補聴器について
補聴器は電子機器で、様々な種類があります。
その分類もいくつかの方法で分けることができます。
かたちの違い、音の処理の仕方の違い、などなど。
聴覚分野以外で働いている言語聴覚士の人は「もう忘れてちゃった」という方が多いかと思います。
私も、放課後等デイサービスに勤務していて、突然、スタッフや親御さんから「補聴器について」質問を受けることがあります。
そんなときに困らないためにも復習は大切です。
学生の人も一緒に復習しましょう。
1)補聴器の形の違い
耳かけ型なのか、耳穴型なのか、それとも箱型なのか、かたちの違いによる分類です。
2)音の処理の仕方
補聴器は、周囲の声や音を電気信号にして耳の中へ送ります。その際の処理の仕方にもいくつか種類があります。
① アナログ補聴器
声や音を電気信号に変えるだけのタイプです。
・伝音難聴にも合わせやすい
・手で調節しやすい
・音声も雑音も大きくしてしまう
② デジタル補聴器
音を加工してくれるタイプです。
・感音難聴にも合わせられる。
(音が小さくて歪んで聞こえる)
↓
(周波数ごとに大きくする箇所を変える)
※少しは明瞭度が上がる
・専用の機器で調整(メーカーごとで異なる!)
・補充現象にも対応
・dip型、高音急墜型もOK
a)リニア補聴器
すべての音を一定に大きくしてしまうもの。伝音難聴に合わせやすいです。
補充現象の強い感音難聴には合わせにくい。弱い音を増幅した時に強い音がうるさ過ぎてしまうため。
出力と入力が1:1。線形増加
b) ノンリニア補聴器
聞こえづらい音は大きく、聞こえている音はあまり大きくしないようにできます。
入力音によって利得を自動的に変化させる。非線形増幅。子音協調にもつながります
③ プログラマブル補聴器
音の処理はアナログ、調整はデジタル、というタイプです。
専用の機器を使って調整を行います。
補聴器の特徴
補聴器には様々な機能があります。メーカーによっても、補聴器によっても異なります。次にあげるものは一般的な補聴器の"機能(ウリ)"です。その機能を使いたい時だけ、そのボタンを押せば効果が表れるタイプの補聴器もあります。全自動のものもあります。
1)雑音抑制(ノイズリダクション)
雑音だけを押さえてくれるものです。仕事などで、室内のエアコンの音が気になっている人などが対象となります。
声と雑音には特徴的な違いがあります。人の話し声は音の幅が広く、雑音は音が一定の幅です。「雑音抑制(ノイズリダクション)」では、特定の周波数だけを押さえてくれるのです(音域の変動が大きすぎると効果は得られません)。
2)指向性
会話と雑音の方向が異なる時に、会話だけを聞きたいときなどに使えます。
補聴にの前後に、それぞれマイクロホンがついています。前のマイクロホンで話し声を受けて、後ろで雑音を受けにくくするといこともできます。
3)ハウリング・コントロール
ハウリング(特定の周波数)を押えるものです。ハウリングと同じ音を出して打ち消すものなどがあります。
補聴器業界の実情
補聴器には、それぞれ「うたい文句」があって、どれもよさそうに見えます。販売員は嘘は言いませんが、人によってはよく分かっていないケースもあります。
子どもや患者さんに「合った」補聴器が行きわたるようにしたいです。
補聴器を販売するための資格は特に必要ありません。
資格がない販売員でも、販売や耳型採取(イヤーモールド)も行うことができてしまいます。
現場でも学ぶことは出来ますが、お店によって差は出てきてしまうと思います。
そのために、テクノエイド協会認定の「認定補聴器技術者」という資格があります。これを取るためには講習会に参加するのですが、実技もありしっかりと学ぶことは出来ます。
認定補聴器技術者
公益財団法人テクノエイド協会は、補聴器を購入される方の使用目的、使用環境、希望価格等についてのご相談に応じ、補聴器の適合調整、補聴効果の確認及び使用指導を適切に行うことのできる、専門的な知識及び技能を習得した「認定補聴器技能者」を認定しています。
公益財団法人テクノエイド協会
http://www.techno-aids.or.jp/senmon/hocho.shtml
補聴器業界と言語聴覚士
私が補聴器メーカー・販売店で働いていたときは、資格がなくても耳型採取が丁寧でとてもうまい人がたくさんいました。販売成績はとてもよいのに、耳に関する知識がほとんどない人もいました。
言語聴覚士は、養成校のときに「聴覚系(解剖・生理・病理)」、「補聴器」、「人工内耳」などはひと通り学びます。
耳型を採るあってもわずかです。現に、私も「認定補聴器技術者」の講習会などの実習で学びました。
聴覚分野の専門家を名乗る言語聴覚士。もっと聴覚分野も学生のときに学ばせてほしいです。