言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

不調の原因は栄養失調かもしれない。肢体不自由児の栄養のはなし

栄養失調のはなし 飢餓だけが原因ではない!

  

肢体不自由の子のなかには、なんだか最近調子がよくない、という子がいます。

もちろん、疾患や障害が原因のことはあります。

しかし、栄養の過不足が原因となっていることがあるのです。

栄養失調と聞くと、海外の遠く離れた国のことを想像してしまいます。しかし、現在の日本でも、栄養失調状態の子(人)は多くいます。

・貧困
・ダイエットによるもの(主に若い女性)
 ・過度な偏食によるもの(障害児)
・食べる機能の問題等で栄養が取れない子(人)


今回はうまく食べられないから栄養も取れていない。だから、最近調子が悪そうなの?

そんな肢体不自由の子のはなしです。
 

  


栄養失調とは

何らかの理由により、充分に食べることができていないために栄養が足りていない状態。 栄養不足、低栄養、栄養不良、などと呼ばれることもあります。

症状も様々です。

・体重減少
・顔色が悪い
・体調の悪化
・飲み込むための筋肉をうまく使えなくなった
・噛む力が弱くなった

うまく食べられないために

・日常的に空腹
・栄養不足

という子もたくさんいます。

   

肢体不自由と栄養失調 

肢体不自由児の、うまく食べることができない子。

そういう子はチューブを通して栄養補充をしています。

では、今までは食べられていた。けれど、最近は食事がうまくいかない。 

 

 

栄養失調になるとどうなるのか

そういう子たちが栄養が足りなくなるとどうなるのでしょうか?

もちろん、いいことはありません。

やせる
免疫力が落ちる
褥瘡(じょくそう)になりやすい

体調が悪くなり、活動も制限されます。

寝たきりの子もいますので、栄養が不足していると褥瘡(じょくそう)になってしまい、かつ治りにくい状態だという子もいます。

栄養(特にカロリー)不足が長いあいだ続くと、肝不全や心不全、呼吸不全になることもあります。ぼんやりすることもあるので、食が進みにくいこともあります。

 

  

医ケアが必要ではない肢体不自由児に注意

 

自分で食べることができない肢体不自由児のなかには、チューブを通して栄養補充をしている子がいます。

医療的ケアが必要な子、と呼ばれる子たちです。

基本的には栄養管理がされているので、極端な低栄養や過栄養になることは少ないと思われます。

しかし、医療的ケアが必要な子ではなくても、食べられないことが続くことがあります。

体調や食べる機能の低下などの理由から、うまく口から食べることができず、低栄養や脱水などの問題を起こす子たちです。

今まで日常的に医療的ケアは必要ではなかった。

しかし、介助だけではうまく食べられず量もとれない。

 

対応として考えられるのは

まずは日常的に栄養が取れるようにしたい。そのために

食形態を下げて様子を見る

食事介助法の再考

チューブや胃婁(いろう)で栄養をとる

いきなり胃瘻造設を提案しても「はい、そうですか!」と受け入れてくれる親御さんは少ないと思います。医者から提案されても渋る人がいるのに、特に医療従事者でない人に言われても・・・・。

私たちができること。まずは、私たちがあたりまえにやっている介助を疑っていくことです。

そこからさまざまな職種の意見を取り入れつつ、本児の安全や健康を確保していくことが求められます。

  

 

安全に食べるために  

重症時の場合、様々な能力の低下の根底に栄養失調という問題が隠されているときがあります。このとき、食べる力自体も低下していることが多いので注意する必要があります。


肢体不自由児の場合、必要摂取量を求めるのも複雑です。

だからこそ「とにかく食べさせなくちゃ」とお互いに無理をしてしまいがちなのです。

人間の身体は、ざっくり言ってしまうと、口から肛門まで筒状になっています。

そのため、無理やり食物を下へ落とし込めば入ってしまいます。

しかし、これは「食べられている」とは言えません。口から消えて奥へ落ちただけです。こんなことをしていたら、いつか事故が起こります。

どうすれば安全に食べられるか?食形態は?介助方法は?

まずはこの再考が必要です。  

最近、様子がおかしい。そういう子の仮説として「栄養の過不足」を疑ってみることも大切です。

  

 

まとめとして

今回、栄養失調の点から不調の原因を考えてみました。

自分が考えてもみないところに原因が隠れていることがあります。

もちろん、栄養失調だけではないかもしれません。

いろいろ探ってみてください。

 

 

 

参考資料

◆『小児の摂食・嚥下障害』
日本摂食嚥下リハビリテーション学会編集
医歯薬出版株式会社

小児の摂食嚥下障害Ver.3

日本摂食嚥下リハビリテーション学会 医歯薬出版 2020年06月
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◆ 特集:NSTのための小児の栄養管理 
重症心身障害児の栄養管理
びわこ学園医療福祉センター草津小児科 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/27/5/27_1175/_pdf

◆明治栄養ケアクラブ
栄養ケア情報/低栄養について
https://www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/knowledge/malnutrition/003.html

◆MSDマニュアル 家庭版「低栄養」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/11-%E6%A0%84%E9%A4%8A%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E4%BD%8E%E6%A0%84%E9%A4%8A/%E4%BD%8E%E6%A0%84%E9%A4%8A