副籍って何だ?
特別支援学校に通っている子が、時々、普通の学校に通ったり、行事に参加したりすることがあります。
これが副籍(ふくせき)です。支援籍(しえんせき)と呼ぶ地域もあります。
副籍がある日は、放課後等デイサービスをお休みする子もいます。いったい、副籍はどんなものなのか、みていきましょう。
この制度が良いか悪いかはさておいて、どんなものなのか?をまとめてみました。
副籍制度とは
障害の種類や程度に関わらず、肢体不自由の子でもこの制度を利用している子がたくさんいます。
副籍とは、副次的な籍のことです。都立特別支援学校の小・中学生が、自分が暮らす地域の小・中学校に籍を持つこと。文部科学省によると・・・
副籍とは
副次的な籍について(東京都)
都立特別支援学校小・中学部在籍の児童生徒が、居住地域の小・中学校に副次的な籍をもち、直接交流(※1)や間接交流(※2)を通じて、居住地域とのつながりの維持・継続を図る制度。
※1:小・中学校の学校行事や地域行事等における交流、小・中学校の学習活動への参加等
※2:学校・学級便りの交換、作品・手紙の交換、地域情報の提供等
文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1320681.htm
呼び方も様々です
副次的な籍は、「副籍」として知られています。しかし、地域によって名称が異なります。( )は制度開始年度です。
岩手県・・・交流籍(2010年~)
埼玉県・・・支援籍(2004年~)
東京都・・・副籍(2007年~)
長野県・・・副学籍(2005年~)
岐阜県・・・交流籍(2013年~)
長崎県・・・支援籍(2016年~)
横浜市・・・副学籍(2005年~)
浜松市・・・交流籍(2011年~)
福岡市・・・ふくせき制度(2011年~)
(2020年3月現在)
東京都が一番初めかと思っていましたが、それ以前に始めていた自治体も多くあります。
地域指定校
都立特別支援学校の子が副籍を置く学校のことを「地域指定校」と呼びます。基本的には、自分の家に最も近い小学校や中学校が地位指定校 となります。区市町村教育委員会が就学相談の過程で調整・決定します。
※特別な事情によって、上記以外の学校を希望する場合には、教育委員会と希望する学校の校長と相談の上、地域指定校を決定します。
対象者は誰?
原則として支援校、小中学部在籍者の希望する全員が利用できます。
交流のパターン
「直接的な交流」と「間接的な交流」の2パターンがあります。
◆直接的な交流:
支援校の子が指定校の行事や授業に参加するもの
◆間接的な交流:
学校・学級便りや手紙等の交流がメインのもの
※直接交流で学校へ行ったときは、支援校で「出席」としてカウントされます
具体的にどんなことをやっているの?
●授業に参加
国語・音楽・理科・図工・体育・クラブ活動・学級活動・お楽しみ会等への参加
●休み時間交流
●行事に参加
・運動会(体育祭)
・学習発表会(文化祭)
・お祭りなど
●その他
・全校集会や朝の会、帰りの会
・給食、掃除
・生徒会、部活動など
※1日参加というよりは部分参加や見学
誰と一緒に行くの?
直接交流の交流は・・・
・東京都は、保護者の付添いが原則
・埼玉県は、ボランティアやヘルパーでも可
・横浜市は、支援校の先生もしくは保護者
※もともとは東京独自の制度でしたが、徐々に全国各地へ広がっています。
実際はどのくらい利用しているの?
頻度は?
多くは学期に1回~年に数回。子どもによっても異なります。
副籍制度の利用率(直接副籍または間接副籍 実施率)
平成27年 小学校:52.1%
中学校:29.2%
東京都の目標としては・・・
令和6年 小学校:80%以上
中学校:50%以上
行く子はよく利用しているけれど、行かない子の方が多いようです。ではなぜ、この制度を使わないのでしょうか?
なぜ行かない人が多いの?
2012年に島田療育センターが副籍に関する調査を行いました。そこで、現在副籍を利用していない保護者の意見には下記のようなものがありました。
●現在、利用していない人の内訳
・利用したいが,できない状況である・・・15%
・利用するつもりはない・・・・・・・・・77%
・制度を知らなかった・・・・・・・・・・ 2%
●利用しない理由として
・保護者が仕事の都合で付き添いができないため
・本人が交流に興味を示さないため
という回答が多かったです。
・いずれ利用を開始したい・・・・・・・・39%
・今後も利用するつもりはない・・・・・・61%
と答えています。
今後も利用しない理由として多かったのが、「送迎,付き添いができない」でした。
■その他
交流開始前に、支援校の先生が地域指定校への出前授業「障害理解啓発授業」を行うこともできます。
まとめとして
副次的な籍の制度は、全国的に統一されていません。自治体がそれぞれ工夫を凝らしているのが現状です。副籍実施の前に、支援学校の先生が地域指定校まで出向いて、障害について授業を行ってくれるというのも魅力的だと思います。
もともと、この制度は、障害を持つ子が地域で孤立しないためのものです。利用する人が使いやすく、かつ、情報が入りやすくないといけません。使う人が少なくなると、せっかくの制度がどんどんなくなってしまうのではないでしょうか?
今後、各自治体がどのように副籍を活用するか?に注目していきたいと思います。
参考資料
副籍について
これからの副籍制度(「副籍ガイドブック」より) - 東京都教育委員会
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/special_needs_education/files/associate_membership/juujitsuleaflet02.pdf
副籍、支援籍、副学籍について:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1298212.htm
副次的な籍について:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1320681.htm
特別支援学校在籍児童生徒の「副次的な学籍」の現状と課題
https://yamanashi.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4727&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
神奈川県の特別支援教育のあり方に関する検討会 中間まとめ
平成 31 年 3 月
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/47995/tyukanmatome.pdf
教育実践学研究 25,2020 265
特別支援学校在籍児童生徒の「副次的な学籍」の現状と課題-交流及び共同学習の視点から-
https://yamanashi.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=4727