なぜ味方につけた方がいいの?
放課後等デイサービスのような障害児の施設で働いていると、保護者から支援者へ「要望」が出てくることがあります。内容は様々。子どものことだったり、支援や訓練のことだったり。
実際に要望を言われたとき、どのように感じていますか?
・面倒くさいな
・こっちのやり方があるのに
・口を挟まないで欲しい
なんて思っていませんか?
確かに自分たちが一生懸命やっている方法に口を挟まれるのはあまり気分の良いことではありません。しかし、逆に考えてみると保護者の発言は支援の方向性を決めるうえで大切なヒントとなることが多いのです。
言われたことに100%応じろと言われているわけでもありません。「要望」を出してもらったら、それを活かすキッカケにしてしまった方が賢いやりかたなのです。
今回は、出された「要望」を活用して保護者を味方につけていこう!というはなしです。
味方につけたほうがよい理由
人は自分の言うことに耳を傾けてくれる人を信用します。その積み重ねが信用を強固なものにしていきます。
・困ったことがあれば相談してくれる
⇒ 相談に応じることで自分の経験&知識がアップする
・こちらのお願いも聞いてくれやすい
⇒ いざというときに支援者を助けてくれる
ex. 施設内研修で動画を使いたい。許可してくれる保護者が増える可能性が増える
結果として自分が助かることが多いのです。
どんな「要望」が多いか?
私自身、いくつかの障害児の施設で働いてきました。保護者の要望や希望はいくつかのパターンに分かれます。下記はその例です。
「要望」は「面倒くさい」?「ありがたい」?
保護者から出た要望をかなえるのが理想だとは分かっている。でも、支援者自身はどう思っているのでしょうか?
実際の現場ではどんなときに迷惑がられて、どんなときにありがたがられるのでしょうか?
「面倒だ」と感じる理由
「迷惑だ」と思ってしまうのには傾向があります。
・忙しすぎる職場
・スタッフが足りていない職場
・プライドが高すぎる人
・そもそも要望の内容がおかしい
人の性格や特性だけではなく施設の状況にも左右されます。
様々な理由でゴタゴタに巻き込まれている人は心の余裕がなくなります。そのため「要望」を受け入れられる隙間もなくなってしまうのです。
あきらかに要望の内容がおかしいときは受け入れられないのは当然ですが・・・。
「ありがたい」と感じる理由
では逆に「ありがたい」と感じる理由はなぜなのでしょうか?また、なぜ要望は聞いておいたほうがよいのでしょうか?
・言ってくれる=信頼してくれている
⇒ 基本的には信頼しているからこそ「要望」を出すといえます。信頼していないときに言うのは「クレーム」です。
・職種によっても異なる
⇒ 職種によっては「要望」を出してもらった方が支援の方向性を見つけやすい場合があります。
専門職と保育職の違い
職種や支援者のタイプによってとらえ方に差があるようです。どっちが悪いというわけではありません。どのような違いがあるのか見ていきましょう。
放課後等デイサービスの保育職
放課後等デイサービスで働く職種で一番多いのが保育職です。ここでいう「保育職」とは保育士、指導員、資格がない人などすべてを含みます。
放課後等デイサービスで働く保育職は遊びを通して子どもの発達を促していくことが専門分野です。子どもの気持ちを読み取りながら楽しい時間を提供できるステキな職種です。
求められるものの範囲が広くて大変
しかし、実際は保育職に求められるものは広いです。ジェネラリスト的な立ち位置にいます。ひどいと医療的なことまで保育職に求める人もいます。
ときどき、医療的な相談を受けても医師や看護師にまわさずに、自分で解決したくなる人がいます。医療的な資格がないとできない行為もたくさんあるのです・・・。
求められるものによっては「それは苦手なんだけどな・・・」と感じることもあります。だからといって専門職に相談するのは自分が負けたように感じてしまう。
そうなると「なんで要望を出すの?」と考えてしまう人が出てきてしまうのです。
もちろんすべての人ではありません!
放課後等デイサービスの専門職
障害児施設における「専門職」とは次のような職種を指します。
・理学療法士(PT)・・・身体面、運動面など
・作業療法士(OT)・・・作業面など(PTと重複あり)
・言語聴覚士(ST)・・・ことば、きこえ、飲み込み
自分のやるべきことが決まっているから分かりやすい
専門職は自分の専門分野を活かして子どもに評価や支援を行います。
「なんでもいいからこの子をよくしてください」という願いやオーダーを出されても困ってしまいます。
そのため「○○をしてほしい」という要望をバシッと言ってくれると「自分の職種ならこういうことができる」と考えられます。支援の計画が立てやすいのです。
なので、よほどトンチンカンなことを言われなければ要望は大歓迎と感じている人が多いのです。
もちろん要望が嫌だなと感じることもあります。それは、自分の分野でないものを「どうにかしてよ」と言われたときです。
わたしの場合、そういうときは求められているものが専門の人に遠慮なく振るようにしています。
こういう要望は受け入れなくてOK
必ずしも要望を受け入れろとは言いません。なかには受けなくてもよいものがあります。すべて言われたとおりにするのがよい支援ではないのです。
・施設のルールを無視した要望
・活動中に宿題をやって欲しい
⇒学校の宿題をやることが活動に含まれている施設ならやればよいです。しかし、すべての施設がそうではありません。支援者としてやりたい活動があるのに、それを潰してまで宿題をやることはありません。
・能力を高く見積もった要望
ex.食形態を挙げて欲しい
⇒給食でペースト食を食べている子なのに「から揚げ」「モチ」を食べさせてほしい。そんな無理なお願いは結構あります。遊びなら能力的に合わないことをやっても危険度は低いです。しかし、食事は子どもの持っている能力以上のものをやってしまうと事故が起こります。一度、まぐれで食べられたとしても、その後、大きな事故につながります。
「話しを聞いてもらえた!」でよい関係をつくろう
頭ごなしに拒むのではなく、まずは話を聞くこと。これがコミュニケーションの基礎です。本当に大切。親御さんとうまくいっていない支援者の話しを聞くと、どちらかが相手のことばを聞いていないケースがけっこうあります。
人は自分の話しを聞いてくれる相手を信用します。
そういう経験、ありませんか?
「話しを聞いてもらえた!」
これだけで今後の支援のやりやすさも変わるのです。
まとめとして
今回は、子どもの支援について要望を言ってくる保護者は「やっかい」?それとも「貴重」?というはなしをしました。
立場は違えどスタッフも保護者も人間です。人に話しを聞いてもらえると無条件で嬉しいはずです。
保護者を敵に回して得することなんてひとつもありません。せっかく「要望」を出してもらったのですから、それを活用すべきなのです!
実際にはどの職種に限らず要望を言っていただけると「ありがたい」と感じているスタッフが多いのです。
しかし、働く環境がよくないと「要望」も気持ちよく受け取れなくなっている人が増えます。環境もいろんなものに影響してしまうのです。
よかったら参考にしてみてくださいね。