概念の発達
「概念が弱いですね」と言われたとき、それがどういう状態かイメージできますか?
療育の現場ではよく使われる言葉ですが、実は人によって意味がズレやすい言葉でもあります。
概念とは「物事を把握しやすくするための方法」です。どのような意味があって、どのような種類があるのか?それがどのように育って行くのか?
この記事では、「概念」という言葉を、感覚と運動の高次化理論の視点で整理し、支援にどうつなげるのかを解説します。
概念とは
概念とは「共通点をまとめて考える力」です。
・犬も猫も → 「動物」
・りんごもバナナも → 「果物」
目の前にないものも含めて、頭の中で分類できる状態を指します。そのためのフィルターだと考えてください。
役割は大きく分けて2つあります。
物事の本質を理解するということですね。
私たちが日常的に使う「既成概念(きせいがいねん)」ということば。これも同じ。既に社会全体に「当たり前のもの」として浸透しているルールや知識のことをさします。
感覚と運動の高次化理論での「概念」とは?
感覚と運動の高次化理論では、「概念」は発達の中でも後から育ってくる力です。
そのため、「概念が弱い=能力が低い」とは考えません。
たとえば、
・実際に見たり触ったりしたものは分かる
・同じものを見分けることはできる
しかし、仲間でまとめる(動物・食べ物など)ことが難しい という状態の子もいます。これは「できない」のではなく、まだその段階まで育っていない状態と考えます。
だからこそ、
いきなり「これは何の仲間?」と聞くのではなく、
・実物に触れる
・同じものを集める
・違いに気づく
といった経験を積み重ねることが大切です。
「概念」の間違えた理解の仕方
よくある誤解として、「ことばが出ている=概念がある」というものがあります。これは誤りです。
しかし実際には、
・丸暗記で答えている
・パターンで返している
だけの場合も多いのです。
「1、2、3、4、5、6・・・」と声に出して言うことができる。だから、数を理解しているんだ。
⇒ 言えるだけで、数を概念として理解していない場合もある!
概念が必要な理由
私たちの周りにある情報はゴチャゴチャした状態で目や耳に入ってきます。
それを整理して分かりやすくしてくれるのが「概念」なのです。
・「パパとママとお兄ちゃんとお姉ちゃんと僕の分のアイスを買いに行こう」
↓
「5個アイスを買いに行こう」
⇒ 足し算や引き算ができることで頭の中が整理される
***
・「乗用車とトラックとバスが来た!」
↓
「車3台が来た!」
⇒ と簡単にまとめられます。
概念とは
・物事をザックリと捉える
・世間一般のルールに照らし合わせて捉える
という枠組みを作ることです。概念を身につけることで「考えること」がスムーズになるのです。
概念が育っていない子って?【例】
たとえば、犬の写真を見て「いぬ」と言える子でも、
・犬と猫をまとめて「動物」と考える
・りんごとバナナを「果物」とまとめる
ことが難しい場合があります。
これはことばを知っているだけで、概念が育っているとは限らない例です。
概念が身についていないとどうなるか?
小さい子はまだ概念が十分に身についていません。
数字を1から10まで数えられる子でも、
・「3つちょうだい」に応じられず適当に渡してしまう
・すごろくで「5マス進む」の意味が分かっていない
場合があります。
これは、数字を言うこと(カウント)はできるけれど、数の概念が分かっていないのです。
そのため、そばで見ていて「あれ?」と思うことがあるのは概念が十分に入っていないから、ということが多いのです。
支援につなげよう
では、概念を育てるためにはどうすればよいのでしょうか?
ポイントは、段階をさかのぼることです。
・感覚的な経験
・パターン的な理解
・やり取り
これらを積み重ねることで、徐々に概念につながっていきます。繰り返し勉強させる、のではありません。遊びの中で、感覚を使って、パターン的に理解して、やり取りした経験を積んでいくことで、子どもの成長を促していくのが支援なのです。
発達における様々な「概念」
「概念」は物事の捉え方(枠組み)なので、様々なものに適用できます。
子どもの発達でよく見かけるのは下記のような「概念」があります。
概念のタイプ
概念にはいくつかのタイプがあります。
① 違いを見つける(差異化)
⇒2つ以上のものを比べて違いに気づくこと
「赤と青は色が違う」「三角と四角は角の数が違う」
② 同じを見つける(一般化)
⇒条件が当てはまれば別のものでも同じといえる。
「角が3つあれば三角形」「どんな形で会っても木は木」というような法則(ルール)をつくること
③ 同じをまとめる(類型化)
⇒バラバラのものから共通するものを見つけてグループにしていくこと。
「イチゴ、みかん、リンゴはすべて“果物”」
それでは、どのように概念が発達していくのか例をあげて考えていきます。
概念の発達
それぞれを簡単な流れで説明します。
概念獲得の年齢は個人差が大きいです。
そのため、下記の年齢は大体の目安です。
前提となる力
そのまえに。概念を獲得するための前提となる力はあるのでしょうか?
物事をとらえるためには2つ以上のものの「違い」に気づく力が必要です。
これはすべての概念の土台となる大切な力です。
ものの違いに気がつかないということは、色や形、文字などの区別がつかないということです。これではグループ分けもできません。
何歳にどのくらいの「概念」が身につくのか?
それでは、子どもの発達でよくみられる「概念」を年齢の目安とともにみていきましょう。
① 大小
・大きさのカテゴリーを表す単語として「大きい」を使う(2歳)
・比較するために「大きい」「小さい」を使う(4歳)
大きさの比較判断の成立に関する検討
http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/1516/1/0080_010_005.pdf
大小に関する曖昧な概念と表象を用いた比較判断について
https://www.jasssdd.org/Judgement/olds/1002/1002.html
② 量
・感覚として大小の区別ができる(1歳~2歳半)
・「いっぱい」「もっと」等のことばを使う(2歳)
・見た目が変わっても重さは変わらない(7~8歳)
(質量保存の法則)
8~10歳の「重さの保存」に関する研究 - 立命館大学
http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=367120
③ 時間
ここでいう「時間」とは生活における「流れ」を指しています。
・時間的な概念はほとんどない(1~2歳)
・行動の順序が身につく(2~3歳)
・生活時間の順序と繰り返されることを理解する(6歳)
・「昨日」「今日」「明日」の連続性を理解する(5歳くらい)
※行動の順序
⇒ 朝起きたらトイレに行って、ご飯を食べて・・・と生活の流れができる。これが時間の概念の素になる
※繰り返し
⇒ 安定した生活リズムが健康な体だけでなく時間感覚も育てるのです!
時間および時間概念の発達について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kisoron1954/15/4/15_4_193/_pdf
子どもの生活に根ざした数量の活動 - お茶の水女子大学https://www.ocha.ac.jp/intl/cwed_old/eccd/report/hand_J/2_5-4.pdf
④ 数字
・数字を機械的に覚えている(~3歳)
・数字を読む(3,4歳)
・「3個取って」の指示に応じられる(3,4歳)
・簡単な足し算ができる(5歳)
・簡単な引き算ができる(6歳)
⑤ 形
・形を見分けられる(5,6ヶ月)
・殴り書き(1歳半過ぎ)
・丸(3歳)
・十字(3歳過ぎ)
・四角(4歳半)
・三角(5歳)
※上記は、形の違いに気づいて描けるようになる年齢
※新版K式によると1983年に比べて2001年の子どもは図形の模写ができるようになるのが遅かったとのこと。
⑥ 色
・色よりも形やコントラストに強く反応する時期(0~2歳)
(コントラスト:明暗や色彩など色の差異)
・赤などの鮮やかな色に反応する(2~3歳)
(彩度の高い原色)
⇒赤や青に反応することが多い。しかし、好きな色から覚えるケースもある
・基本的な色の区別(3歳)
色の名前を聞いて指さしが出来る
・色の違いが見て分かる(3~5歳)
(色相が把握できる)
・色を概念として知覚(4~5歳)
幼児画に おける色彩的発達段階(野村 正則)
http://repo.beppu-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php?file_id=1668
⑦ 空間、位置
だいたい5歳くらいからです。
・上下(5~6歳)
・前後(5~6歳)
・左右(5歳~)
※ 名称自体はもっと前の年齢から言える。
しかし、実際に理解できるようになるのは上記の年齢になったころから。
特に左右は5歳でも間違う子はまだ多い。
奥行き、場所を表す「位置」を理解して、使えるようになる順序は下記の通りだといわれています。
奥
↓
上下
↓
外
↓
真ん中
↓
前後
↓
隣
↓
左右
子どもの「まんなか」の概念に関する発達的研究
http://www.seitoku.jp/lib/shuron/shuron2012/J110615.pdf
幼児の空間言語の習得に関する発達的研究
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/37776/2015071512015943515/AREC_36_43.pdf
獲得を急かさないで
近年、障害のない子でも、数や文字の読み書き、時計の読み方などを早期から「教え込む」ケースが多いようです。基本的にはそこまで急かさなくてもOKです。
数や文字などは機械的に覚えるよりも、他者とのやり取りを通して学んでいくことが大切。
大人がしてあげられるのは子どもがコミュニケーションで使えるようにすることなのです。
▶「概念」の前に獲得する「象徴」にかんしてはこちらの記事をご覧ください。
⇒ 「象徴」「表象」「記号」違いを知れば発達が見えてくる! - 言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?
まとめとして
いかがでしたか?今回は「概念」の発達について紹介しました。
難しく感じてしまうかもしれません。ようは「枠組み」です。算数でも公式に当てはめれば簡単に答えを導き出せますよね。そんなイメージです。
▶小学生以降の発達を詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください
⇒ 児童期・学齢期(小学生)の発達段階【まとめ】6歳以降はどう育つか?





