ADHDと注意障害
障害や疾患の中には似たものがたくさんあります。今回は、発達障害の「ADHD」と高次脳機能障害の「注意障害」についてです。どちらも注意機能に関するものですが、何が違うのでしょうか?
発達障害と高次脳機能障害
注意障害は高次脳機能障害のグループに含まれる症状のひとつです。
高次脳機能障害とは、病気や事故などが原因で脳がダメージを負ったため障害が起きている状態。症状は脳の損傷部位によって、ことばや思考、記憶、注意、感情など様々。
注意障害とは注意力が低下する障害です。
発達障害にも似た症状のものがあります。
ADHD(注意欠如・多動症)です。
この2つは同じものなのでしょうか?
同じものなのか?
結果から言ってしまうと、2つは別物です。
どちらも脳が何らかのダメージを負った状態ですが、
・ADHD
⇒先天的なもの(生まれつき)
・注意障害(高次脳機能障害)
⇒後天的なもの(病気や怪我によるもの)
ADHDとは
発達障害の一つで、
・年齢あるいは発達にあっていない「注意力・不注意さ」
・じっとしていられない「多動」
・計画的に考えて行動できない「衝動性」
などが特徴的な障害です。
発達障害
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。発達障害者支援法
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm
児童期(6~12歳)の症状
① 気が散りやすい
② 与えられたものと関係のないことをしてしまう
③ 集中力を持続できない
④ 衝動的
⑤ 攻撃的な行動をする
⑥ おちゃらけてしまう
⑦ 友達とうまくやっていけない
かかりつけ医等発達障害対応力向上研修テキストhttps://www.ncnp.go.jp/nimh/pdf/H29_dd_3.pdf
注意障害とは
ボーっとする、うまく集中することができない等の注意力の低下がみられる障害です。注意は大きく4つに分けることができます。
① 持続性注意
⇒注意し続けることが難しくなる
② 選択性注意
⇒複数の刺激の中から一つを選んで、それに注意を向けることがむずかしい
③ 注意転換
⇒今集中しているものから他のものへ注意を向けることが難しい
④ 注意の容量
⇒同時に複数のものに注意を向けることが難しい。一度に処理できる情報量が少なくなる。
ADHDと注意障害の併発は?
高次脳機能障害診断基準では下記のように決められています。
診断基準
Ⅲ除外項目
戦線性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。高次脳機能障害 診断基準ガイドライン
http://www.rehab.go.jp/application/files/3115/1669/0095/3_1_04_1.pdf
つまり、発達障害と診断された場合は、似た様な症状が出ていても高次脳機能障害ではないとされます。
まとめとして
発達障害は、基本的に症状から判断されます。そして先天的なものです。
高次脳機能障害は、事故や疾患の事実と脳の損傷を証明する必要があります。
1人の中でこの2つは同時には起きておらず、症状が出ていてもどちらか、ということになるのです。
参考資料
◆言語聴覚療法 臨床マニュアル 改訂第2版
協同医書出版社
言語聴覚療法改訂第3版 平野哲雄/長谷川賢一 協同医書出版社 2014年06月 売り上げランキング :
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◆高次脳機能障害.net
http://koujinou.net/kind/chui.php
◆東京都医師会
https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/358-375.pdf
◆医療法人財団 滋強会 松山リハビリテーション病院
[症状別]高次脳機能障害について
http://www.jikyoukai.or.jp/matsuyama_rehabili/koujinou/syoujyou.html
◆交通事故サポートセンター 高次脳機能障害のすべて
https://secure01.red.shared-server.net/www.toshi-office.com/jiko-13-25cyuuisyougai.htm