言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできることを模索しています

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放課後等デイサービスのスタッフが知っておきたい「人工内耳」のこと

放課後等デイサービスで働く人が知っておくとよいこと

人工内耳について


今回は人工内耳についてです。

様々な理由で耳が聞こえづらくなった子たちがいます。その理由はさまざま。

奇形を伴うもの

薬剤の影響を受けたもの

原因不明のもの


と、その子によって違います。

耳の悪い子が「聞く」ためには補助具を使います。それが補聴器や人工内耳です。

 

放課後等デイサービスでもまれに見かける「人工内耳」についてです。

補聴器に比べるとなじみの薄いですが、人工内耳ってどういうものなのでしょうか?

 

 

1)手術をすればすぐに聞こえるようになるの?

 

人工内耳の手術を受けると、音が聞こえるようになります。

しかし、これまで音が聞こえなかった(聞いてこなかった)子は「音に意味がある」ということに気づいていないことが多いです。そのため、音が聞こえるようになったから、すぐに私たちと同じようにことばを理解したり喋ったりするようになるわけではありません。

では、どうするのか?

音を聞くための練習が必要となるのです。それが難聴児施設や病院で行われている聴能訓練(ちょうのうくんれん)と呼ばれるものです。

手術後は「どのくらいの音が、どんなふうに聞こえるのか」という人工内耳の調整も行われます。訓練と調整が同時に行われていきます。

人工内耳によって聞こえる音は、今までのような自然な感じではなく、「ロボットが喋っているような」機械的な音になります。だからこと「聞くための練習」が必要となるのです。

 

知的に障害があると、音が聞こえていても「音に意味がある」ということを理解しにくいのです。音を理解しないと、ことばを話すことはできません。だから、障害を持った子で「喋れない」子は多くいるのです。

 

  

2)音が聞こえるまでの流れ

 

私たちは無意識的に音を「聞いて」います。その流れを見ていきましょう。


耳に入った音は、

① 耳に音が入る

まずは耳穴(外耳道)を通って鼓膜へ行きます。


② 音が鼓膜に届く

音が鼓膜を揺らします。


③ 中耳を通過する

鼓膜の内側についている3つの骨(耳小骨)が“テコの原理”で音を大きくします


④ 蝸牛に入る

大きくなった音が耳の中のカタツムリ(蝸牛)に入ります


⑤ 音の識別をする

蝸牛のなかで「どんな音なのか?」を調べます。

ここでは「高い音か低い音か」を判別します。

※ここでいう「高低」は、音量ではなく音の種類です。

(ex.高い→蚊の音、低い→船の汽笛)


⑥ 神経を通る

そこで出た情報は神経を通って脳へ送られます。


⑦ 脳の辞書で検索する

脳では、「この音は○○さんの声」とか「チャイムの音だから座ろう」等、これまで得た経験から音の意味を探ります。



以上が「音を聞く」流れです。

 

 

 

3)人工内耳って何を手術するの?

 

音の種類を調べる「カタツムリ(蝸牛)」が出てきました。これは渦巻状になっています。手前側が高い音、奥の方が低い音を感知します。年を取るとこの入り口側からやられていきます。だから、高齢者は高い音が聞こえづらくなるのです。

このカタツムリの中には音を感知するための「毛」がたくさん入っています。人工内耳は、この毛をぶっ壊して電極を入れます。

何らかの理由で機能しなくなった毛のかわりに電極を入れて「聞こえ」を復活させる。これが人工内耳の役割です。

毛は壊されたので二度と復活しません。


一度、人工内耳の手術をすると「やっぱりやめた」ということはできないのです。

※三半規管がついているのもこの蝸牛です。バランスを取ることでおなじみの器官ですが、人工内耳には関係がありません。

 

 

 

4)人工内耳って?

 

人工内耳は

「身体に埋め込むもの」
「外側につけるもの」

の2つがセットとなっています。

 

①内側

・蝸牛には電極

②外側

・耳には補聴器みたいなマイク(スピーチプロセッサ)

・後頭部には丸い磁石(送信コイル)

 

※ 補聴器のように、音が耳穴~鼓膜~蝸牛~聴神経と進むわけではありません。

対外装置~体内装置~リード線~蝸牛~聴神経という流れで音が伝わっていきます。



人工内耳装用者で、イヤーチップやイヤーモールドを使っている人もいます。それは、サウンドプロセッサ(耳掛け型補聴器みたいな機械)が落ちないようにするためにつけているのです。意外と勘違いしがちなところです。

 

 


5)注意点は?

 

① プールは入れる?

外側の機械を外せば入れます。ちなみに防水ケースも売っていて、これを使えば人工内耳をしたままプールに入ることができます。内部の機械(インプラント)も、水深25mまでならOKとされています(防水ケース使用時は水深4mまで)


② 磁石

玩具程度の磁力であれば、人工内耳の近くに合っても問題はありません。人工内耳を外せばレントゲンもOKです。

 

 

③ 物理的なダメージ

頭や人工内耳に衝撃が加わるような遊びやケンカはNGです。

 


④ 中の線や機械は腐ったりしないの?

白銀やシリコンで作られているので大丈夫です。昔、リコールが出た機器がありました。それは取り換えのために手術が必要でした。

 


⑤ 電化製品は?

電子レンジ、アイロン、掃除機、ヘアドライアーなど、日常の電化製品は、普通に使用してOKです。

 

 

まとめ

時々、聞こえにくい人に向かって「若いんだから、人工内耳の手術を受けてみなよ」と軽々しく助言する人がいます。言った本人に自覚はないのだろうけれど、これは無責任すぎます。一度やったら後には戻れないのです。

直接、訓練や調整をしない支援者たちも、ある程度の知識は必要だと感じています。私たち支援者の知識が子どもを守ることになるのですから。

 

 

 

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参考文献

言語聴覚士のための基礎知識 耳鼻咽喉科学
医学書院


Cochlear
人工内耳の使用
https://www.cochlear.com/jp/home/support/cochlear-implant-systems/common-questions/using-a-cochlear-implant