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ダウン症にも食事(摂食嚥下)の問題があるのか?

ダウン症の摂食嚥下

ダウン症の「食事に関する問題」について考えたことがありますか?


「食事?問題があるのは肢体不自由じゃないの?」
「問題のあるダウン症の子なんてみたことがない」


そう思っている人は結構いるのではないでしょうか?

 

 確かに、脳性麻痺をはじめとする肢体不自由児には食事や食べ方(摂食嚥下)の問題は多くあります。しかし、最近は窒息などのダウン症の子の食事の事故が目立つようになってきました。事故の件数が増えているというよりは、NHKでも障害児に関する番組数や放課後等デイサービスなどが増えたので、情報が表に出てきたのではないでしょうか。今回はダウン症の食事の問題についてです。

 

 

 

ダウン症の特徴

本来2本あるはずの21番染色体が3本あることによって様々な障害があらわれるものです。

ダウン症の発達は、定型発達の子と比べて「ゆっくり」です。もちろん、個人差はありますが、定頸(首の座ること)が6ヶ月を過ぎてからだったり、歩行が2歳過ぎだったりすることもあります。同様に食べる機能の発達も「ゆっくり」であることに配慮をしていく必要があります。

 

ダウン症候群の症状
・特徴的な顔つき
・頭の形の異常
・つり上がった眼
・小さい耳
・筋緊張低下
・関節弛緩
・知的発達の遅れ
・情緒面に比べて認知面の育ちがゆっくり


口腔周辺の特徴として

・口唇の乾燥    
・舌が大きくみえる 
・上顎の劣成長  
・歯周病になりやすい点線

 

主な合併症
・内蔵等(心疾患、甲状腺疾患、消化器疾患など)
・神経系(発作、退行様症状など)
・運動器(環軸椎(亜)脱臼など)
・感覚器(難聴、中耳炎、白内障、斜視など)

 

 

覚えておきたい基本知識

体格が標準を下回る

赤ちゃんの頃から健常の子と比べて身体が小さいのです。これは親にとってはかなり心配なことです。なんとか標準の範疇に入って欲しい。せめて好きなモノだけでも食べさせてあげたい。

↓ 

思春期以降の「肥満」の問題につながる


食べすぎる

咀嚼が下手なので、なかなか満足感が得られない。そのため、どんどん食べてしまう。

・子どものころから様々なものを噛む練習をする

・運動をたくさんする

・生活のリズムを育てる



「はやく」が苦手

敏感な動作に苦手意識が強く、「急いで!」の指示に応じられない。

これは本人の気持ちが左右します!ダンスのような好きな活動だったり、好きな人からの指示だったりするとテキパキ動きます。

子どもの特性というよりは関係性の問題。


「あなたのことは嫌いだけど、仕事だから好かれなくちゃ」

これでは見透かされます。


「あなたは私のことを嫌いかもしれない。私もあなたのことは好きじゃないのよ」

ここからスタートして関係を築いていくくらいが丁度よいのです。

 


人を見た目で判断している傾向がある

面食いで、かわいい子やイケメンのところにいく。だいたいの子がそう。

(しばらく付き合えば、支援者の性格もわかって馴染んできます)

↑下記のダウン症協会・代表理事の書籍より。

 

 

 

 

食べることへの影響

ダウン症には様々な特徴があります。一見、食べる機能に問題がないように思われがちです。特に放課後等デイサービスで、肢体不自由の子がいる施設では、その子たちに目が向いてしまうことが多いために、ダウン症の子の「食」は見落とされてしまうことがあります。

ダウン症の子で「食に関する問題」がみられのは、幼児期頃からだといわれています。

一般的に、ダウン症の子は、全身の筋緊張が低下しており、舌も突出しています。発達の速度もゆっくりです。唇や顎、舌の動きが弱かったり“噛むこと”が苦手なため、食べ物を口の中にとどめておくことが難しかったり、丸飲みしてしまったりすることがあります。

固形物を食べるようになる幼児期頃になると、そういった“苦手さ”がよりいっそう表に現れるようになってくるのです。


また,スプーンや箸などの道具を上手に使いこなせない点も、食べづらさの原因に関係しているとの報告もあります。

保護者は、日々、食事の事故がおこらないように注意しながら介助を行っています。しかし、成長して自律的に食事ができるようになると注意は薄れてくる傾向にあります。
そのため「この子が」と思うような子が窒息事故を起こすことがあるのです。

ダウン症の子たちが持っている「知的発達の遅れ」「口の中の異常」「筋肉などの使われ方」などが摂食嚥下に影響を与えることがあります。どのような問題として現れるのでしょうか?

  

 

食べる機能の問題

●食べる機能の身につきづらさ

知的発達の遅れがある子に多い問題です。「食べる」という行為は、自分の意思によって手や口などを動かすことの繰り返しで身についていくものです。しかし、知的発達があると身につくまでに時間がかかることがあります。
⇒子どもに関わる保護者やスタッフが、あせらず、ゆっくりと支援を続けていくことが大切です。

 

●舌の問題
舌の大きさ

ダウン症の子は「舌が大きい」とよく言われます。それは完全に正しくなくて、本当は「筋力が低いために舌がボテッとしてみえる」「口の中の容量に比べて舌の比率が大きい」からなのです。口の中で食べ物を処理するときにも舌が使われますが、細かい動きが得意ではありません。そのためパンのようなパサつく食材が苦手なダウン症の子が多いのです。食材は口の中でひとまとまりにしづらい、パラパラするようなものの場合、自分が意図しないタイミングで喉の奥へ入ってしまいます。そのためムセやすくなります。

 

舌が出る

乳児の頃は、舌を前後に動かした、チュパチュパした口の使い方をしています。さらに、ダウン症の子は普段も舌が出ていることが多いです。大きくなってもそれが癖として残り、歯を押し出してしまうために開咬(下の歯列と比べて上の歯列が前方に出てしまう)ことがあります。

⇒食事以外の場面で、「お口ムッだよ」「ベロないないだね」と指摘する(注意ではない)ことが大切です。

 

舌を出して食べる
噛んで処理する力が弱いのに硬いものを食べると、食塊がうまくつくれないので丸飲みになりやすいです。また、「早食べ」が習慣化されてしまうと、舌を出したまま丸飲みになります。

口唇や舌、顎を一緒に動かすために

「捕食」の力を育てていきます。捕食とは、目の前にある食べ物を口に入れるまでのことをさします。ダウン症の子は、食物を前歯で噛み取るよりも、自分の手で口の横側や奥へ入れて食べていることが多いです。

 

コップ飲み・ストロー飲み

「コップ飲み」の時は、コップのフチを噛ませないようにします。コップは下唇の上(舌の下)に置くように介助します。「ストロー飲み」では、ストローを短く(1~1.5cm)咥えさせたり、ストローをシリコンのものにしたりすることが有効です。

 

捕食誘導

介助で、ゆっくり口にスプーンを入れて、口が閉じたらゆっくり口から引き抜きます。口から食べ物が落ちそうになると自分で落とさないよう「おっと」と口唇を使う動きが出てきます。その際は、小さくスプーンを使います。液体も同様に小さいスプーンで練習します。

 

丸飲み

特に多い問題です。食欲が旺盛だけれど、手や口の細かな動き(微細運動)や手と口を連動させる動き(協調運動)が伴わないために、かき込んだり押し込んだりしてしまいます。そのため、一口量も多くなってしまい、よく噛まず、味わうこともせずに食べてしまいます。それが徐々に早食べや丸飲みに移行していきます。口の中に食物が入りすぎると、うまく噛めなくなりますし、のどに詰まるリスクも高まります。口の中の食物を適切に判断する機能や口腔の感覚が十分に育っていないために丸飲みするケースもあります。

 

ペースの調整

早食いにならないように、食べる最中に「おいしい人?」と聞いて「はーい」と子どもに答えてもらう等、あえて「間」をつくります。そうすることで早すぎるペースを中断させます。「もっとゆっくり食べて」という声かけだけでは不十分です。食べることに集中しすぎないようにしていくことも大切です。

 

周囲の係わり方

・水分で流し込む食べ方・介助を止める

食べ物が口の中に残っているときに、お茶などで流し込んで飲み込むことが習慣化しているケースもあります。食事介助でそのようなやり方をするのはやめた方がよいです。

 

食事を急かさない

放課後等デイサービスでは、食事の後も次の予定が待っています。スタッフが焦ってしまい「早く食べなさい」と言ったり、「早く食べたらおかわりしてもいいよ」と本末転倒な声かけをしたり・・・。子どもが食べるのに焦らせるのは支援とは言えないのではないでしょうか。

 

虫歯・歯痛

虫歯などで歯が痛むために噛まない、というケースもあります。この場合は、早めに歯科に通院してもらいます。

 

機能や感覚を育てる

口の中の感覚を「正しいもの」に修正していきます。硬いものを無理やり飲み込むよりも、自分の力に合ったものをしっかり処理してから飲み込んだ方が楽だ、と感じてもらうよう促していきます。その際に、押し潰しで処理ができる下記のような食材を使用することが多いです。

 

 ・ペースト状 (粒なしペースト、粒ありペーストなど)

 ・ポタージュ状(ポタージュ、カレー、シチューなど)

 ・やわらかいもの(絹ごし豆腐、卵豆腐、茶わん蒸し、ヨーグルトなど)

 ・軟菜    (ダイコン、ニンジン、カブ、ジャガイモ、サツマイモなど)

 

噛む動きを引き出す

噛む力(咀嚼)を引き出すためには、もちろん奥歯で食物を噛んでもらうこともあります。それ以外にも「前歯での噛み取りすること」で食物を左右に移動させることになっていくため、咀嚼する力につながっていきます。

 

 

口腔周辺器官などの問題

乳児では、吸う力や飲み込む力が弱かったり、体力が少なかったりするためにうまく母乳やミルクが飲めないことがあります。また、口唇口蓋裂(生まれつき唇や口の天井に穴や隙間がある状態)があると乳房をふさぐことができないためうまく母乳を吸うことができません。

⇒一見「食べているように」見えても、食べ物を処理する力が充分に育っていないことは多いです。今の力を無視して次のステップに進んでしまうと、丸飲みや事故につながります。まずは、今、持っている力を充分に身につけることが大切です。舌の動きがまだ弱く、左右にも動かないような「押し潰して食物を処理している」段階の子であれば、適切な硬さのものを押し潰す経験を重ねていきます。充分に押しつぶす経験を積んでから次へ進めていきます。

 

 

心理的な問題

●慣れないものへの拒否

ダウン症の子は小さいころから検査や採血、入院、通院などを多く経験します。それらのストレスが「警戒心」や「人・場所見知り」となって現れることがあります。食事の練習の際に、様々な食具を使いますが、見慣れないものを拒むことがあります。特に多いのが、スパウト(乳首以外の飲み口に慣れるために使うマグのようなもの)などがあります。

 

⇒そこで大切なのが「見慣れること」「大人が見本を見せること」です。

 ・大人がおいしそうに食べているのを見せる
 ・使う予定のあるものを、今は使わなくても食卓に並べて置く

などの対応があります。

 

 

 

感覚的な問題

●固形物への拒否傾向

食べる力に合った食形態を選択することは大切です。しかし、力がついてからも同じ形態のものを食べ続けているケースがあります。そういう子に固形物をあげると拒否反応を示すことがあります。ただ手で払って嫌がることもありますが「嘔気が出る」「吐く」となって現れることもあります。これらは注目要求行動としての意味合いが含まれていることもあります。

ちなみに、高等部までにストレスに弱い子になってしまうと、大人になってから(18歳から始まって20歳頃ピークに)急激退行が始まることがあります。身体的・精神的に退行が起こり、家からでなくなり、結果として、対人関係にも影響が出ることもあります。

⇒徐々に固形物に慣れていくことが大切です。
例えばボーロ(7ヶ月用)を使った練習では「粉々に砕いたものをヨーグルトに混ぜる」→「1/2個」→「1個」と順序立てて慣れるようにしていきます。
他には「脱感作法」なども考えられます。しかし、一番は、まだ小さいうちから、指しゃぶり・玩具しゃぶりを充分に経験させることで、口に「異物」が入ることに慣れてい枸ことが大切です。もちろん、歯磨きに慣れることも有効です。

 

●感覚遊び

口の中で食物をしっかりと処理できていないと、食塊をうまくつくることができません。中には、大きなまま飲み込んで、苦しい喉越し?を楽しんでいる子がいます。感覚遊び的な誤学習といえます。

⇒適切な一口量を再学習することが大切です。

 

 

その他の問題

●ASDの合併

⇒ダウン症の子の中には、自閉症を併せ持っている子がいます。ダウン症の特徴である「頑固さ」に隠れてしまって見えづらい場合も多いです。感覚機能の問題や常同行動、自傷行為などがあります。その場合、それらに対する配慮も必要となります。

 

 

 

あわせて読みたい

www.hana-mode.com

 

 

参考資料

本当はあまり知られていないダウン症のはなし

ダウン症は「わかって」いない
玉井 邦夫 (LD協会・知識の森シリーズ 2)

 

ライフステージを意識した摂食支援~ダウン症候群の児童生徒編~
『ダウン症候群の摂食指導と口腔管理について』芳賀定

 

小児保健研究
『ダウン症児の離乳に関するアンケート調査』中嶋理香