちに、この子も舌を鳴らし始めた。
子どもが舌を鳴らす→大人が真似して舌を鳴らしてみよう。・・・気づいたぞ。
大人が舌を鳴らす→子どもも舌を鳴らす、という模倣遊びにつなげられないかな?・・・真似してくれた。
⇒他者とやり取りできない子だと思っていたけれど、やり取り遊びを確立することができました。遊びの「きっかけ」をみつけてみよう
▶「遊びの中でことばを引き出す関わり方」こちら
⇒ことばの遅れが気になる!普段の生活でできることのポイント
▶放デイでの子どもとの関わり方を知りたい人は、こちらの記事もご覧ください。
まとめとして
今回は、言語聴覚士が保育士に負ける理由を考察してみました。知識や技術を習得することばかり優先してしまうと、子どもとの関わりに関することが抜け落ちてしまいます。わたしたちが相手にするのは「障害」や「疾患」だけではありません。目の前にいる「子ども」のはずです。
ぜひ、子どものことをじっくりみてください。そして、「なぜ?」と考えてみてください。子供の心の動きを意識していくことで、専門知識がより活きてくるはずです。
ことばは、知識では育ちません。
関わりの中でしか、生まれません。
あなたは ちゃんと遊べていますか?
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「どうやって遊べばいいのか分からない」
そう感じた方は、“遊びやすい教材”から始めるのがおすすめです。
特に、ことばが出にくい子には「文字がない絵本」がとても相性が良く、自然とやり取りが生まれやすいです。
▶こどもが興味を向ける教材をお探しの方はこちらもどうぞ
⇒文字がない絵本はことばの土台を育てる|言語聴覚士オススメ5選と関わり方
まずは1冊でいいので、実際に使ってみてください。関わり方が変わる感覚が、きっと分かるはずです。

