言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

「発達」を学ぶ理由は子どものことを「理解する」ということなんだ

なぜ「発達」を学ぶの?

ちまたには「発達」関係の本であふれている

国会図書館で検索してみると「発達」と名のつく本は5万冊以上、雑誌は2万冊以上ありました。必要とする人がいるから出版された本の数も多いのだと思います。障害児分野で働くと、当たり前のように使われる「発達」ということば。なぜ「発達」の情報が必要とされるのでしょうか?

  

 

 

なぜ「発達」を学ぶ?その理由

 「発達」と聞くと思い浮かぶのは、「発達障害」「発達検査」などだと思います。しかし、「発達」は障害分野だけのものではありません。では、障害がない子(健常児/定型発達)たちに対して、どのように活用できるのかをみていきましょう。

 

 

①障害がない子

「発達」の見方

 様々な所で「○歳には□□ができる」という発達段階(発達年齢)の表を見ることができます。この表をみるとき、ついつい


・ことば

 →○歳でどのくらい喋るようになるか?


・運動

 →○歳でどのくらい動けるようになるか?


に意識を向けてしまいがちです。


たしかに、著しい遅れには早めの対応が必要となります。しかし、ことばや運動は個人差が大きい領域です。子どものことばが増えると嬉しいです。歩けると嬉しいです。ある程度、ことばが出て、歩けるようになると、もう、大人(自分)と同じなんだというふうに考えてしまいがちです。「なんで、ちゃんとできないの?」というふうに思ったり、実際に注意したりしたことがある人も多いと思います。

例えば、3歳くらいの子は、発言に自分の願望が混ざってしまいます。

1日家にいたはずなのに、「今日は、○○君とプールに入って遊んだ」と言い出すことがあります。過去にあった楽しい体験を思い出していっている場合もありますし、願望を言っている場合もあります。まだ、現実と空想は区別できません。

ですので、このくらいの子に対して「うそを言うな!」と注意するのは良い対応とは言えません。叱るのではなく、「今日は○○して、□□したね。」と一緒に今日のことを振り返る時間にしてみる。そして、「プール入りたかったね。今度やろうね」と約束をしてみることで、子ども自身の記憶の確認にもなります。楽しかったことの共有もできます。

また、約束を意識できるようになるのは4、5歳くらいからです。それでも「人として約束を守ります!」ではなく、「先生が言っていたから守る(かも)」くらいの認識です。

 

 

②障害がある子

障害を持っている子の支援を行う際に「発達」の視点は欠かせません。なぜなら、発達は「尺度(ものさし)」になり「共通言語」となるからです。


・「尺度(ものさし)」とは、
「いま、このくらいの発達(年齢)だから、このくらいの理解度だろう」
「だったら、このくらいの難易度の声かけをしてみよう」

というふうに支援の方向性を決めることです。


・「共通言語」とは
障害児分野の施設には様々な職種のスタッフが関わります。子どもが「いま、どの発達段階にいるのか?」を各職種間で共有できていれば、今後の支援に向けての相談がスムーズになります。「次は、□□の段階だから、こんな支援ができるね」というふうにできれば、突然、難し過ぎる課題を設定することは減るはずです。

 

 

まとめとして

 ●障害のない子

普段から障害や疾患と関わっていない限り、自分の子育てで「発達」を活用しようとは思いにくいのではないでしょうか。ちらっとでもよいので、「発達」について触れてみると、自分の子どもの理解が深まるはずです。このブログの記事でも、他の方の書かれたものでもよいので目を通してみると面白いと思います。「発達 ○歳」で検索をかけるといろいろ出てきます。

 


障害のある子

放課後等デイサービスでは、「発達」よりも「(子どもの)気持ち」を学ぶべき、という風潮が残っています。もちろん、すべての放課後等デイサービスではありませんが。

しかし、年々、様々な職種が入ってきている放課後等デイサービスで、発達という共通言語を持っておくことは必要となるはずです。

後輩スタッフに支援方法などを引き継ぐ際にも、それらの言語化は必要です。そのための尺度(ものさし)となります。

 

どちらにも言えることなのですが・・・

問題行動や(大人にとって)嫌なことをする子に対して「これを止めさせるためにはどうすればいいか?」と悩むのではなく、「いまはこの発達段階。ということは、次は○○か」と次の段階を見通しながら、新しい力を身につけることで、問題となる行為が軽くなったり、目立たなくなることも多いのです。大人がどこに目を向けるか?は大切になってきます。

 

 

 

参考資料 

幼児の「約束」理解の発達
上里真喜子、嘉数朝子
http://hdl.handle.net/20.500.12000/8148